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この不気味さが案外いける話題の映画【LAMB/ラム】♯077

映画の上映時間は1時間45分が最適だと思っているシネマジェンヌ。1時間46分という理想的な上映時間っていう理由だけで観てたら、奇抜で独創的な映画でびっくり。ネタバレほぼなしの解説です。


LAMB ラム    2022年/アイスランド、ノルウェー、スウェーデン




【ストーリー】

アイスランドの牧草地に住む羊飼いの夫婦、
イングヴァルとマリア。
ある日、羊の出産に立ち会うと羊ではない“何か“が産まれた。
困惑する2人だったが、その何かにアダと名前を付けた。アダを
育て始めた二人は幸福感に包まれていく。しかし、
そこに一人男が家にやってくる。




【解説というか、レビューというか】

冬は雪で閉ざれているアイスランドの山間。
夏になると白夜になり、羊たちの『メェえええー』という、
か細い声が広大な牧草地に響き渡る。
妻のマリアが巨大なラム肉を食卓に運ぶ冒頭、
もうのっけから不穏な空気漂いまくり。

ラム肉は生後12ヶ月以下の子羊の肉のこと。
乳は搾りとられ、食糧にされ、ウール衣類にされ、
ヒツジ無しでは語れないアイスランド。

子を亡くした夫婦の悲しみを描いてるんだけど、
それは人間でなくても羊も同じですっていう
羊たちの怒りが感じ取れる。
よって、羊たちは沈黙しません。



何度も羊の出産に立ち合ってきたふたり


全編にわたって登場人物のセリフよりも、
『メェえええー』の鳴き声の方が多い。
終盤に差し掛かるとトラウマ化して、
『ヒツジなんめんなよ、てメェえええー』と叫んでいるかのように
聞こえ、視聴者はヒツジの呪いに掛かります。この様なホラー映画と
受け取れる作品を、年始から配信するアマプラの
気合いの入り方には恐れおののく。


ノオミ・ラパスの演技が素晴らしい



前回の解説で、ここ数年の映画のトレンドは
家族パニック系ブラックコメディだと書きましたが、
トレンドはもうひとつあるようです。それは、
ネイチャー系ホラーファンタジードラマ。もう訳わかりません。
地球グミくらい訳が分かりません。
本作『ラム』の他に『ミッドサマー』や『アネット』が
これにあたると思います。民話みたいな怖ーいお話し。

これらの映画、実はテーマがほぼ同じ。
“不安“を描いているんです。
それも誰にとっても他人事じゃない、日常にある不安。
まさに今の世を映し出しているんですね。

非常に奇妙で不気味汁ダダ漏れの映画だけど、
思いの外ハマるかも。
地球グミ映画をぜひ味わってみてください。


美しい大自然と愛くるしい羊



【シネマメモ】

Twitterでは不評コメントをよく見かけましたが
私は好きです。特に、
普通の物語に飽きてるに人にはおすすめの映画ですよ。

視聴後は何となくお肉が食べ難い。



✳︎合わせてみたい映画
レオス・カラックス監督の
フレンチ系ホラーミュージカルファンタジードラマアート。
『アネット』


『羊たちの沈黙』


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