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Too Happy To Live

煌々と照らすお日様
汗ばむ陽気が
私に夏の訪れを知らせてくれる
崩れた天気
雨宿りの時間でさえ
私にとっては愛おしい

拝啓
お父さん、お母さん、
私が島を脱出してから2年経ちました。
お元気ですか。
私は様々な地を旅しています。
そして先日牡蠣に当たりました。
牡蠣というのは、エリプスシェラドルントぽい形で、味はペール貝に近い貝類です。
そして結構な確率で腹を下します。
腹を下すというのは、お腹が痛くなることです。
その結構な確率を引くことを「当たる」と表現するようです。
面白いですよね。
私はちっとも面白くありませんが。

さて、おふたりは、なぜ私が突然島から消えたのか気になっていることでしょう。

そうだ!言い忘れてましたが、
おふたりが今住んでいるところは島国です。
なので、おふたりはピンとこないかもしれませんが、この手紙ではおふたりが
今住んでいる地のことを島と表現します。

話を戻します。
説明がとても面倒なので、なあなあに済ませてしまいたいのですが、さすがに何の説明もなしだと、罪悪感で牡蠣に当たってしまうので、
ことの経緯を説明します。


私たちが住む島では
望んだことが何でも叶います。
家を望めば、次の日には好きな場所に、
好きな家が建つ。
おふたりはそんな暮らしが当たり前だと思っているでしょう。
しかし、外の世界では違います。
家を建てるには、空いている土地を探さなきゃいけないし、たくさんのお金だって払わなきゃいけません。
お金というのは、欲しいものを手に入れるのに必要なものです。とにかく苦労しないとお金は貰えません。
…たまに苦労せずにお金持ちな人もいます。
どうやってるんでしょうかね。あれ。
やれやれ、外の世界は苦しいことばかりです。

外の世界を知らずに育った私は、何不自由ない生活を当たり前だと思っていました。
しかし、そんな私の人生に転機が訪れたのです。

島を脱出する1ヶ月前のこと。
海岸へ巨大スノードームの完成を見に行った私は、ある老人に出会いました。
というか漂流してました。老人。
性別は分かりませんでした…。老人…。
たまにいるんですよ。性別が分からない老人。

まあ、それはいいとして。
その老人は外の島から来たようで、私の作ったスノードームを見て驚いていました。
その老人とお話をするうちに、外の島の話を知ることができました。
そのあと、老人を丁重にもてなしましたが、次の日には帰る準備をしていました。

「 なぜ帰ってしまうのか?この島にいれば何でも手に入るし、辛いこともない。」
と聞いたところ、老人はこう答えました。

「Too happy to live. ここは住むにゃ幸せすぎる 」



…ちょっとカッコつけすぎじゃないすかね?

まあ、その言葉が気になって私も島を脱出することにしたんですけどね。

望めば何でも叶うので、脱出は楽でした。
かれこれ2年間、外の世界で旅をしましたが本当に色々なことがありました。
そのお話は、またの機会に。

おっと!私を島に連れ戻すことを望まないでくださいよ。これが私の生き様です。
…ホントにやめてくださいね?

それでは、お体にお気をつけてください。
お父さんはあんまりチョコレートを食べすぎないように。お母さんは野生の鳩にパンを与えすぎないように。

それでは…



「辛い世界に幸せを求めて…さらば!」

敬具

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