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業界インタビュー4 RPA(ソフトウェアによる自動化)の仕事

身近で働いている人にインタビューして、どんな仕事をしているのか、どんな課題を抱えているのか、といった話を蓄積していく企画の第4弾。今回はRPA(Robotic Process Automation:ソフトウェアによる自動化)の話でした。いろんな業界のことが分かれば、きっと何か新しい発見があるはず!

どんなお仕事なの?

プログラムを使って、毎日のように繰り返し行っている作業を自動化してあげますよ、というサービス。具体的に何をどう自動化しているのか聞いてみました。

たとえばライバル会社のウェブサイト上でどんな商品が販売されているかを定期的に調査する業務。毎回、商品名を入力して価格とかをメモするのは意外と面倒です。それを毎日自動で巡回・データ収集してくれるプログラムを走らせておけば、それだけ人件費が抑えられます。

他にもアンケートのように、何かしらWebに登録されたものをExcelで集計することは多いと思います。勤怠や日報なども、会社によっては手作業で集計しているかもしれません。そういうのを自動化してExcelに格納させるのは、プログラムの得意分野です。

今回お話を聞いた会社は、紙媒体の情報をスキャンして電子化するのが特に強いとのことでした。たとえば保険会社で、お客様の事故現場の状況を紙で記録したりする。これをスキャンして、書かれた内容をデジタル化する。チェック項目は何を選んだかで分類し、手書きした文字はOCR(文字認識)させたり、画像のまま残したり、お客様の業務フローに合わせてシステムをくみ上げる。

他にも電子上でサインしたり、PDFをExcelに変換したり、とにかくソフトウェアで自動化できそうなことならなんでもやってくれる雰囲気でした。

顧客はどんな業界が多い?

金融関係が一番多いとのことでした。確かに銀行の手続きとか、まだ紙を使うケースは多いですしね。海外でも意外とニーズは多いらしく、たとえばアメリカなら一般人も小切手を使うので、手書きサインの自動認証などよく使われるそうです。

他には、医療関係でカルテの電子化、経理関係で請求書処理の自動化なども多いとか。やはりお金のある業界は積極的に投資していくようです。

値段的には一つの自動化で300万円前後だと思うので、決して安いわけではないですが、人間を一人雇うと1000~2000万円かかるので(給料だけでなく教育や福利厚生なども必要なので、一般的に)、それよりは断然お安いです。業務を効率化して浮いた時間で別の仕事をできれば、十分費用対効果が見込めるようです。

こういう自動化は、日本ではやっぱり遅れていて、海外の方が積極的に投資しているとか。日本だと、自動化するより残業してでも人の手でやった方がいい、みたいな非効率的根性論が根強く残ってますからね。

改善したい課題は何か?

どんどん自動化・効率化を勧める会社ですから、さぞかし社内は快適に自動化されているのだろうと思いますが、そんな会社の課題とは何か?それを端的に表すのが、以下の言葉でした。今回のインタビューのハイライトです。

「権力を自動化できない」

ソフトウェアは既存の決められた手順をこなすのは得意だけど、新しく何かを作ったり、新しい問題を解決するのは無理。そこは結局人が判断する必要がある。そして、意思決定、判断をするためには必ず権力を伴うので、ここに大きなロスが生じる。

いわゆる稟議であり、ハンコの承認であり、根回しであり、意味のない長時間の打ち合わせだ。結局、仕事は人で回っている。自動化が進めば進むほど、人に依存するところの無駄さ加減が目に余るようになるらしい。

社内で権力を持つ経営層に取り入るのが得意な営業さんがいる。ゴマすりが上手で経営層に気に入られているが、仕事はできなくてお客様には迷惑をかけてばかりだし、一緒に働く同僚や部下はどんどん病んでいき、2年間で6人も入れ替わったとか。そんな人がなぜか辞めさせられずに社内でのさばってしまう。これはなんとか自動化できないのだろうか。

他にも、お客様と商談を進めていく中で、担当者同士が意気投合して仲良くなり、とんとん拍子に話が進んでいたのに、突然担当者が辞めてしまい、担当が変わったとたん上手くいかなくなるケースもある。なんで突然担当者が変わったのかと思えば、勝手に商談を進めて上司にしっかり報告していなかったから怒られたのではないかと。こうなると、技術的な中身、商品の良し悪しよりも、心象で判断されてしまう。そんな非効率な人間同士のやりとりが世の中には氾濫している。

結局、テクノロジーが進化しても、人間の悩みの大半は人間関係のいざこざなんだなぁ、と思わされますね。

おまけ:国民性の違いについて

人間関係のいざこざの中身は、もちろん地域によって違う。今回のおまけパートでは、日本、アメリカ、ヨーロッパにおける国民性の違いについて聞いたことを、偏見まみれに紹介していこうと思う。

日本については改めて言わなくても皆さん分かっていると思いますが、タテ社会に縛られて何も意思決定しない集団です。何か新しいことをしようと思っても「みんな」の同意を得る必要があるので、ものすごく動きが遅くて時間がかかります。

法律も複雑だし、何をやるにしても大がかりになる。だから日本でビジネスをするなら、数人のベンチャーがちょちょっとアイデア提案するようなタイプだと全然うまくいかない。お客様のサイズ感に合わせて、こちらも大所帯でしっかりした組織感を出していくことが重要らしい。

アメリカはその真逆。多様な民族国家なので、相手には自分の常識が通じないという前提で、しっかり一から説明することが根付いている。みんなが挑戦と成長を求めているので、小さなベンチャーの話でもしっかり聞いてくれるし、問題をみんなで乗り越えて良くしていこう、という意識が高い。

その分、成長できない人、問題を解決できない人は見捨てられたりして、貧富の格差が激しくなったりという側面もある。完全に実力主義。

じゃあヨーロッパはどうなのか。僕らは「欧米か!」と言ってヨーロッパとアメリカを一緒くたに考えがちですが、全然違うらしい。

ヨーロッパは小さい国の集まりなので、組織としても小さくまとまって団結して、なるべく長く続けていきたい、という終身雇用的な考えが強いらしい。国が違ってもみんな同じユーロということで、横並び思考。革命とか何度も経験してきた歴史があるので人権保護の意識が高く、仕事よりも家族を大事にしてバカンスとかしっかり取る風土。

だからヨーロッパの人たちと仕事したときはすごく居心地がよくて、この人たちとずっと一緒に仕事したい、って思ったそうな。実際に、一緒に働きたいと思う人が多いからどんどん仕事がくる、という感じに人間力で回っているようです。これは日米とは違う傾向ですね。知りませんでした。

そんな感じで、国が違えば働き方は違うけど、結局自動化は手段の一つであって、仕事の本質は人間なんだなぁという悲しい現実を再確認するのでした。

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