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皿うどんサラウンドの皿を割って話そう~邂逅 後悔 公開 親孝行はカニの味編〜

お盆に帰省する段になり、
実家の家族と接する機会が増えてき、
特に我が偉大なる母は、
先日記した様に何かと苦笑いする事が多く、
我が胃が痛くなる母だったりもするので、
お盆休中ではあるが、
書かないと後悔するので、記す。


帰省すると、普段自分でやるには手がかかり、
面倒臭いことを手伝わされたりする。それは、
延々と干し柿の皮を剥いたり、
延々と甘栗の皮を剥いたり、
延々とクワイの皮を剥いたり、
延々とカニの殻を剥いたり、
とにかく大雑把な母には苦手な
根気と精密さと手先の器用さが
必要なものばかり。

この時も帰省するなり、
すでにカニが山のように茹でられおり、
父、母、祖母の三人で、
私が剥くのを今か今かと待ち構えていた。
荷解きすること間もなく、食卓につき、
カニ剥きに取り掛かる。
好物を前に、
俄然食欲が湧いた三匹の食べ手に
到底一匹の剥き手では間に合うはずもなく、
痺れを切らした一匹は
(もちろん偉大なる母だが)
待ち切れないから自分で剥くと
娘帰ってきた嬉しさもあって、
はしゃいでカニを剥き、食べていた。
しかし、先述の通り、大雑把かつ
サンタクロースより慌てん坊の母は
案の定カニの爪を床に落とし、すぐさま
下で待ち構えていた飼い犬が飛び付いた。
硬いカニの殻は
絶対に犬に誤飲させてはならんと
素早く手を伸ばしたが最後、
理性を失った飼い犬に手を噛まれ、
私の手には穴、大出血をした。
タオルを当てても滴る流血に
カニを頬張っていた母も流石に焦ったのか、
病院へ連れて行ったげると車を出してくれた。
車中では
「いつも診てもらようるから
夜中でも診てくれる」と
行きつけの病院に
連れて行ってくれるようだった。
そして、何故か暗がりの一軒家に到着。
母は力の限りドアを叩く。
「先生〜開けて〜急患〜」

程なくして、
パジャマ姿の先生が出てきてくれた。

先「どしたん」
母「娘が犬に噛まれて」
先「ほぅ」
母「連れてきたんよ」
先「うん、ほんで犬は?」
母「犬はどうもないよ。噛まれたのは娘」
先「?」

おわかりだろうか?このなんとも言えぬ
噛み合わさってない感。

そう、私は

動物病院に連れてこられていた。

先「ここは動物病院よ」
母「じゃけん犬に噛まれたから動物病院来たんよ」
先「患者が犬なら動物の病院」
母「なんで?」
先「患者が人間なら人間の病院」
母「なんで?」
先「、、、」

私「お母さん 撤退しよう」
母「なんで?」

私は獣医に平に平に謝罪し、
まだまだ痛む手で自分で運転をし、
獣医が人間を診てくれなかったことに
プンスカしてる母を宥めつつ、
帰路についた。

幸いにも出血は止まり、
次の日には親戚の営む
人間の病院へ行けたわけだが、
ドクター叔父に話すと
母らしいと大爆笑してくれた。
「らしい」と失笑されたぐらいだ。
私の知らぬ内に
よほど前科を積んでいるのだろう。
「犬より母に気を付けろ」と
アドバイスまで処方してもらった。

病院から帰ると母は飼い犬に説教していた。
「説教されるべくはあんただよ」と
喉まで出かかった。

その一言を言わぬが親孝行。

グッと言葉も固唾も飲み込んだ。

食べてもいないカニの味がした。

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