次世代NEMブロックチェーン、Symbolに迫る(11)〜委任ハーベスト編〜
このシリーズでは、NEMを簡単に振り返ると共に、NEMの次期バージョンのSymbolの特徴、Symbolのローンチまでの流れ、そしてSymbolがどのように活用されていくのかをなるべく分かりやすく紹介していきます。
Symbolのメインネットローンチが2021年3月15日と決まり、いまかいまかと待ちわびている人も多いでしょう。
今回は前回の続きで委任ハーベストについてお話したいと思います。
前回の記事を読んでいない方は↓からどうぞ
委任ハーベストとは
ハーベストはブロックを生成した際に得られる報酬なので、本来であればノードを建てて行う必要がありますが、Symbolでは自分でノードを建てなくても、指定したノードに重要度を預けることでハーベストに参加する仕組みが備わっています。これを委任ハーベストとよびます。
ハーベスト参加要件
ハーベストに参加するには、10,000xym以上の保有が必要となります。また5,000万xym以上保有しているアカウントはハーベストに参加することができません。
委任ハーベストをやってみよう
では、委任ハーベストをやってみましょう。ここではSymbolのデスクトップウォレットを使った方法を解説します。
※ 今回の解説に使っているウォレットのバージョンは0.14.1でテストネットを利用しています。
事前確認: ハーベストの要件に満たしているか確認
ハーベストしたいアカウントの残高が1万xym以上あるか確認しましょう
残高が1万xym以上あっても、インポータンス(重要度)が0の場合、ハーベストに参加することができません。アカウントに入金してもインポータンスはすぐに反映されないので、インポータンスが0の場合、しばらく時間をあけて、反映されるまで待ってください。数時間で反映されます。
ハーベストの設定をする
左メニューの「ハーベスティング」を選択し、ハーベスティングの設定画面に進みます。
設定画面に遷移したら「ノードURL」のノードリストから任意の1つを選択し、「すべてのキーをリンク」をクリックします。
確認・署名のダイアログが表示されるので、ウォレットのパスワードを入力して、「確認」をクリックします。
先のトランザクションが承認されると、ハーベストの状況が「リンク済みキー」に変わり、キー情報が更新されます。
これを確認したら、「有効化」をクリックします。
メッセージの暗号化のためにウォレットのパスワードを求められるので、パスワードを入力して、「確認」をクリックします
ハーベスト有効化のトランザクションを署名するために、再度ウォレットのパスワードを入力し、「確認」をクリックします。
有効化のトランザクションが承認され、設定に成功するとハーベストの状況が「有効」となります。
あとはハーベストされるのを楽しみに待ちましょう!
と言いたいところですが、委任ハーベストもいくつか注意しないと行けない部分があるのでここからはその紹介をしたいと思います。
ここが大変委任ハーベスト
委任ハーベストは自分でノードを建てずにできる反面、委任先のノードの状態に依存することが多々あります。ここでは委任ハーベスト中に発生しうる事象を紹介したいと思います。
委任ハーベスター間競争
1つのノードで受け入れられる委任ハーベスターの数には限りがあります。その数を超えるとインポータンス順または先着順に上位のアカウントのみが受け入れられ、他のアカウントはそのノードに委任することはできません。
ハーベスト状況が「有効化が進行中」となっている場合、そのノードでは自分より優先度の高いアカウントが既に委任ハーベストを行っており、それらのアカウントが委任をやめるか、優先度が下がらない限り委任ハーベストに参加することができないので他のノードを探すことが賢明です。
ノードはインポータンス順か先着順で受け入れるアカウントを決めることができますが、委任側はそれを知る術はありません。
また、1つのノードで何アカウント受け入れ可能かもノード側で決めることができますが、委任側はそれを知る術はありません。
知る術はないのですが、目安としてSymbolのノードを構築するツールにはそれらのデフォルト値は設定されており、それによると
受け入れ順はインポータンス順、受け入れ可能数は「5」となっています。
但しこの値は変更可能なため絶対ではありません。
ノードが現在受け入れているハーベスターの数は調べることが可能で、
http://(ノードのURL):3000/node/unlockedaccount
でunlockedAccountに入っている要素の数が現在受け入れているハーベスターの数となります。
以下のノードでは5アカウントが委任中となっています。
これを目安に空いていそうなノードで委任をトライするのがよいかもしれませんが、成功するかはやってみるまで分かりません。
また、インポータンス順の場合、仮に成功したとしても後から自分より優先度の高いアカウントが委任してきた場合、後から追い出されることもあるので気をつけましょう!
この辺はある意味世知辛い仕様になったかもしれません。
委任先ノード消滅リスク
委任先のノードがなんらかの事情でノードを停止したり、撤退した場合、委任ハーベストも無効になります。
なお、NIS1では委任先のノードが停止した場合、再度委任をやり直す必要がありましたが、Symbolが委任先のノードが一度停止後でも、再開した場合は再度委任が継続されます。
NIS1ではソフトウェアのアップデートでノードが停止した場合、委任やり直しとなるつらさがありましたが、Symbolではその面は改善されています。
が、撤退した場合はどうしようもないのでいつまでも有効にならない場合は他を当たりましょう。
慈悲深いノード
Symbolではノード側の設定で最低手数料倍率やどのトランザクションを優先してブロックに含めるかを決めることができます。
トランザクションの優先順としては、「手数料最大化」「古いトランザクション順」「手数料が低い順」の3つがあります。
ノード構築ツールのデフォルト値は、最低手数料倍率が「100」、優先順は「手数料最大化」となっていますが、これもノード側で変更可能で、委任側はどの戦略かを正確に知る術はありません。
最低手数料倍率が「0」で手数料が低い順にしているノードは、トランザクションを送る側としては手数料0でも送ることが可能な慈悲深いノードと言えますが、そんなノードに委任してしまった暁には、ハーベスト報酬のうち手数料分はあまり期待できないでしょう。
ここまで委任ハーベスターが当たる可能性がある世知辛い面を紹介してきましたが最後に1つこれにあたったらラッキーな話もしておきます。
ハーベスト報酬を総取りできる可能性がある
前回、Symbolでは委任ハーベスト報酬の一部をノード運営者が受け取ることができると紹介しましたが、これを受け取るにはノードの設定に受取先のアドレスを設定しておく必要があります。その受取先のアドレスですがノード構築ツールのデフォルト値は設定されていません。もし設定していなかった場合、ハーベスターは本来ノード運営者が受け取るはずだった分も受け取ることができます!
委任ハーベスターにとってはありがたい話ですが、ノード運営者におかれましてはとりそびれがないよう設定を確認しましょう
委任ハーベストの恩恵を多くの人に届くかはノード次第
ここまで委任ハーベストについて、大変な面も含めて紹介してきました。先ほども紹介したように1つノードで委任できる数には限りがあります。そしてSymbolのパブリックチェーン全体で委任ハーベストできる数にも限りがあります。
例えば、全てのノードが1台あたり5アカウントまで委任可能として、ノードの数が100個だった場合、委任ハーベストに参加できる上限は500となります。これが仮に1つのノードが10アカウントまで委任可能として、ノードの数が500台であれば、委任ハーベストに参加できる上限は5000になります。
委任ハーベストはノードを建てなくてもハーベストに参加できるとはいえ、それが機能するにはやはりノードの数が確保され、それらが適切なプロパティで運営される必要があります。
ということで、次回はノード運用についてお話しできればと思います。
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