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globeの暗さと湿っぽさについて考える

(この記事は2021年に書いたFC2ブログを再編集したものです)

車でglobeの『Wanderin’Destiny』を聞いていたら、夫から「暗いっ。湿っぽくてテンション下がるからTRFにして」とクレームが入った。
暗い。湿っぽい・・・・。なんて言い草だろう。

しかし、言われて初めて気づいたが、確かにglobeは暗い。
同じ小室ファミリーのTRFが「イェイイェイ、ウォウウォウ」なのに対して、これは「あなたと死ねたら~」だものね。

意味深な名曲『Wanderin’Destiny』


『Wanderin’Destiny』は、ドラマ『青い鳥』の主題歌だったことも相俟って、globeの中でも特に陰りを感じる曲となっている。

歌詞を読む限り、周りから祝福されるような愛ではなさそうだ。周りが見えなくなって、どこまでも愛に沈み込む、というかもはや引きずり込まれていく女性。
この曲に感じる陰りは、おそらく、誰かを強く愛した時に生まれる心の陰りである。
ここまでどっぷりなら、それはそれで幸せなのかも・・・・なんて思ってしまうほど、盲目的な愛にはまりこんでいる。


中盤、穏やかに乱入してくるマーク・パンサーのラップ。これが意味深だ。歌詞の視点がよくわからない。
女性の気持ちを代弁しているのか、女性の愛した男の視点なのか。
はたまた、極まった愛の先に行こうとしている女性を“夢の国”にいざなう天使の視点なのか・・・・?
思いつめた女性の真っ暗な心に一瞬過ぎる希望、または過去の楽しい思い出の走馬灯と考えると、少し納得できるかもしれない。

小室哲哉の歌詞は、「雰囲気でギリギリ伝わるけど、よく考えたらこれどういう意味?」というものが多い気がする。
まあ、J-POPの歌詞ってそういうものであるが、小室さんの詞はそれ以上に独特だ。


そんな“ギリ伝わる”歌詞に説得力を持たせるKEIKO。歌手であり女優でもあるなぁと思う。なんかこう、都会を抜け出して、目の眩むような星空の下、雪降る断崖絶壁でユラユラ立ってる映像が浮かんでくる。
悲恋モノの歌舞伎を観たような、切なくて胸苦しい気持ちになる。その切なさが美しくて、すごく好きだ。

「切ない」と「美しい」とが結びつかない人にとっては、「何これ、暗い」となってしまうのだろうな、とも思う。
こればかりは好みの問題なので、仕方あるまい。


globeは「陰」のアーティストだ


都会的な電子音に乗せてさりげなく「孤独」を歌う小室ファミリーの中でも、globeの湿っぽさは特異だ。
代表曲の『DEPARTURES』も『Can't Stop Fallin' in Love』も、歌詞がやたら思い詰めている。
『Many Classic Moments』『Joy to the love』なども、疾走感や爽快感があるようでいて、ちょっと不穏な空気が流れていたりして、どの曲も陰と陽で言うと「陰」に属する雰囲気を感じる。
太陽と月なら、月。夏と冬なら、冬が似合う。globeはそんなグループである。


同じ小室ファミリーでも、鈴木あみや華原朋美はそこまで暗さや湿り気を感じない。
安室奈美恵は、暗さというより「しっとり」という感じがする。仮に安室ちゃんが『Wanderin’Destiny』を歌ったら、きっと「悲しいけどあなたの幸せ祈ります」みたいな健気さや気丈さが出ると思う。
KEIKOが歌うと、「地の果てまで一緒に行ったるで?」みたいな粘着性と、うすら狂気じみた重たい愛を感じさせる。これは褒め言葉だ。

小室サウンドの未来感で見失いがちだが、globeの根底には、そこはかとない情念系演歌の世界観が流れている。


とはいえ『Feel Like dance』なんかはキラキラしているし、『FACE』のように情熱的な曲もあるし、陰り一辺倒というわけでもないのだが、アーティストとしては絶対に「陰」の気質を持ったグループだと思っている。

個人的には、意外なロックサウンドの『Sa Yo Na Ra』や、怪しさと気怠さを感じる『biting her nails』も好きだなぁ。

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