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悲観属の戦い方とチョココロネ【#noteリレー 明るい未来】

学園祭の最終日。メインステージではフィナーレが行われている時間。
その賑やかさと数百m離れた先輩の古アパート。2年前に就職したのにいまだに住み続けている。
あたりは夕暮れから青くなった。やがて暗くなる。

二人は部屋唯一の暖房器具であるこたつにあたった。
このあと八時から近くの居酒屋でサークルの打ち上げがある。それまでののたっとした時間だった。

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そこでの会話はこうだ。

「明るい未来っていうのは、今を生きるための道具よ。

たとえばさ。これから上向くことを確信している貧乏人と、これから落ちていくのを心配し続けている金持ちはどっちが幸せか、っていう話。
極論、未来なんてずーーっとこないんだから本当はどうかなんて関係がない。
どう思っているか。どうなると思っているか。
未来のことをどう思っているかで今が決まる。

明るいほうが良いんだ。楽になるから。
まずは、楽観的なやつが楽に生きてる。未来は絶対大丈夫って思っているやつらね。
俺やオマエみたいな悲観属はその点で負けてる。」

・・・一緒にされても・・・
「じゃあ楽観的にならなきゃですね。明るい未来を手にするために」

「いやいや。属を変えるなんてやろうと思って簡単にできるもんじゃない。
悲観属には悲観属の戦い方がある。
楽観属にない武器があるからそれを使って明るい未来を手に入れる。

武器は、考えること、だ。」

「楽観属だって考えますよ。怒られますよ。」

「考えないよ。大丈夫なものに無駄な労力、払わないだろ。
将来のお金に心配がなければほとんど考えない。必要がないから。心配ないなら、貯金もしないし勉強も投資もしない。
目の前の道に、落とし穴があるなんて微塵も思ってない。だからスマホ見ながら無造作に進む。

悲観属は、やたら心配する。
将来のお金を計算して、ああ、足りない。あれもあるかもこれもあるかも。だから、どう計算しても足りない。
目の前の道にだって落とし穴があるに違いない。よく見なきゃ。でもいつかは落ちるんだ・・・と。」

「悲観属の”考える”ってのも武器という感じじゃないですね。」

「武器も正しく使わないと。
正しく使うからこそ武器になる。その、考えるやり方というのが”ポジティブ思考”ってやつ。」

「…なんだ、結局楽観的になれってことですね。」

「いや。楽観的・悲観的ってのは心の状態のことで、ポジティブ思考は考え方、頭の使い方のこと。別物なんだよ。

悲観的なやつは考える。頭を使う。だから、頭を使うポジティブ思考と親和するんだ。
楽観属は、物事を真正面から見るのが怖いんだ。そんなやつが大半。考えたくないんだよ。
『将来のお金?そんなの大丈夫に決まってるじゃん。別の話しようぜ。』ってね。」

・・・すると?

「悲観属の戦い方は、心は悲観的で、頭はポジティブ思考、だ。

悲観属のポジティブ思考という戦い方(手順1~4)

たとえば…、そう、たとえば、肥満に悩んでいたとする。

手順1:頭の中身をすべて出し切る
悲観属の弱点のひとつは思考が堂々巡りしてしまうこと。考えているんだけど前に進まない。
ひとつの問題を何度も考えてしまい抱えきれないほど大きさに思えてしまう。悲観属にはよくある。

対策は紙に書くこと

頭の中身を紙に書く。全部書く。
事実をすべて書ききる。自分がどう感じているか、感情も一つの事実。紙に書く。

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今の体重が何キロか。身長、BMI。そして世の中の良いとされている数値との差。
今のままだと何が嫌なのか。他人の目、自身の健康。
どう思っているのか。食べるのを我慢するのは嫌だ。楽して痩せたい。
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脳の中身を紙に全て移しきる気持ちで。
頭は軽いほうが良いんだよ。そうしたら前にすすめる。


手順2:書いた紙を目の前にして考えつくす。
→ポジティブ(陽・明るい方向に)にポジティブ(積極的)に考える。
ポイントは、2つの意味のポジティブ。

ポジティブ1(陽・明るい方向に)に:解決に向かう!という意識が必要。悲観属にはちょっと苦手なこと。
ポジティブ2(積極的)に:あれもこれもあらゆる方向から考える。いいところだけでなく、暗い面も、怖い箇所も最悪を想定し考える。ここは、悲観属の得意なところ。

考えるにはいくつかテクニックがあるからこれらを使う。
・問題を小分けにする
・他に選択肢はないか、第三案第四案はないか。
・ほんとにそれは事実か。見極める
・類似を探す
・本当の本当に欲しいものはなにか

※ネガティブ思考について
ポジティブ思考の反対のネガティブ思考は"消極的に""悪い・解決しない方向"に考えること。典型的なのは、選択肢を狭めて「これしかない」と思いこむこと。
「しかない」はネガティブ思考を疑うワード。

悲観属にネガティブ思考は、武器じゃなくて凶器になる。
「しかない」が出てきたら、「『しかない』、なんてわけない」って考え直す。


手順3:試してみる

ここまで来たら悲観属こその明るい未来が手に入れられているはず。ぴかぴかとは言わないまでも、ほのかくらいには明るい未来。
だって、こうすればきっと良くなるってわかっているから。
きっと良くなると思っている裏付けもあるし。

たとえ体重計に乗って驚きの数字を叩き出したとしても、絶望しないですむ。
感じるのは「さて、ここからどうやって改善されていくかな」。これが明るい未来ってやつだ。

実際に試してみよう。「実行!」「絶対やる!」とかにすると気負っちゃう。なので、試す。


手順4:悲観する
ここが悲観属の本領発揮するところ。

しばらく試していると「これ以上体重は落ちないのではないか」
「食べ過ぎちゃってリバウンドしてしまった。もうダメだ」という思いになる。
これはセンサーで、今までうまく回ってきたものに変化があったり気づいたりした証拠。これが振り返りのタイミングとしてつかえる。

また紙に書き出して考える。
自動でセンサーが働くんだから悲観的な態度にもメリットがある。


考えて、実践して、結果を直視して改善する。なんとPDCAだ。」

「聞いたことあります。PDCA。社会人としての嗜み。」

ふふふと笑った。


「うん。これでだいたいなんとかなるんだ。仕事のこととか、人間関係とか将来のこと、恋愛のこと、、、お金のこと、好きな子のこととか。あの子のこと、とか。」


・・・少しの沈黙の後、先輩は打ち上げには行かないことにしたと言った。
つづけて、俺ら悲観属に必要なのは、紙とペンとチョココロネだな、と言った。

11月の風が冷たくもよく晴れた日中の数ある模擬店ではなく、あえて大学生協で買ったチョココロネがかばんから出てきた。
ビニール袋の中でひしゃげている。

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「まあ。こんな事を言っていても・・・」
先輩はこたつ布団をたぐる。

「そもそも向き合う気力がなかったり、自分で出した結果にダメージを受けたりするんだ。
だから、気力をおぎなうために、それにダメージに耐えるために、せめて健康でなきゃな。
ほら、天然酵母って書いてある。これ、体にいいんだ。」


ビニール袋に入った天然酵母はこたつの上でぬくもりつつあった。


***

なさじさんからnoteリレーのバトンをいただきました。
このような企画に参加させていただくのは初めてで緊張しました。(今もしています。)
なによりなさじさんからバトンを受け取れたことがさらにさらに嬉しかったです。いつもnoteで相手していただけて感謝です!

いただいたテーマは「明るい未来」でした。
なさじさんには"描いて"ほしいと言われたので絵を考えたのですが、どうしてもこのポジティブ思考について書きたくて。
心(感情・気持ち)と頭(考え方)の分離ができていると回復しやすいよ!と。

(会社ではチームメンバーや後輩に言っていることではあるのですが、実際に書いてみると難しいですね。noteの皆様の筆力・表現力の高さを改めて感じました。)

なさじさんはわたくしが思うポジティブシンカーです。文中にあるように"しっかり""良くしよう"と考える人です。
いい面も悪い面もちゃんと見て、その上で良くしようとしている(スルーも含めて)。。。
ポジティブシンカーはわたくしの中での褒め言葉ですのでぜひお受取りください(笑。

また椿さんには書くにあたって背中を押していただきました!ご期待に応えられているか不安ですが・・・
いつも椿さんにはやさしいコメントで勇気づけられています。ありがとうございます!!

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このnoteはsakuさんが始められたnoteリレーに参加したものです。
企画ありがとうございました。このような機会をいただけてうれしいです。

また、このnoteリレーは鯖.さんが背骨的役割を果たされていると思います。いわば背骨です。
リレーなので並走されているというか、、継続を作っていかれていること感謝と尊敬を感じます。
このnoteにもコメントいただけるかな・・・
さきに感謝を述べてしまいます。ありがとうございます!(笑)

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さて、リレーの次のバトンは、山田スイッチさんにお願いしたいと思います。

わたくしがnoteを始めたときから大活躍されている方です。
キーワードは、土偶のゆるキャラドグ子、ストーンサークル、竪穴式住居、BL小説。パンチの効いたものだらけ!行動力があり、文章に勢いとポップさがあり、嫌味がなく、かつ主張はしっかり。

そんな山田スイッチさんがわたくしのテーマで書いてくれる。なんて嬉しいことでしょう!
うれしいので絵にしてみました。↓跳躍するドグ子さん。(顔を手で抑えている、否!口元に手をやる姿がチャーミングです!)

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お題は、「なんども、なんども」です。
楽しみにしています!!

ここまで、長文お読みいただいてありがとうございました!


見ていただきありがとうございます!