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経験と教育:第二回読書会

8/11(木)に行われた読書会のレポートです。今回の本はジョン・デューイ「経験と教育」の第二章、第三章です。私の感想は以下を参照ください。

連続する経験からの学び

本のなかでは「連続性」「相互作用」の2つが大事だと言われていましたが、実際に自分のなかで連続的に学んだ経験の例はありますか、という問いから始まりました。

たとえば私は、会社のなかで新規事業の創出を目指した活動をしています。いろんなイベントに参加する中で、「ミラツク」が主催した人生100年時代を考える、というのがすごく面白くて印象に残りました。その「ミラツク」がROOMというコミュニティを始めるというので興味を持って参加してみたら、その中で「正統的周辺参加」という本を一緒に読もうという呼びかけがあったので、これも面白そうだなと思って手をあげました。その結果、こうして毎月読書会を行ってnoteを書いているわけです。

私が読書会に参加したのは、まさにこうした経験の連続性がもたらしたものです。この経験は、私がやりたいと思った内的条件と、それを受け入れてくれた周りの方々の客観的条件が両方そろったからこそ実現したわけで、こうした相互作用も、学習に大きく作用していることが分かります。

連続しない学びはない

本のなかでもう一つ印象的だったフレーズが、「将来役に立つから、将来に備えて勉強しよう、というのは効果がない」というものでした。私は子どもから「なんでこんなに勉強しなきゃいけないの」と聞かれたとき、「将来役に立つんだよ」みたいなことを言ってしまいがちですが、これは勉強の本質ではないようです。

学習は、いま経験したことから連鎖していくので、今と切り離して将来のために勉強するというのは、結局自分の人生と切り離された「学校での教育」という特別なものになってしまい、それは「学校」のなかでしか役立てられない孤立した知識になってしまうそうです。将来、本当にその知識が必要なシーンが出てきても、学校での経験を自分の人生に応用できなくなってしまうのです。

この指摘は非常にショッキングでした。そこでさらなる問いとして、私が幼いころはどういう観点で勉強に取り組んでいたのか、について考えることになりました。

振り返ってみると、確かに私は将来のことなんて微塵も考えていませんでした。次に行われるテストでいい点数が取れるか、というゲームのような感覚で勉強していたと思います。まさに今の経験から学び、次に活かしていくという連続的な学習をしていたと思います。

相互作用の最大化

学習における「連続性」の意義についてはだいぶ実感がつかめてきました。では「相互作用」はどうすれば高まるでしょう。三人寄れば文殊の知恵、という言葉にもあるように、一人ひとりが考えているだけでは思い浮かばなかったことが、みんなで話し合うことで思いもよらない発見にたどりつくことがあると思います。これを「知識創造メタファ」と言うそうですが、こうした相互作用による学習はどうしたら促進させられるでしょうか。

これに対して、私は最近学んだことから「運をよくする」「徳を積む」といった行為が重要ではないかと思いました。情けは人の為ならず、という言葉にもあるように、誰かに優しくすることで、結果的に自分が思いもよらない恩恵を受けることができる、というのは相互作用による学習につながるのではないでしょうか。

この私の考えにつながる学問として「ポジティブ心理学」というものがあるそうです。従来の心理学が、退役軍人の社会復帰を目指した、マイナスをゼロに戻すものだったのに対して、ポジティブ心理学はプラスの状態をさらに高めることを目指したものだそうです。たとえばウェルビーイング、フロー状態、ストレングスファインダーなどが、ポジティブ心理学とつながっている概念だそうです。

その中で大事なのは、なんとなく毎日を過ごすのではなく、より大きな目的に貢献しようとする目的意識みたいなものだそうです。大きな目的のために、おたがいの強みを活かして補完しあいながら、自分の意志で人生を切り拓いていくことが、相互作用を最大化する知識創造メタファの利点の一つになります。

意志の弱い若者

最近の若者は横並び志向で自分の意志がない、という話をよく聞きます。以下のような本で最近の若者の傾向が語られているのですが、これはどうしたらよいでしょうか。

意志というのは自分のなかにあって周囲に宣言するようなタイプのものではありません。だから若者に意志がないわけではありません。意志は自分と周辺環境との相互作用のなかで育って、あらわれてくるものです。

もしあなたが若者に対して「君は意志がないね」と働きかけると、若者もそれを感じて意志を育てたり、育てるのをやめたりします。そうした相互作用と連続性のなかで学習されていくものです。だから、自分には意志がない、どうしたらいいんだろうと問いかけても仕方なくて、いまないものを探すのではなく、今から育てていくのです。

会社で仕事をしている人も自分の意志で何かをしているのかというと、周りから言われた作業をしているだけの人も多いでしょう。私たちも、仕事をしながら自分の意志で未来を切り拓いている人は少ないです。それを嘆くのではなく、今から育てていくんです。

どうやって育てるかというと、一つは新しい環境に飛び込むこと。それが正統的周辺参加による学習です。これは参加メタファというそうです。

もう一つは、問いを立てること。いかに問うか、そして自分が主体的に問題にかかわっていけるか(epistemic agency)。これを認識論的主体性というそうです。

そして相手からも良い答えを引き出せるようになること。その相互作用の中から生まれる知識こそが、知識創造メタファにおけるナレッジビルディングなのだそうです。

きちんと問えてますか?

たとえば部下に「今日は何したらいいと思う?」みたいな聞き方をしても、たいした答えは得られません。部下は「きっと上司はこういう答えを期待しているんだろうな」といった忖度のもとに答えを探ります。そこには相互作用などなく、何も知識が創造されていません。

いかに問うか、これは非常に難しいポイントですが、日ごろから気を付けて問いの力を高めていくことが大事なんだな、と思いました。

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