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左耳の孤独

少し前から例の回転音は
ふとした瞬間からよくある光景に変わった。
一定間隔の回転音は強弱をランダムに増幅させ
今日も昨日もその前も廻っていた。

それが当たり前になるとそれに慣れ、
もう一つの音に気がついた。
回転音に見え隠れしていたもうひとつ内側の
少し音域が高く、
まるで砂嵐を音像化したみたいな砂粒の音。

絶えずザラザラとした感触で
時折、現実の音さえ掻き消してしまうくらいに騒がしい。

これらの音を誰に聞かせようとも届かない、
君の右耳に伝達する事も不可能で、
極めて孤独な左耳。

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