都会の方で
桜が開花したというニュースが流れる頃
この辺りでは 梅の花がほころび始める

停めた駐車場の近くに 梅の木が並ぶのを見つけた時
車から降りる瞬間は 少しワクワクする

心地よい春風が 少し甘酸っぱいような
梅の匂いを運んでくるから

この時ばかりは 花粉も気にせず
深呼吸したくなる
暖かい風に乗ってくる
この香りが 昔から好きだ

学校が嫌いだった 子供の頃 

いつも憂鬱だった通学路の途中
梅と桜の並木道があって
まだ少し寒い朝 梅の香りがすると
「もうすぐ春だ!」って
この時期だけは 
この木々の側を通るのが 好きだった

日に日に 春の香りが濃くなって
白い花びらが散り始める頃
それと入れ替わるように
ピンクの桜の花が ほころび始める

車道に花びらが いたずらっぽく転がって
春を存分に遊んでいるように見えた

オレンジ色の帰り道には
どこかの夕飯の 美味しそうな匂いが混じって
朝とは違うねって 風と顔を見合わせた

大人になって離れてしまった あの場所には 
今も変わらず 梅と桜の並木道があるだろうか

春の香りが マスク越しにも分かるくらい濃くなり始めたら
きっと桜前線のニュースが流れるだろう

今度 車で通ってみようかな
その時だけは 窓を開けて

春の香り 分かるかな
「久しぶりだね」って 
分かるかな

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