片方のピアス
ピアスを片方失くした
だからってもう片方を捨てる気にはなれなかった
たかが数百円のピアス
あなたからの初めてのプレゼント
まだ中学生だったから
お小遣いを貯めて買ってくれた大切な宝物
大人になるにつれてもっと高価なものも貰ったけど
私が一番嬉しかったのは
小さなターコイズが揺れるあのピアスだった
今薬指にはまってるプラチナの値段を
なぜかあなたは頑なに教えてくれないけど
相当奮発したことが雰囲気で分かる
かたっぽだけになってしまったピアスを眺めていると
まだ持ってたのと驚愕の顔で覗き込んでくる
だってここから始まったのよ
でも片方失くしちゃった
新しいの買ってあげるよ
ううんそういうことじゃないの
そういうことじゃないのよ
世界のどこかへと消えてしまったピアスが
いつか離れ離れになる私たちなんじゃないかと感じて
泣き出してしまった私をあなたが抱き締めてくれる
大きな体
あの頃は私よりチビだったのに
きっと明日あなたはキラキラ輝くプレゼントを買ってきてくれるだろう
それはまた新たな始まり
潰えても何度だってやり直せばいい
壊れたら作り直せばいい
失くしたものが戻らない悲しみよりも
ずっと強い絆で結ばれているんだから
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