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【のーがたのーと】創業100年。先代からの想いを引継ぎ、商店街で営業を続けるまちのお肉屋さん/「キッチンまるおか」店主・飯田一幸さん

レトロなカワイイ看板が目を引くまちのお肉屋さん

JR直方駅からアーケードを歩き殿町商店街を訪れると、レトロなカワイイ看板が目に入ります。ショーケースにはたくさんの種類のお肉が並ぶ「キッチンまるおか」さん。

「かわいいでしょ。この看板。全然堅苦しくないですよね。」

そう語るのは「キッチンまるおか」を営む飯田一幸さん。このイラストはお店の車や名刺にも印刷されたお店のトレードマークになっています。

カワイイ看板と店先のマリオの人形が特徴的な「キッチンまるおか」

そんな、昔ながらの商店街の雰囲気を感じる「キッチンまるおか」ですが、創業はなんと100年以上前。この場所にお店を構えたのもおよそ30年前という、長く地域に愛されてきた歴史ある店舗です。

長い間、直方の商店街の移り変わりを見てきた飯田さん。商店街のことも語ってくれました。

「このアーケードは、よその商店街に比べたら(距離が)長いアーケードなんよ。大々的なパレードもしたし。いまではお店も少なくなったけど、それこそお客さんが通れんくらい、ワーワーしとったけえね。」

「ここから次の商店街までのなかで、衣食住全部あったんですよ。床屋さんがありの、肉屋さんなり、八百屋さんなり。で、そこが化粧品屋さんでしょ。家具屋さんでしょ。初めて見たとき、この通りすごいって思ったんですよ。この通りだけで生活できるけん、なんも不自由なかった。」

直方はかつて交通の要衝であり、筑豊地域の拠点として商工業が発展したまち。商店街にも多くのお客さんが買い物のために来られていたとのこと。キッチンまるおかはいまでも、当時から懇意にしてくれているお客さんを中心に、地域の方々から根強い支持を得ています。


「キッチンまるおか」を先代から引き継いだ飯田さん 

「キッチンまるおか」を現在営んでいるのは「飯田さん」。てっきり丸岡さんが店主だと思っていた取材班は、そのことについて尋ねました。

「キッチンまるおか」について楽しそうに話す、店主の飯田さん

「先代の名前が丸岡さんっていうんですよ。周りのお客さんも『なんで屋号変えんとー?』って言われたけど、先代の人との約束やけん変えんとこうかなって。やっぱ五日市でも昔からある名前やけん、昔からのお客さんは親しみやすいよね。」

飯田さんは、もともと学生時代のアルバイトとしてキッチンまるおかに勤め始めました。

「先代のこと親父って言ってたんやけど、親父に可愛がってもらってたし、会社の中での社長と部下みたいな関係じゃなくて、温かい関係、息子みたいなもんやったけん。金がないから給料前借りさせてくださいって言ったり、二十歳の頃は成人式のスーツ作ってもらったりとか、いろんなことで可愛がってもらってた。」

先代店主と二人三脚に近い状態でお店を切り盛りしていた飯田さん。仕入れから販売まで全てを分かっていたので、先代からお店を任されるときも自信をもって引き継いだと話します。

「引き継ぐときも、『親父の目の黒いうちはあんたの名前使う』って言うと、親父も喜んでたね。」

当時を懐かしみながら話す言葉の節々に、お店への思い・地域の方々への思いがありました。先代とのつながり・地域のお客さんとのつながりを大切に、営業を続けています。


商店街のお肉屋ならではの様々な工夫

「スーパーにない魅力やないけど、と対面販売だからお客さんといろんな話ができるよね。私は初めて見る顔だ『どこからいらしたんですか~』とか聞いたりしますね。『今日は何にしましょう』、『ミンチあるのでハンバーグどうでしょう』とか『とんかつどうですか』ってそういう感じで夕食の献立を話したりすることもあったり。」

対面販売の魅力を語る飯田さん。お客さんとのコミュニケーションを特に大事にされています。必要な分だけ購入できる量り売りの仕組みも、年配のお客さんにとってはありがたいポイント。電話一本で配達も行っています。

そんなキッチンまるおかですが、直方の商店街の店舗も次第に少なくなり、大型スーパーも増え、時代の変化の影響を大きく受けていました。また、お肉屋さんならではの悩みもありました。

「一番大きかったんが、もう何年前かな。ヨーロッパであった狂牛病(BSE)。ニュースで流れた関係でお肉が売れなくなってしまって。その当時はもう、お肉が陳列されてること自体をお客さんが不思議がってた。」

そんな時に始めたのがBBQの出張サービスでした。BBQの食材と機材を用意し、お客さんが指定した地点まで宅配。設営から後片付けまでを行う、至れり尽くせりのサービスです。

ショーケースに並ぶたくさんのお肉

これまでのようにお店でお客さんを待っているだけではなく、外に出てサービスを提供しようという考えから始まりました。飯田さんはこの取り組みが自分の原点だと話します。

「その当時はもう右も左もわからんかったんですけど。そこから機材も増えて、いまでは100人くらい対応できるような感じで。」

BBQの取り組みは地域の人の口コミで広まっていき、リピーターも多いのだそう。

「自宅でBBQされる方や、部活動の集まり、会社の歓送迎会、お花見、お盆などのイベントでよくリピートしてくれてる。毎年その時期に電話来てなかったら『今年せんと〜!?』みたいな感じで聞くと、『ああ忘れとった〜』みたいな感じで。」

そんな「攻める」姿勢の取組みはほかにもあり、毎月5日に商店街で開催される「直方五日市」では焼き肉串を店舗の前で販売しています。

「五日市ではね、お店の前で1本110円で串を売ってて。たくさんお客さんが来てくれて、ここに結構行列ができるんですよ。でもあれ、作るのに手間はかかるし利益は上がらんけど(笑)。」

五日市を盛り上げたい、お客さんに満足していただきたいという思いから、毎月腕を振るっています。


商店街の未来のため、シャッター通りとなったまちを“明るく”する

商店街で50年以上続いてきた催事「直方五日市」は、運営に関わる後継者不足もあり、存続の危機に瀕していました。そんな中、地元の商店主らが立ち上がり、運営組織が引継がれて継続されることになりました。

飯田さんも長年商店街で店を構えてきた経験を活かし、運営メンバーを支えています。そのひとつがシャッター通りとなってしまった商店街を明るくするプロジェクト。運営委員会の塩川氏の提案により、いつも閉まっているシャッターにカラフルな塗装をするイベントが開催されました。

カラフルに彩られた殿町商店街のシャッター

「塗ったらみんなから『明るなったねー』、『歩きやすくなったねー』って言う人多いっちゃんね。今度はこれに絵を描こうという話で盛り上がったり。」

飯田さん自身も周りの所有者に塗装のお願いをしてサポートしつつ、これからの五日市にも期待を寄せます。

「新しい五日市委員会がこの商店街を盛り上げようって動いているから、その補佐くらいならやるよーって。私も50年くらいここに居座ってるからある程度のことはわかるし、五日市も新たなスタートラインに立ったばかりだから、私も一生懸命していかないかんなと思って!」

お店の前で、笑顔で話す飯田さん

まちのお肉屋さんとして地域の方々とのつながりを大切にしてきたからこそ、そのつながりを今度は商店街のために、若い人たちのために活かしていきたいと話します。

長年ショーケース越しに商店街の移り変わりを見てきた飯田さん。新たな商店街の取組を一緒に楽しみつつ、今日もお客さんの夕ご飯を考えながらお肉を販売しています。 


店舗情報

「キッチンまるおか」
営業  :10:00~18:00 
     定休日なし
住所  :〒822-0027
     直方市殿町16-20 直方駅から徒歩7分
電話番号:094-924-3129


文・編集:山崎
取材  :日隈、山崎、椛島 
撮影  :椛島


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