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【ゲームデザインレビュー】詰将棋チックな骨太シミュレーション「Into the Breach」

私の生活をちょっと壊しやがったゲームのですね。レビューをですね。せっかくなんでやろうかと思います。あーんなことや、こーんなことをする時間が吸い取られてしまった……。

なお、こちらは「ゲームレビュー」ではなく「ゲームデザインレビュー」です。個々のゲームデザインに対し、ゲームデザイナーの端くれである私が「どういう効果があるのか」を考察していきます。

なお、私のプレイ状況は以下の通り。

・全部隊でNormal4島クリア
・5部隊でHard4島クリア
・実績は75%ほど達成
  ↓
一通りは遊んだけど、やりこみまではしていない

「4島クリアって何やねん」という話もありますが、分からない人はスルーしてもらって大丈夫です。あとで分かります。

なお、レビュー中は敬語を省きます。めんどーなので。


------------------基本設計------------------

まずは簡単なゲーム紹介から。

『Into the Breach』は「虫型のエイリアンから侵略されている世界を、未来からやってきたメカで救うゲーム」だ。

もう少し具体的に言うと「8*8の64マスの中で、いかに建物を守ってエイリアンの侵略に耐えるか」というゲームである。プレイヤーは3機のメカを動かしてエイリアンと戦う。

戦闘画面

シミュレーションゲームに多いが、気がついたら数時間が溶けているタイプのゲームだ。ちょっとやろうかな……と思って手を出すと、私のような意志薄弱な人間は気が付くとアレなことになってるやつ。

「詰将棋的なゲーム」と言われることの多い本作だが、そもそも詰将棋的なゲームって何やねん?という話もあると思う。まずはそこを言語化していく。


数手先を計算して動く、思考と計画のゲーム

詰将棋的な面白さ、をもう少し言語化すると表題の通り。後で説明する。

このゲーム、プレイヤーが動かすのは3機のメカだ。そのターン、各メカを1回ずつ動かして敵の攻撃をしのがなければならない。ちなみに相手の攻撃をしのぐ方法は多彩で、ざっと思いつくだけでもこれだけある。

①直接攻撃して敵を倒す
②相手の位置をずらして、攻撃されるマスを変える
③相手の位置をずらして、水場に落として即死させる
④相手の位置をずらして、同士討ちさせて敵を倒す
⑤敵を煙幕で包んで攻撃不能にする
⑥敵を凍らせて行動不能にする

まぁ、言葉で説明しようとしてもよくわからない。画像でいこう。

例えばこの状況。茶色い蟻のような敵に、建造物を狙われている。

敵を動かすB_01

このままいくとマズいので、こちらのメカの武器で蟻の位置を手前にずらす。

敵を動かすB_02

蟻が移動して射線がズレた結果、蟻の攻撃は建物ではなく他の2つの建物を狙っている紫の蜂に向かう。紫の蜂のHPは4で、蟻の攻撃で倒せる。

敵を動かすB_03

つまり敵の位置を1マスずらすことで、3つの建造物を同時に守った上に敵も倒せるわけだ。

また、敵の行動順は事前に知ることができるので、それも計算に入れて行動を決めていく。ちなみに今回、蟻は味方である紫の蜂を殺した後に隣の甲虫の突進をくらって死ぬ運命にある。南無三。

敵を動かすB_04

こうやって、限られた行動回数・限られた手札から最適解を考え、時には敵を利用して切りぬける……というのがこのゲームの醍醐味だ。5体の敵がいるけどこちらは3機しかいない、そんな不利な状況を知略をもってひっくり返した時のカルタシスはなかなかのものがある。

また、敵の配置やエリアの構成はランダムで作られるので、繰り返しプレイしても毎回若干違うシチュエーションになる。なので毎ターン異なる3手詰めが発生し、飽きない作りになっている。毎回違うシチュエーションで最適な行動をとるためには常に「誰をどの順番でどんな行動をさせるのか」を考えなければならず戦術性が高い。これが計画をする面白さ、ひいては「詰将棋的な面白さ」を生み出しているのだと思う。

…とまぁここで終われば、ただのゲームレビューだ。しかしこの記事はゲームデザインレビューである。なのでもう少し踏み込む。


◆戦略性を生み出すのに大切なもの

こういった、戦術性のあるゲームに必要なものが2つあると思っている。

①考えるための情報
②ある程度限定された状況

そもそも①の情報がなければそれを基に考えることができないし、考えるべきことが無数にありすぎると逆に考える意味がなくなってくる。

詰将棋で言えば

①:将棋の駒の性能はこちらと同じなので、各コマの動き方が分かっている
②:将棋盤の一部のみの少ないマス。常に王手をかけるので、1手に対する相手の動きは数パターンに限定される

という形でこれらを達成している。相手のコマの動きは分かっているし、相手の動きも十分予測ができるので、戦略性が担保できているわけだ。

一方、Into the Brechでは以下の形で達成している。

①:相手の行動が事前に分かる。敵のHPや攻撃力も全て公開している
②:戦場は最大でも8*8の64マスで、常に1画面に収まる小さなマップ

敵の行動と情報

このゲームは一般的なシミュレーションRPGよりもはるかに戦術性が高い。それを根底から支えているのは①の情報によるものだと思う。敵の行動が分かるからその対策を考えることができるし、敵のHPも分かるので自分の行動でどんな結果になるかが明確だ。自分の行動の結果が明確だからこそ、2手3手と考えていくことができる。

行動の結果が明確、という点においてはもう一つ、こちらの行動に対する運の要素がほぼ無いのも重要かもしれない。1手1手の影響が非常に強いので、「この攻撃の命中率は75%」みたいな要素があったらクソゲー化していると思う。


◆勝敗条件がゲームの奥深さを成立させている

勝敗の条件

このゲーム、勝利条件が「敵の全滅」ではなく「街を守り切る」なのが非常に良い。これが「敵を全滅させれば勝利」「味方が全滅したら敗北」だったら、凡なゲームで終わっていたと思う。

エリアの勝敗に関して文章でまとめるとこう。

【勝利条件:規定ターン数を耐える】
・耐えるためには何やっても良い

【敗北条件:電力インフラ(ライフ)が0になる】
・建造物が攻撃されると電力インフラが減る
・電力インフラが0になったらゲームオーバー
・電力インフラはエリアクリア後も引き継ぐ

敵を全滅させる必要はないし、ユニットの命を守るだけじゃ生き延びられない。

さて「全滅」が勝敗の条件から除外されることで何が良いのか…というところだが、主に2点ある。

①行動の選択肢の幅が一気に広がる
→攻撃系以外のスキルに攻撃スキル並みの価値を持たせられる
→ユニットやスキルにバリエーションが持たせられる
→行動の選択肢に「味方を犠牲にする」が生まれる
→目標を達成する手段が多くなり、考えるのが楽しくなる

ここはかなり大きいと思う。もちろん攻撃スキルの価値は大きいのだけど、「火力を持つスキル」よりも「敵を1マス移動させるだけのスキル」の方が必要なシーンも多い。そのため攻撃スキル以外の価値も上がり役割分担ができる。実際やってみたところ、直接攻撃スキルを封印してHardモードのクリアも可能なほどだった。

また、敗北が「味方が死ぬ」ではなく「建造物が攻撃される」なので、ユニットの命を雑に扱えるのも良い。まぁさすが味方が死ぬと一気に形勢が不利になるので頻繁には殺せないけど、HPが許す限りは「あえて敵の攻撃の射線に身を投げ出して攻撃を受け止める」という行動が選択肢に入る。

目的を達成するための手段が多いことで、行動に幅が生まれる。行動に幅が生まれることで「考える」ことが楽しい。このゲームのコンセプトに合った仕様だと思う。

次、もう一点。

②緊張感のある戦闘が継続できる
→敵を全滅させる必要が無いので、常に敵を供給できる
→常に敵を供給できるので、ある程度敵を倒して「勝ち確定」な状況になって戦闘の終盤が作業的になったりすることが減る

やっぱり、敵がいっぱいいた方が苦戦するので。そうすると敵がいっぱいいるバトル序盤~中盤よりも終盤の方が楽勝になったりもする。そうならないように一般的な全滅系の仕様でも後方にボスを置いたりとか、急な増援を出したりとかするわけだけど、ワンパターンになりがち

全滅させる必要が無いから毎ターン(一定数まで)敵を供給する、というのがゲームの基本仕様として存在するのは自然な形で戦闘の緊張感を継続できるので、利点のある仕様だと思う。


◆デフレ型のパラメーター設計が思考ゲームと相性良い

パラメーターはデフレ型。敵のHPは10未満(5でも多い方)だし、味方の直接攻撃もかなり強い武器でもせいぜい4ダメージを与えるくらいだ。

TCGなんかもそうだけど、数字が大きくなるとプレイ中のHP計算がややこしくなるので、思考を要求するようなゲームはデフレ型の方が合う。例えば、以下の2つであれば①の方が計算しやすいのは明らかだろう。

①6-4 = 2
②360-165 = 195

特にこのゲームは「この攻撃でどれくらい減らせるか」というのを常に把握しながら考えるので地味に重要な部分だ。「どういう手で行くのか最善か?」というのを考えさせたいのに、コアな部分でもない数字の計算に手間取るのは非常によろしくない。

また、同様の理由で「防御力」が基本パラメーターに存在しないのも良い(特殊効果でダメージを-1するものはある)。防御力が入ると計算する要素が増えるので、プレイヤーに考えさせることを重視させるゲームと相性がそこまで良くなかったりする。

この辺の話は前にゲームデザイン論にも書いたので、興味のある方は読んでみて欲しい。


◆難易度のパターンが2種類ある、が……

ここはあまり評価できない部分。ココを説明する前に、ややこしくなるのでこのゲームの目的を先に説明しておく。

まず、このゲームの目標は各特長を持ったアイランド(島)をエイリアンから守り切り、ラストのエイリアンが巣くう島を攻略すること。4つの島の攻略順は自由(敵は攻略状況に合わせて強くなる)のだが、ラストの島は2島をクリアした時点で行けるようになる。つまり

・2島クリア:Easy
・3島クリア:Normal
・4島クリア:Hard

に相当する。が、これ以外にも通常の難易度選択(EasyとかHardとか)も存在する。つまりこのゲームはプレイヤーが選択できる難易度が以下の2パターンあるのだが、これがあまり意味があるようには思えなかった。

というのも、これらを比較してもやりたいことがそこまで変わらないのだ。

①Easy・Normal・Hardなどの一般的な難易度選択
◆高難易度のメリット
 →クリア時のスコア(救った人数)が高くなる
◆難易度の変化
 →難易度が高いほど、強敵(紫色の敵)が出やすい
 →難易度が高いほど、敵が多く出現し初期敵も多くなる
②どのタイミングでラストの島に挑戦するか
◆高難易度のメリット
 →クリア時のスコア(救った人数)が高くなる
◆難易度の変化
 →難易度が高いほど、強敵(紫色の敵)が出やすい

メリットも難易度の変化もそこまで変わらない。ちなみにNormalでも4島攻略時には紫の敵だらけになってくるので、実質的な所は「敵が多く出現し初期敵も多くなる」部分の違いだろう。

こうなると存在意義を無くしてくるのが「Hardの2島クリア」だ。挑戦する島が少ないのでスコアは高くならないけど、中途半端に難易度が上がる。正直どちら一方で良かったと思う。4島クリア前提でEasy・Normal・Hardを選択するか、難易度選択を無くして島のクリア数で難易度を分けるか。

思うに、「考えるのが苦手な人にもクリアした感を味合わせつつ、コアゲーマーも喜ぶ難易度を用意する」あたりが狙いなのかなぁ。そこに2パターンを用意するにしても、もう少し違いを設けるべきじゃなかったかと思う。

例えば、Hardならボスが2体出るようにするとか……。この話に関連して、もう1つ残念な部分がある。次で説明する。


◆圧倒的なラストの盛り上がりの薄さ

ラストの島のあっさり感が凄い。何せラスボスに相当する敵が存在しない。あと割と敵を即死にもっていかせやすいので、むしろ他の島よりも簡単に感じる時もある。

ちなみに私がプレイしていた時の感想をそのまま書くと、

◆Normal2島クリア
 →ラストがあっさりすぎるけど、2島しか攻略していないかだろう
◆Normal3島クリア
 →え、展開が何1つ変わらない。4島じゃないとダメか
◆Normal4島クリア
 →4島クリアでも何も変わらない。マジか。Hardなら??
◆Hard4島クリア
 →なwにwもwかwわwらwなwいwwwwwwww

という状況。本当に、「え、もう終わりなの?これだけ???」と思わせられる。

最後の島は2マップを連続でクリアして終了で、それはどのパターンの難易度でも変わらない。なんかこう「クリアした島数に応じてラストのマップ数が変わり、4島クリア時には特別なボスがいる」とかあればクリアの島数にも意義が出てくると思うのだが、それらがまったくないのが非常に残念だ。この変化の無さは「難易度を上げて挑戦したい」という気持ちを挫く。

また、終盤の肩透かし感は達成感を奪い、プレイヤーへ悪印象を与える。「最後の印象」というのはそのゲーム全体への印象にも大きく影響するので、ここはもう少ししっかり作った方が良いと思う。心理学的に言えば「親近効果」と呼ばれるものだ。

…余談だが、「親近効果」と対をなす「初頭効果(最初に与えられた情報は印象に残りやすい)」がゲームデザインの本でたびたび目にすることがあるが、だいたいが拡大解釈な事が多い。私も親近効果を持ち出しているのでアレだが、注意した方が良いと思う。


◆ボーナス目標の存在が飽きを軽減させる、が……

このゲームのバトルにはエリアごとにランダムでボーナス目標が設定されている。今回の戦闘で特定の条件を満たしたらよい事あるよ、的なやつ。

ミッション

ボーナス目標に応じてマップに特徴が出るし、島ごとに特色のあるボーナス目標が設定されていたりする。毎回ちょっと違う目標でプレイする、というのは大事でこれのおかげか何周やっても飽きない。

さらにその島すべてのボーナス目標を達成すれば、島をクリアした際に追加で報酬(武器・パイロット・電力インフラのうち1つを選択)がもらえる。なのでよりプレイヤーはボーナスを目標を達成するために頑張る仕組みになっていて、パーフェクトを達成した時の喜びも大きくなるわけだ。

パーフェクト

と、 思 う じ ゃ ん ?

最初はなるけど、ある程度慣れてくるとね。何というかね。パーフェクトが義務みたいな形になってくるの。うん。こうなると、

・パーフェクト達成!やったぞ!!!

というような正の感情よりも、

・あ、ミスった。パーフェクト失敗。やる気なくすわー。

という負の感情が強かったりする。特に目の前のボーナス報酬とパーフェクト報酬を同時に無くすことになるから損した感が半端ない。

それとボーナス目標も「列車を守れ」みたいなのは視覚的にも分かりやすいから良いけど、「山を壊せ」とか「○回ブロックしろ」みたいなのは意識していないと忘れる。分かりにくい。挑戦して達成できなかったのはまだ良いとして、忘れてて報酬を逃した時の盛り下がりはなかなかゲーム体験としては痛い所がある。

また、これは良くも悪くも「ボーナス報酬やパーフェクト報酬が育成要素に大きく絡んでいる」というのも要因としてあると思う。重要度が高いので皆目指そうとするのは良いが、重要度が高いが故に逃した時の負の感情が強い。パーフェクト時の報酬が実績解除やスコアボーナス程度であればまだ負の感情は湧きにくかったと思う。


------------機体・キャラクターデザイン------------

このゲームは3機のメカを操ってプレイするが、このメカは「部隊」ごとに特色がある。プレイヤーは毎回、ゲームを始める前にどの部隊を使うか選択する形だ。

部隊選択

なお、最初は「リフトウォーカーズ」しか使えない。ゲームをプレイし、実績をクリアすることで「コイン」を手に入れ、好きな部隊を解放していく形になる。

部隊選択_未開放

実績画面

さて、ここで各部隊を使った感想と個人的なランク付け(D~Sの5段階)をしていきたいと思う。とりあえず私は悲しい気持ちになった。

なお、結構長くなったので飛ばしても良いと思う。飛ばされても悲しい気持ちにはならない。

◆部隊考察

リフトウォーカーズ:Cランク 
・特別な強さは無いが、使い勝手の良い装備が揃う。
・育成に必要なリアクター数が多く中盤が大変。

部隊解説_リフトウォーカーズ

最初の部隊だけあって、チュートリアル的な要素が多め。だが、ゲームに慣れて使いこなしてくると意外な強さを発揮……しない

いや、ほんと、弱い。よ わ い。

確かに使い勝手は良いんだけど、純粋な性能の低さで敵に対応できないシーンがまぁ多い。というか使い勝手が良さそうに見えて、他の部隊の劣化武器だったりする。

飛んでいるメカが居ないのも痛い所で、障害物や敵に移動を阻まれてしまう。その結果、止めたい敵を止められずに建造物が壊されてしまうこともしばしば。対応力が低い。

規定ターン数を耐えるこのゲームにおいて、対応力が低いと安定した戦力は誇れない。もう少し何とかならんかったのかと思う。


ラスティングハルクス:Sランク
・解放に必要なコイン数:2
・煙幕(そのマスにいる敵味方は移動以外できない)に特化した部隊
・パッシブで、煙幕内にいる敵にダメージを与えられる

部隊解説_ラスティングハルクス

やたら名前の格好良い部隊だと思う。ラスティングハルクス。

特筆すべきは攻撃不能にする「煙幕」をばらまけるところで、煙幕内の敵にダメージを与えることもできる。攻撃は苦手だが、煙幕を上手く使えば強い。

…って思うじゃん?

普通に直接攻撃も強い。このゲーム武器の素の威力は(たぶん)5が最大で、強敵でも1撃で倒せる。で、真ん中のやつのロケットがかなり使い勝手の良い4ダメ武器(HPが低い強敵を一撃で倒せる)。さらに撃った時に真後ろに煙幕を張るので、敵を殺しながら別の敵の動きを止めたりできる。ヤバい。左の飛行機も2ダメ+煙幕×2マスみたいなことができる。煙幕も強化すればターン開始時に2ダメ与えるので、実質4ダメ*+2マス+行動不能。ヤバい。

考えなしに煙幕を張るとこっちも攻撃したいマスで攻撃できないデメリットはあるけど、建造物の隣のマスに煙幕を張ってると近接系の敵は近寄れないのでかなり強力。

攻守共に強くHardも楽勝だった。個人的には最強部隊。逆に言うと揃いすぎている感はある。個人的にはロケットはもう少しダメを抑えて敵を移動させる別の方向に振っても良かったんじゃないかと思う。煙幕効果以外はリフトウォーカーズの貧弱ミサイルと交換してあげて欲しい。


ゼニスガード:Bランク
・解放に必要なコイン数:3
・敵味方を貫通するレーザーが強力
・障害物に阻まれがち

部隊解説_ゼニスガード

少しピーキーだけど火力があって使いやすい。

左の「レーザーメカ」が持つ「バーストビーム」は未強化で3ダメ与えることが可能で、さらに威力が減衰するものの貫通して射線上の敵にもダメージを与えられる。欠点としては味方や建造物にもダメージが入るところで、常に射線を意識しながら立ち回る必要がある。とはいえうまく立ち回ればデメリットよりもメリットの方がはるかに大きく、バーストビームはこのゲームの中でもかなり強い武器だと思う。

戸惑うのが真ん中の「チャージメカ」で、自分もダメージを負いながら敵に突っ込む。無暗に連発していると「攻撃すると自分が死ぬから手を加えてみているだけのターン」が発生するので、最大HPの上昇は必須。なお、障害物は越えられないし自傷はするし最大ダメージはラスティングハルクスのミサイルと変わらないしで、決して強くはない。ただ、序盤でのダメージは頼もしい。

ピーキーに見せかけて使いやすく、これ使った後にリフトウォーカーズ使うと予想以上に火力が足らなくなって泣きそうになる。

欠点としては遠距離砲撃ができるメカ(ブルート型)がおらず、障害物に簡単に阻まれる。まぁレーザーが強いのでそんなに気にならないけど。なんかチャージメカの使いにくさでバランスとってる気がする。


ブリッツクリーク:Aランク
・解放に必要なコイン数:3
・敵、味方、建造物を伝う雷の範囲ダメージがエグい。
・守るべき対象を破壊しないように注意

部隊解説_ブリッツクリーク

隣接している敵味方を巻き込む「エレクトロウィップ」が非常に強力。強化すれば建造物も伝って攻撃できるので、他の武器では対応できない状況を一撃で解決したりする。強い。

ただ建造物にはダメージがないものの、HPに対するダメージは入るのでボーナス目標で守るべき列車を簡単に壊す。うまく敵を誘導しないと「攻撃したいのにできない」状況になったりするので注意。

良くも悪くも「エレクトロウィップ」ありきで、ほかの2機はその補助といった感じ。真ん中のフックメカは最初からアーマー(ダメージ-1)がついてて「俺ごとやれ!」って感じだし、右のロックメカは岩を設置してエレクトロウィップの道を作れる。岩を設置しないで直接ぶつけても強く使い勝手が良いので、わりとこの部隊を支えているのはロックメカ。

個人的にはフックメカがもう少し何とかならんかったものか。アーマーあっても毎ターンくらうとさすがに死ぬので、特殊なパッシブつけるなりなんなりして特徴を出してほしかった気もする。

ちなみにHardに初めて挑戦した時はこの部隊で、一発でクリアできた。強い……が、ラスティングハルクスにはかなわない。使い勝手と防御面で劣る。


スティールジュード―:Bランク
・解放に必要なコイン数:5
・ポジション操作に特化しきれいていない
・敵が同士討ちをした際のダメージを上げられる

部隊解説_スティールジュードー

ネーミングセンスは一番好き。ジュード―てあなた。ジュード―。

ちなみに左のジュード―メカは敵をぶん投げて自分の後ろに移動させることができる。地味に唯一無二の武器を持つが、別に強くはない。真後ろに障害物があると投げられないので対応力が低かったり……。強化して2マス後ろに移動させられるとか、もう少し強化の方向性がハッキリしていれば良かったと思う。

上手いこと同士討ちさせれば非常に強く、攻撃力の高い敵にボスと攻撃させれば一撃で倒すことすら可能。6ダメとか入る。

敵を移動させることの強さが分かる部隊だが、移動と同士討ちという意味では最高峰の「テレポーター」を持っていない辺り、コンセプトに徹し切れていない感がある。なぜ他の舞台に渡した。強すぎたのだろうか。


フレイムベヒモス:Cランク
・解放に必要なコイン数:5
・炎を使い、敵を「燃焼」させることに特化している
・別に攻撃力は高くない

部隊解説_フレイムベヒモス

全員が燃焼(毎ターン最初にダメージ1が入る)耐性を持ち、自らの武器でもじゃんじゃん燃焼を振りまいてマップを燃やす。建造物には燃焼ダメージが入らないので、安心して建物も燃やせる。ただ、ボーナス目標で守る対象は普通に燃え死ぬので注意。

燃焼の利点は「ダメージが最初に入る」所で、HPが1なら確実に殺す。なのでHP1で燃焼状態の敵は無条件で放っておける。また敵の増援地点をあらかじめ燃やしておけば、出てくる敵は最初から燃焼状態になる。

なお、じゃんじゃん敵を倒せそうな雰囲気を持つが、燃焼状態にしないと直接攻撃をする手段がない。全部隊の中でもトップクラスに敵を倒せないので、敵を○体倒せみたいなボーナス目標が苦手。

使っているとわかるが、基本的に1撃で敵を殺したいゲームなので、普通に殴り殺した方が良い。HP1でも道を塞がれると面倒だったりするので、普通に殴れるサブ武器が手に入るとそっちに頼りがち。全員が燃焼耐性を持つのは良いが、レベルアップもう少し燃焼に特化した効果を着けて欲しかった。燃焼のダメージが上がるとか……。とにかく現状だと燃焼特化の強さが見えにくい。

なお、地味に右の「スワップメカ」が強い。スティールジュードーが欲しくてたまらない「テレポーター」もちで、水場に落として即死させたり敵を同士討ちさせたりと大活躍する。燃焼なんかよりもずっと強い。ただし射程を強化しないとゴミクズのように使いにくいので注意。+2したあたりから本番。


フローズンタイタンズ:Cランク
・解放に必要なコイン数:6
・敵を凍らせて動きを封じる。自分も凍る。
・とにかくピーキー。防御力は最上級。

部隊解説_フローズンタイタンズ

説明文にもある通り、最も特徴的なのが右のアイスメカが持つ「クライオランチャー」で、自機と敵一体を凍らせることができる。凍った相手は衝撃が加えられるまで何もできない。自分は1ターン使って修理すれば次のターンに動ける。なお、建物も凍結状態にできる。

凍結は「衝撃が加えられれば治る」「凍結の間はダメージ0」という特性を持っているので、「あえて敵の攻撃を凍結状態で受ける」「凍結状態で敵の増援をブロックして凍結を解除」「凍結させつつ、味方の範囲攻撃で自分の凍結を解除」といったように、うまくアイスメカの凍結を解けば連続で毎ターン動くことも可能。いかに修理をせずにクライオランチャーを使うかがカギとなる部隊だ。

凍結はどんな敵でも一発で動きを封じるし、凍結した敵を直そうと敵のターゲットをとる事もできるので非常に強力。こちらで凍結を解いてしまえば同士討ちも狙える。……のだが、システム上の欠点が多く正直微妙すぎる。

凍結させるとダメージは通らなくなるので、当然倒せない。なので経験値が入らない。特に強い敵は多くの経験値を持っているので、うまく凍結で敵を凍らせるほどこちらの成長が遅れてしまう。

ボーナス目標を達成するのがかなり苦手な部隊で、敵○体倒せ系のは失敗しがち。ボスも凍結できるが、ボスを倒さないとボーナス目標は達成できない。そうするとパーフェクト報酬も逃しがちになるので、武器もパイロットも育たないことになる。力不足に陥りがち。

また、真ん中のミラーメカによるヤヌスキャノンは、前後に球を発射するため建造物を巻き込みやすい。凍結したアイスメカを直すのにはうってつけだが、状況によっては「敵を倒せるけど自分が出す被害の方が大きい」みたいなことにもなるので使いにくさはぬぐえない。

うまく凍結を解除できれば良いが、出来なかった時は1ターン分の行動が犠牲なるのでそうなった時が非常に危ない。そこまでのリスクを負うくらいなら普通に倒してしまった方が正直良い場面も多く、リスクとリターンが見合っていない部隊だと思ってる。

凍結に関連したパッシブが何かあればよかったのかもしれない。凍結状態の敵を一撃で倒せるようになるとか……。


ハザーダス:Dランク
・解放に必要なコイン数:6
・ダメージ出力量は別に突出していない
・自傷ダメージと再生を繰り返すが……

部隊解説_ハザーダス

自傷ダメージと引き換えに敵に大ダメージを与えることができ、敵を倒せばHPが回復する。殺られる前に殺れ、という部隊。敵をA.C.I.Dにすることもでき、A.C.I.Dになった敵は倍のダメージが通る。

正直に言う。私はこの部隊の良いところがまったく思い浮かばない。コンセプトは嫌いじゃないのだが……。

まず、火力が低い。左のホップメカはジャンプして着地した周囲4マスにダメージを与えらえるが、無強化だと1程度しか与えられない。範囲を含めた総ダメージ量でいえば確かに高いのだが、範囲が広いと建物を巻き込むので密集地帯では使えないという弱点もある。スティールジュード―の砲台なら自傷ダメージなしで同じことができるし、建物に被害を出さずに撃てるのでデメリットを抱え込んでいる分下位互換な感じは否めない。というか広範囲火力という点ではブリッツクリークに勝てないし……。

ハザーダスの真ん中、アンステイブルメカもピーキーな割には弱い。大砲を撃って直線に2ダメ、自分は自傷ダメージ1と共に後ろに1マス下がるのだが……建造物が後ろにあると衝突して壊してしまう。自機へのダメージもしっかり入る。強化しての最大ダメージも4ダメで、これなら他にも撃つ奴はいるしなんだったら自傷ナシで撃てる。

自傷ダメージ系のスキルは「自傷ダメージを上げて敵へのダメージを増やす、その代わり強化費用は安い」というのが入っていて、これがまた使いにくい。ヒールで回復し切れなくなってしまう。さらに言えば自分がA.C.I.Dだと自傷ダメージも倍入るので、「自分が4ダメくらって死にそうになりながら攻撃する」キャラになる。そこまでのリストを冒してまでやる攻撃が他の部隊と比べてそこまで火力が無い。死ぬのと同時に敵を倒せば自機は復活するので、恐らくそれが前提なんだと思う…が、やはりデメリットに対してメリットが少ない。これくらいの火力をデメリットなしで撃てる部隊はいるし。

つまるところ「攻撃する時に自傷ダメージ」「味方や建物を巻き込む」「リスクを背負っても言うほど火力はない」という状態であり、他の部隊に比べても見劣りする。Hardの4島クリアはできたがその強さを実感することは最後までなかった。


◆部隊は値段が高いほど弱く使いにくい(なぜ……)

全部隊の考察を終えたところで、、改めて「解放に必要なコイン数」と「実際に使ってみたランク付け」を出してみようと思う。どん。

部隊選択_ランク付け

見てわかると思うが値段が高いほど使いにくく弱い。値段の高い部隊ほど上級者向けとも言えるが、あまりメリットのある仕様とは言えないと思っている。

一応、意図は想像できなくもない。難易度の仕様(すべての島を攻略しなくても最後の島に挑戦できるなど)のところからも感じるがこと初心者でもクリアできるようにしているところがある。安めの値段のところに強い部隊を置いてまずはクリアしてもらい、上級者向けのピーキーな機体は値段を高くして後でやってもらう……みたいな意図が、想像だがあるのかもしれない。

ただ、そのような意図を持たせるのならそもそも「解放する部隊が好きに選べる」という仕様自体が合っていない。その意図であるなら解放する機体を選ばせる意味があまりないので、獲得したコインの数に応じて順番に部隊を解放していけば良いのだ。

実際、私はプレイしている時に「値段が高い方が強いだろう」と思って、先に高価格帯の部隊を解放している。攻撃力が高いだろうと思ってCランクのフレイムベヒモスやフローズンタイタンズを使ってみたところ、クソ雑魚性能に頭を抱えたのである。強さと値段が釣り合っていないし一度解放したら戻せないのでモヤモヤ感を抱えることになる。こうしたプレイヤーの狙いとゲーム仕様の乖離は避けるべき項目だと思う。


◆そもそもの部隊の説明が分かりにくく説明不足

「プレイヤーの狙いとゲーム仕様の乖離」に関連するところだが、そもそもの根本的な問題として部隊の説明文が説明不足で分かりにくいというのは正直ある話だ。例えばフレイムベヒモス。

部隊解説_フレイムベヒモス

この説明で「直接攻撃がほぼなく、攻撃力が低い」というのを想像する人間は恐らくいない。フローズンタイタンズの説明も誤解を招きやすい。

部隊解説_フローズンタイタンズ

確かにクライオランチャーは強力な兵器だが、「主砲」「強力」といった言葉と「敵を凍らせて止める。攻撃力はない」という仕様がかみ合っていない。ミスリードが発生していて、実際私は火力を求めてフレイムベヒモスを解放して絶望し、また火力を求めてフローズンタイタンズを解放してさらなる絶望を味合わされている。悲しかった。

なんというか、ある程度の指標は置いて欲しい所である。例えば

フレイムベヒモス
・攻撃力  :★★
・防御力  :★
・押し出し力:★★★★★
燃焼耐性をもつメカ部隊。向かってくる敵は、炎で焼き尽くす。

みたいな形であれば、よりプレイヤーも実際の仕様を想像しながらどの部隊を解放するか考えることができる。それか説明が面倒なら、解放する前にどんな武器を持っているか見れるようにすればこうした誤解はなくなるだろうと思う。


サブ武器が個性を殺す

これは良く言えば救済措置だし悪く言えば個性を殺す仕様。

各メカが装備できる武器は2つまで、そして各部隊の武器は評価値のストア等でランダムで手に入れることができる。つまりレーザーを乱射するようになったフレイムメカ、岩をぶん投げまくって氷なんか使わなくなったアイスメカ…みたいなこともできる。というか実際やった。

そのおかげかどの部隊もまぁクリアできるようにはなっているのだけど、逆に言えば各部隊の個性を無視する結果にもなっている。弱い部隊では「この部隊でクリアしたけどこの部隊の個性のおかげで勝ったわけじゃない……」というような状況も度々発生する。ここは割と残念ポイント。

初期装備系はその部隊専用の装備にしてしまって良かったんじゃないかと思う。それかけっこうなレア設定にするとか、装備に必要なリアクターが+1されるとか、何かしらのペナルティは必要だったのでは。

せっかく各部隊それぞれのコンセプトをもって設計されているので、その個性が失われがちなのはもったいない。


◆コンセプトに徹し切れていない弱さ

というか、そもそも追加のサブ武器にメインウェポンの座を奪われがちなやつらにも問題がある。Cランク以下の部隊はのきなみ「コンセプト通りにプレイするよりもサブ武器を使った方が安定して強い」という純粋な弱さが悲しいことに、ある。

例えばラスティングハルクスはコンセプト(煙幕で行動不能にさせながら削り倒す)がハッキリしているし、そのコンセプトが強いのでその方向に合わせたプレイが自然と出来る

部隊解説_ラスティングハルクス

しかし他の部隊で煙幕中心の動きはあまりできない。ラスティングハルクスの強さは、煙幕を張れる武器と煙幕を強化するパッシブスキルによって支えられているからだ。装備同士のシナジーが仕事をしている

装備のシナジー

対して、フレイムベヒモスは燃焼自体の効果量は上がらないためどうしても火力不足に陥るし、強い直接攻撃スキルがあればそっちを使った方が強い。辺り一面を火の海にはできるが、パッシブ側が弱いので火の海が弱いのだ

部隊解説_フレイムベヒモス

フローズンタイタンズの凍結はどんな敵でも止めるので確かに強いが、止めれる敵がほとんどの状況で1体だけなので、一番何とかしたい「強敵がうじゃうじゃいる状況」で非力な事が多い。主砲となるべきクライオランチャーに成長要素が無く、凍結を支援するようなパッシブも皆無なのが不要さに拍車をかけている。非力かつシナジー要素が薄い

部隊解説_フローズンタイタンズ

ハザーダスは「自傷ダメージがあるけど敵を倒せば回復できる」というコンセプト自体は機能しており、パッシブは良かった。しかしそれを支える武器が貧弱で「自傷ダメージがあるけど強い」ではなく「自傷ダメージを差し引いても普通」という悲しい状態になっている。最高ダメージを叩き出せるような、ハザーダスならではの威力が欲しい所。というか自傷ダメージを特徴としておくなら、それをダメージに転嫁するようなパッシブがあっても良かったと思う。

部隊解説_ハザーダス

こうしてみると、低評価の部隊は「シナジーはあるんだけど弱い」状態になっていて、その部隊のシナジーに頼らない方が良い、という状況になっている。

こういったコンセプトに応じた個性はできるだけ尖らせて「分かりやすい派手な強さ」を持たした方が面白くなるものだと思う。実際、ラスティングハルクスやスティールジュード―はプレイしていて楽しかった。


まとめ

そろそろ疲れたので終わる。キャラとか、成長バランスに関しても考察しようかと思ったけど、既にかなりの文章になってしまった。

ざっと今回の話をまとめるとこう。

①戦術性がかなり高いゲーム。
②高い戦術性は、情報の開示と状況の限定に支えられている。
③行動に対する運要素が無いのも大事かも。
④「全滅」以外の勝敗条件が良い仕事をしている。
⑤難易度のつけ方はちょっと謎。2パターンもいらなくない?
⑥ラストの盛り上がりの無さは損。最後の印象は大事だと思う。
⑦パーフェクトの重要度が高くてノルマ化している。逃した時の気分の盛り下がりがよろしくない。
⑧部隊ごとに様々なコンセプトがあり、違う攻略法で挑めるのは良い。
⑨値段が高いほど弱いのはどうかと思う。プレイヤーの狙いとゲーム仕様のミスマッチがストレス。
⑩サブ武器によって部隊の個性が殺されがちなところがある
⑪コンセプトは分かりやすく尖って派手に行った方が良い。コンセプトは明確だけど徹し切れていない部隊がいくつかある。

面白かったです。


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個人でインディーゲーム作ってます。ゲームブック風のマルチエンディングなRPG。ゲームデザインもこだわってゴリゴリ制作中。Twitterで情報を垂れ流してます。

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