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横連携しない中国人部下を変えた3つの仕掛け

中国の組織では、管理者も担当者も本当に横連携しません。仲が悪いか、または相手に無関心。そんな彼らをどう動かして横の連携を進めるか、中国駐在員ができる仕掛けを考えます。

このnoteは、毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
記事の末尾に動画リンクがあります。


横連携しない部下たち

現地にいる人は痛感していると思いますが、中国人社員はとにかく横連携をしないですよね。横連携しないとは具体的にどういうことか、一応まとめておきます。

他部署の業務に無関心

他部署の業務に無関心で、よその部署が何をしているか知らない。何か大きなことがあっても「ああそう」ぐらいで終わってしまう。

会議で他部署に口を出さない

各部署の管理職が集まる会議で議論しようとしても、他部署の話には一切口を出さない。質問しない、意見を言わない、助言もしない。あたかもネットカフェで別々のブースにいるかのように、一緒の場所にいてもお互いが沈黙を保っている。

「調整してくれ」「決めてくれ」と持ってくる

部長同士、課長同士で話せばいいことも、上に「調整してくれ」と持ってくる。製造と品質で揉めて調整が必要となったとして、自分たちで議論せずに「総経理、決めてください」と丸投げする。

それぐらいのことだったら自分たちで決めればいいのではと思うようなことも、調整せずに上に持ち込んでくる。自発的に横の議論をすることがない。

接点があると仲が悪い

必ずではないものの、仕事で接点のある部署同士は仲の悪いことが多い。「接点=互いの利害がぶつかる」になるためか。

例えば、経理部は各部署にあれこれ提出を求めたりチェックしたりする立場なので、接点を持つ部署全部と仲が悪い。それから製造と保全。ラインがよく止まるなど問題があると、製造は「保全のメンテナンスが悪い」と言い、保全は「製造の使い方が悪い」と言う。

営業と管理も同じ。営業は経費を使ってガンガン外に行きたい。管理はコストを考えてバランスを取りたい。当然、営業は「稼いでいるのはオレたちだ。多少は融通が利かないと仕事ができない」、逆に管理は「営業だけで仕事が完結するわけじゃない。自分たちだけ特別扱いするな、ルールはルールで守れ」とぶつかる。

なぜ横連携しないのか

横連携しないのは、何千年もそういう体制だから

なぜ中国人は横連携をしないのか。ここは前提から考えないといけません。そもそもできないのか、できるけどしないのか、見極める必要があります。

私の見立てでは、たぶん両方。わざとやってないというわけではなく、できない。しかし、ずっとできないままでもないと思います。

どうして横連携しないのか、背景を考えてみます。身も蓋もない話ですが、「何千年もそういう体制だから」。中国的な組織は、放っておくとそうなるものです。

中国的な組織の特徴

中国的な組織ではボスが絶対です。下同士で勝手に話し合ったりすると、ボスの権限を犯したという話になりかねません。中国流では、ボス自身も部下も「決めるのはボス」と思っています。これは政治や行政、中国の国営企業を見ていてもわかりますよね。

また、部下同士がちゃんと連携して動き出し、いろいろな物事が進むと、ある意味、ボスに対する脅威になるわけです。優秀な部下たちが組織を回しているとなれば、ボスは自分が放り出されるかもしれないと考えます。放り出されても、そういう組織なら何とかなってしまう。これはまずい。

で、ボスはどうするかというと、部下同士を競わせます。ボスが絶対の組織では、評価もボスがすべて。ボスがよしと言えばよし、アウトと言ったらアウト。ポジションの数が決まっていれば、特に何もしなくても部下たちはボスの評価を得るために競争します。

ちなみに、部下とその下の部下、ベテランの管理者と新進気鋭の若手も同じです。上司が自分を飛び越えて若手を評価したらイヤだと思ってますから、実は横連携だけではなく上下連携もしていません。私はその根本には共通性があるのではないかと思っています。

つまり、ボスが絶対の組織では、必然的に部下同士は横連携をしないし、できないし、仲が悪い、というわけです。

横連携しない理由

①横連携はボスが望まない

以上を踏まえて、中国人部下が横連携しない理由を整理しましょう。まずは、そもそもボスが横連携を望まない社会だから、ということがあります。

②部下同士は社内政治のライバル

部下同士が社内政治のライバルなので、仲良く問題を解決していては差がつきません。他人のミスが自分の得点になるため、助け船は出さない。本当はこうした方がいいとわかっていても言わない。接点があれば、踏んづけたり揚げ足を取ったりしようとします。

③お互いの利権を守るため

特に日本企業に多いのが、お互いの利権を守るために横連携しない人たちです。管理がゆるいと、社員は勝手に自分の利権を得ようとします。この時、中国の組織ではまず自分の子分をつくります。自分で動くより子分を動かした方が楽ですし、大きいことができますからね。

各部署にミニボスが生まれ、子飼いの部下を持つようになると、ミニボスは利益をちゃんと分捕ってきて、子分に分け前を与えなければいけません。そうなれば製造は製造、管理は管理、営業は営業で阿吽の呼吸です。どこかの傘下に部署ごと下ることもあります。

戦いが激しくなると、戦国時代の末期のようにだんだん派閥が集約されていき、最後に一人の大ボスが残るという会社もあれば、3〜4人の中ボスがお互い干渉しないまま黙々と自分の利権確保に集中するところもあります。うっかり他のボスのことに口を出すと反撃が待っていますから、お互いのために黙っています。


このような理由があるため、横連携しない状況をそのまま放置しておいては、誰もやらないし、やれと言って急にできるようにもなりません。メリットがあまりない以上、横連携しないのは当たり前です。会社側で何とかするしかない。これが中国における横連携の現実だと思います。

横連携を促すために

横連携を促す視点① ボスが横連携を望んでいる

どうやって横連携を促すか。いま見てきたことの逆をやります。

まずはボスが横連携を望んでいるということをメッセージとして出していく必要があります。言うだけではダメです。ボスが本当にそう思っていること、横連携しないとボスからの評価は上がらないことを実利で示し続けなければなりません。

横連携を促す視点② 横連携する人ほど高評価

自ら横連携しようとする人、自部署の利益・立場だけではなく全社最適の観点から行動できる人ほど評価が上がる、処遇が上がる、昇進も早いということを見せていきます。

みんなのためにあえて自部門で何かを引き受けたり、自部署の得になるとは限らないことも「全体のためにやった方がいい」と言える人ほど上に行けて、横連携しない人はいつまでたっても現状維持。場合によっては、先んじたライバルが利権にメスを入れることさえあると見せつけます。

横連携を促す視点③ 全体最適を追求する人に入替

②を進めると、トップの意図を理解して成長していく人と、現在のレベルから出ようとしない人に分かれます。ここで経営者として人事権を活用。上から順番に、管理職を「全体最適を考えるのは当たり前」という人たちに入れ替えます。

部長クラスが変わったら、課長クラスも必ず変わります。課長クラスまで変わったら、その下の担当者たちも間違いなく変わっていきます。

入替は上から順番がポイントです。下からではダメです。上が変わっていないのに下を入れ替えると、下の若い人が潰されたり挫折したりして、むしろ離職を加速させてしまいます。

いきなり全員は替えられませんから、入れ替えた人にはちゃんと高い評価をつけたり、評価権を渡したりして、彼らが力を発揮できるよう応援します。

そうではない管理者は少しずつ力を削いでいって、居場所を狭めれば、周りからも見切りをつけられるようになります。場合によっては自分で別の道を選ぶかもしれないし、暴発して会社に戦争をしかけるようなことがあれば、それを使って船から降りてもらいます。

なお、入替の過程で首をすくめている人だけが残っていると、トップが替わった時にまた元に戻る可能性があります。

横連携を自然にできるようになるためには、本質を理解して、この方がいいと実感している人たち、全体最適を考える方が自己利益に汲々とするより健全だと思う人たち、それは仕事人として当然の振る舞いであると思える人たちですべてのポジションを埋めてしまうことです。

時間はかかりますが、最終的にはここまで持っていかないと、横連携して当たり前という組織にはならないと思います。

私は、実際に横連携できるようになった人たちもたくさん見ています。決して本質的に無理なわけではない。ただ、放っとくとやりませんし、できませんよ、というだけです。

今日のひと言

仕掛けない限り横連携などしない

横連携をさせたいのであれば、こちらから仕掛けをしましょう。それをせずに「何で横連携をしないんだ」と思っていても、放っておいたらするわけないです。この現実を踏まえて、その上でどうするかを一緒に考えて行ければと思います。

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