キレイゴト抜きで語ります! 成長意欲のない中国Z世代に現地駐在員はこう対応して! 【前編】
日本で就職氷河期世代、ゆとり世代、Z世代などというように、中国でも80後、90後(80年代、90年代生まれ)と世代による呼び方があります。中でも00後(2000年代生まれ)は幼少期からデジタル環境に囲まれて育ったデジタルネイティブです。
私の感覚ですが、日本のZ世代と同世代(ざっくり95年以降に生まれた人、中国Z世代とします)の中国人社員に対しては、会社における管理・育成の仕方をこれまでとは相当変えないと、力を発揮してもらえないんじゃないかと思います。
今回は成長意欲の薄い中国Z世代の背景事情と、駐在員はどう対応すればいいかという観点から考察します。
中国のZ世代は本当に成長意欲がないのか
そもそも中国Z世代は本当に成長意欲が薄いんでしょうか。実際に接していて「そうかなあ?」という人は読まなくて大丈夫です。逆に、中国若手社員の意欲の低さに課題意識がある人は、ぜひ一緒に考えてください。
私は自社の採用や他社の採用支援で中国Z世代とはかなり接点が多い方だと思いますが、確かにここ数年、就職や仕事に対する熱度の低い人が増えたと感じます。例を二つ紹介します。
無職だけど結婚します
中国Z世代には、なかなか仕事を続けられない人が大勢います。理由はいろいろで、「職場の人間関係がイヤ」「仕事がつまらない」「しんどすぎる」など。ちょっと勤めてみては数か月程度で辞めてしまいます。
そんな感じの人に「結婚します」と言われると、私などはやっぱり「お…?」となるわけです。
片方に稼ぎがあって、片方は働かないというならよくある話ですが、どちらも働いてない。どう考えても自分たちの収入では生計を立てられません。最初から親の援助をフルで受けることが前提。「もういい大人なんだし、まずは仕事を見つけて落ち着いたら?」とか言われないのかなと思いますけど、親世代にもその感覚がないみたいです。
だって疲れたんだもん
もう一つの例は、某銀行の人に聞いた話です。
名門大学を卒業した新入社員が窓口業務に配属されました。窓口は複数あり、新人君はその中の1か所を担当。その日はお客さんが多くて行列が途切れません。ほどなくして新人君は自分の窓口をクローズし、カーテンを閉めて事務所の方に戻ってきました。
不思議に思い、「えっ、もう閉めたの? お客さんは?」と聞くと、「まだたくさん並んでる」。「じゃあ、何で戻ってきたの?」「疲れたから」。
唖然として「お客さんが並んでて、先輩たちが忙しく対応してるのに戻ってきちゃダメでしょう」と言ったものの、本人はどこ吹く風。ちょっと休憩してくると出て行ってしまったそうです。
支店長が激怒して、おそらく本採用は見送りだろうということでしたが、こういうことを違和感なくやってしまうZ世代は少なくない気がします。
中国Z世代の背景と様相
背景① 経済的に困らない
Z世代はどうして仕事への熱度が低いのか。最もシンプルな理由は経済的に困っていないから。景気の浮き沈みはあるものの、いまの中国の人々は、20〜30年前と比べてはるかに豊かな暮らしをしています。特に沿岸部・都市部に住む親世代が成人した子供に「生活に困るから早く自立しろ」なんて言うことはありません。
背景② 親世代も求めない
そのためか、成人した子供が定職につかなくても、親世代はプレッシャーをかけません。むしろ「つらい仕事をするぐらいなら家にいなさい」という態度。若者世代の姿は育ってきた家庭環境と社会環境の鏡。そう考えると、親世代の変化の影響も非常に大きいと思います。
背景③ コロナや低成長
コロナ期に学生生活を過ごしたZ世代は、授業はオンライン、友達とあちこち出かけることも、いろいろな体験をする機会もありませんでした。
しかも、その間に中国の高度経済成長が終わってしまった。これまで毎年10%も20%も給料が上がって当たり前だったのに、自分たちが成人してみたら就職口がない。あっても不安定な仕事や低賃金。
社会から「オレも一旗上げてやるぞ」という勢いが消え、頑張れば頑張った分だけ報われるとか、お金を貯めて不動産投資すれば将来安泰とか、そういう前向きなエネルギーがなくなってしまいました。何に熱意を注いでも、報われる気がしない。この気分はZ世代に通底していると感じます。
背景④ ネットの情報過多
これは他国のZ世代分析にもよく出てきます。ネットに情報が溢れていて、いろいろなことが見え過ぎてしまう時代になりました。「あの会社で5年頑張っても給料はその程度か」「外から見るとすごい会社だけど、中の人たちは大変そう。自分には向かないな」。そんなことが早くから見えてしまい、あくせくしたってどうしようもないという方に流れがちです。
仕事に対する憧れや好奇心を持てず、さらに就職難のタイミングだと、努力した人がまともな仕事につけないというような情報も流れてきてしまう。この状況では、最初からそこまで頑張る気になれなくても責められません。
背景⑤ 暇つぶしに便利過ぎる
現代社会は暇つぶしに便利すぎます。することがなくて毎日退屈なら「そろそろ仕事でも」となりそうなものですが、いまはちょっと動画を見ていたら一日が終わっていたとか、オンラインゲームにハマっていたら1か月経ってたとか、あっという間に時間が過ぎていく。
スマホ一つあれば永久に暇つぶしができるんじゃないかと思うほど。そういう環境にいて、衣食住にも困らないとなると、ふと就職のことが頭をよぎっても、「ま、いっか」となってしまいます。
背景⑥ ギグワークの方が気楽
私は中国に行くと「DiDi(滴滴)」などの配車サービスをよく利用します。
DiDiの若いドライバーの様子を見ていると、いまの時代、日系の工場で働きたい人は少ないだろうなと思います。立ちっぱなしで、夜勤があって、郊外の工業地域まで通勤に1時間以上。規則も厳しくて、ヘルメットを被れ、安全靴を履け、手袋をはめろ、とうるさい。現場によっては暑かったり寒かったりもする。
一方、自分の車でできる配送業やタクシーなら、エアコンは好きなように調節できるし、好きな音楽もかけられるし、自分がいちばんリラックスできる環境で働ける。オーダーも気が向いた時だけ受けて、気分が乗らなければ休みにしてしまえばいい。それで上司から無断欠勤だのサボりだのと叱られることもありません。そりゃ、その方が楽ですよね。
もちろん生活のために必死に働くギグワーカーもいますが、Z世代のDiDiドライバーを見ていると、機嫌よく自分のペースで働いている人が多いように思います。
背景⑦ ポストが埋まっている
10〜20年前は、立ち上げたばかりの若い会社がたくさんありました。2000年代初頭の進出ラッシュで出てきた外資系企業、その後に時流に乗った中国の新興企業が続き、どんどん事業を拡大していきます。
それらの企業もいまでは設立から20年、25年。規模も大きいし、安定してそうだし、就職してもいいかなとZ世代が思うような会社は、すでに上から下までポストが埋まっています。しかも要職を占めている人たちはまだ40代半ば。定年まで10年〜20年近くある。
設立から間もない頃や拡大し続けていた頃の会社は、ポストがいっぱい空いていて、当時の若者は自然に「頑張ったら上にいけるぞ」と思えました。しかしZ世代には「入社してどんなに頑張っても、ポストが空くまで上には行けない」という現実が見えてしまいます。最初から諦め気味になる気持ちも理解できます。
成長しなくても/成長したくても
ここまで列挙した背景要因を大きくまとめると、一つは成長しなくても食べていける、楽しく生きられるということ。もう一つは、成長したくても、現状そんな機会はなかなかないということです。
次回に続きます。待てない方は動画をどうぞ。
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