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全国で相次ぐ“保育士の一斉退職”なぜ?どう防ぐ?(240501午後LIVEニュースーンより)

池田伸子:保育士の一斉退職が相次いでいる実態について現場で何が起きているんでしょうか?

池田:この問題の取材を続けている社会部の小林さやか記者にスタジオに来てもらいました。

伊藤海彦:保育士の一斉退職ということですが、何が起きているんですか?

小林さやか:まずこちら、ご覧ください。

小林:一斉退職というのは、同じ園で働いている保育士の人達が同じ時期に示し合わせたかのように退職してしまうという事象なんですが、今年の3月以降、私が取材で確認できただけでもこれだけの箇所で一斉退職が。

小林:具体的にどういう声があるかということですけど、

「自分が働いている園で実際に一斉退職が起きてそうすると残った少ない人数で保育するということで、けがや事故が心配」だという「現職の保育士さん」の声ですとか現場の窮状を「何度、園の運営側や行政に訴えても改善しようとしない」ので、今まさに一斉退職しようとしている」という声ですとか、また、「保護者」から自分が通う園で退職問題が起きて「何で保育士の方が辞めていくのかの説明もなくて、不安」だという声も寄せられていて、まさに氷山の一角だという状況です。

伊藤:皆さんが一斉に示し合わせて辞めていくということですね。

小林:一斉にということですが、なんで一斉退職していくと思われますか?

池田:親からするとどうしたの?何が起きたの?って不安が先行してしまうんですけど、働いている側に立つとこれ以上続けられないという大きな理由があるということですね。

小林:労働条件や雇用環境の問題もあるんですが、最大の理由はそこではないところにありまして、実際に取材させていただいた一斉退職、自分がしたという保育士さんの声なんですけど、こちらの園では小さい園なので、現場に働いている保育士の方7人ほとんど全員に当たる人数が一斉に退職したり休職したりする事態になっています。

小林:この園では運営する会社がこの数年、次々新しい園を新設していて、そうすると、それに伴って続いているという状況でした。

小林:現場としては、なんとか人を増員してほしいと訴えてきたんだけど、聞き入れてもらえずにそうすると保育士の人数は国が配置基準を定めているんですけど、それすらも割り込んでしまう事態が常態化してきたということなんです。

伊藤:配置基準はお子さんの数に対して何人の保育士が必要ということですよね。

小林:いわば最低基準のようなものなんですが、人が足りない中で保育しないといけない中で休憩がとれないとか、あと、休みが取りにくいのが当たり前になってくるばかりではなくて子どもをちゃんと見れない危険な状態というのに置かれるのが頻発してきたということなんですね。

小林:例えば、「30人ぐらいの子ども、手厚く見ないといけない2歳から3歳の子どもを保育士2人で散歩に連れていかないといけない」と。

小林:道を飛び出すかもしれないですし、遊具から転落して1人がそこを見るともう1人が全員見なきゃいけないと。

伊藤:それはいいんですか?

伊藤:2歳、3歳の子どもを保育士2人だけで見るのは配置基準に関わらないんですか?

小林:厳密にいうと法令違反の可能性はあります。

小林:それでも子どものために投げ出すわけにはいかないと。

小林:ぎりぎり限界まで我慢していたんですけど、地震が起きて本当に大きな災害が起きたらこの子達の命を守りきれないということで一斉に退職しようと決意されたことなんです。

小林:他の園でも人が足りていなくて泣いていてもだっこができないとか、お漏らししちゃったんですが、オムツ替えてあげられないですとかそういった状況が起きていて、子どもの安全を守るためにはみんなでストライキのように一斉に辞めて保育を辞めるしかないと思いつめて、最後の手段として一斉退職を選んでいるという状況です。

伊藤:投げ出して辞めているとかそういうことではなくて、保育士の方々の皆さんの園に対する強いメッセージということですね。

小林:一斉退職を防ぐための手だてをどうするかということなんですが、どういうことを思いつかれますか?

池田:人を増やすとか現場にという。

池田:給与の問題もあるでしょうし。

伊藤:配置基準を見直すとかそういう話でもないんですよね。

小林:まさにそのとおりで、根本的には人手不足を解消するしかないと。

小林:国は対策をずっとしていて、保育現場では人手不足で待機児童問題を解消していく中で人が足りないというところで、ただ、給与が一般の職業に比べて低かったりですとか配置基準の問題もあって、負担が重すぎるということで国も処遇を改善したり、配置基準を戦後初めて見直してみたりという取り組みを図っているんですが、追いついていないのが現状です。

伊藤:新設をどんどんして、ただ人が足りていない状況というのは、それは待機児童の対象の流れの話ですか?

小林:園の待機児童の問題を解消するためにいわば、そこで働く人の確保が追いついてこなかったという状況ですが、根本的な人材の確保って時間がかかるので、今いる人を離職させない取り組みが重要なんですが、そういった一斉退職を防ぐために大事なことは職場環境を改善していきましょうという取り組みですが、園は閉鎖的になりやすい。

小林:子どもも声を上げづらいですし、親も待機児童問題でこの園がいいと選べないのでとう汰されていかない中で少しでも第三者の目を入れることで環境を改善しようという取り組みです。

小林:社会保険労務士、職場環境のプロが園に入って第三者の目で労使の対話を促すということで、少し質の部分でさける時間を生み出していくという取り組みです。

池田:既にこれを取り入れている園もあるんですか?

小林:福岡県の自治体の取り組みなんですけども、労使の対話が進んだことで本当にやりたい保育について話し合えたり、コミュニケーションがよくなったという実例もあります。

伊藤:取材されていて、先程大量に退職、一斉退職してしまう園の共通点みたいなものは何か分かりましたか?

小林:風通しがよくないことに尽きると思います。

小林:皆さん、いい保育をしたいという思いはあるので、そこをかなえていくために風通しをどうよくしていくかだと思うんですけど、さっきの専門家だけではなくて「地域とか保護者とか外部の人材の力を積極的に借りて」外の目を入れていくと。

小林:そうすると、行事を手伝ったり保育士の余力も生まれてくるので、そこで確保された時間で「保育の質の部分を語り合う時間を確保」することが大事だという専門家の指摘もあります。

伊藤:今回取材して一番大事だと感じたのはどこでしょうか?

小林:これまでどうしても量の拡充ばかり重点が置かれてきたので、いかに質を高めていくかという転換点にきていることを強く感じました。

(以上で番組部分終わり)

(クリエイターのコメント)
最初から保育所などの保育施設を安全に、また、安定的に経営・運営できるように環境を整備するべきだと思いました。良心的な運営をしている保育所などもあることは承知していますが、量を優先し、一部の保育所などで質、特に安全を蔑ろにせざるを得ない状況にさせてしまったことについてはおかしいと思うし、行政側のチェック体制、指導などの努力が相当不足していたことは厳しく問われるべきだと思います。また、そもそも保育所の委託費用が低いのではないか。そのため、小規模の保育所などは新設して施設の数を増やし収入を増やしていかないと経営を安定化できないのではないかと思います。その部分の大幅な見直しも必要ではないかと思います。あとは、どうしても経営者、運営の長の方が立場が強かったりするので、この番組で提案があった、労使や運営側と従業員、労働者、保護者との話し合いができる時間と場所を確保するという取り組みが有効だと思うので、この良い動きが全国的に広がっていくことを期待します。


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