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【コロナ第2波リスク・10兆円の予備費は必要?】

  令和2年6月12日に参議院で開会された財政金融委員会の審議中継をインターネットで視聴しました。質疑応答から気になった点をピックアップし、私の所見を述べたいと思います。
  補正予算の予備費に関して質疑が行われました。「今回の補正予算の10兆円の予備費について大臣に聞きたい。5兆円の使途は明らかにされているものの、残りの5兆円はまだ不明なところがある。いかなる場合にも対応できるためだろうとは思うが、財政民主主義の観点からすると、しっかりとした議論が事前に必要ではないか。例えば緊急事態宣言のときは、議院運営委員会で報告をして質疑も行っていた。そういう意味では、10兆円の予備費についても予算委員会なり、然るべき場で事前に審議をしっかりするべきだ」という提言がありました。
  これに対して麻生太郎財務大臣の返答は次の通りです。「コロナ危機は10年前のリーマンショックや1997年のアジア通貨危機より大きな出来事だ。どのくらい影響があるか、全く見当がつかない状況である。一旦収束したように見えても、また感染者数が増えてきている地域が日本にもある。今回の補正予算の成立まで、国会会期中に総理が発議案を提出してから1カ月以上経っている。ましてや国会休会中に何か状況が悪化した場合、対応するのにもっと時間がかかる。緊急性のある案件に対してはスピードが重要だという意見も多くあるが、なかなか対応が難しい非常事態のときもある。そういった意味で正直に言えば、何が起こるのかわからないので、よほどのことを考える必要があると思っている。アメリカでは東海岸からコロナウイルス感染症が波及して11万人以上の死亡者がいる。日本でも今度は太平洋から、より死亡率の高いコロナウイルス感染症が波及するリスクがあると専門家は言ってる。こういう大前提に立った上で、いろいろと考えて予備費を積み立てさせていただいた。憲法87条には、予見し難い条件のときには不安に備えて予備費を設けることができる、と記載されており、今回の予備費にはそういった背景がある」と答えました。

  この点について私の意見を述べたいと思います。憲法87条によると「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない」と書いてあります。ここでの「予見し難い」という定義は少し曖昧なので、確かに国会でしっかりと議論が必要だと思います。今回の予備費は、予算の比率で測ると歴史的にとても高い数字です。また、巨額な予備費を補正予算に充てるより、国会会期を年末まで延長すれば、必要なときに第3次補正予算を組むことも可能かもしれません。また延長をせず、6月17日の会期末前に議論を急いで、ずさんな決定をするリスクもあるとは思います。
  しかし、コロナウイルス第2波のリスクは高いと思うので、私はこの10兆円の予備費には賛成です。コロナウイルスの感染状況が国内だけでなく、世界でどういうふうに進行するのかは、変数が多すぎて予測が難しい。加えて、世界的に有名な民間の国際データサイト(www.worldometers.info/coronavirus/)によると、6月19日に世界のコロナウイルス新規感染者数が劇的に増加しました。上記の図を見ると、6月19日で新規感染者は181,005人増えました。中でも大きいのはアメリカの33,539人、ブラジルの55,209人、インドの14,721人の増加です。
   どの国もコロナウイルス対策を行っていますし、隔離政策を継続している地域もあります。しかし、これらの政府は感染波及リスクを明らかに甘く見ているかもしれません。こういう傾向が世界で続けば、日本にも何らかの形で影響があるでしょう。日本で感染者数が増加しないとしても、他国で外出制限などが長引いた場合、世界経済はかなりのダメージを受けます。世界経済の悪化が予測以上に続けば、さまざまな追加助成金や給付金も必要になり、国会休会中にスピードをもって対応するには、この10兆円の予備費が充てられる確率は高いと思います。


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