会員制の粉雪【毎週ショートショートnote】
「いままで雪にどれだけお金を払ってると思う?」
声が高くなった。
「灯油、電気代。ウインタースポーツを楽しめ!と強制的に体育授業に組み込まれたスキー、スケート用品代。
転ばないために必要なブーツ。
雪には傘をささないのでフードつきのダウン。
それなのに…。粉雪を見るためにお金を払うだと?」
「前置きが長いな…とにかく会員にならないと見せられない」
年齢不詳の女が失笑している。
「千円も払って?バカバカしい。わざわざ東京に来てまで…」
…扉を開けるとそこは、北海道だった。
結局会員になってしまった。
他の会員たちが喜ぶ。
口々に言う。
「きれい」
光にまざって宝石のように輝く粉雪。
手を広げて喜ぶ会員達。
そうか。
自分のウンザリしているものを多くの人が「価値があるもの」として喜んでいる。
それはお金を払ってでも知るべきことだったんだ。
そして皆に別れを告げ、ドアを僕だけ閉めて北海道に戻った。
交通費が浮いて結果得をした。
ラッキー。
さ、雪かきしよう。
(410文字)
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