【企画投稿】旅と美術館 Reisen und Museen
年明けから、ちいさな美術館の学芸員さんの
メンバーシップ「オトナの美術研究会」に
参加しております。
1メンバーとして、ささやかながら
投稿やコミュニティを見る専で楽しんで
きたのですが、月イチ開催の
投稿企画をみて(今月は投稿してみようかな?)と
思いたちました。
今回は、その月開催企画
「旅と美術館」 に向けた投稿です。
上手く書けるか分からんけどいずれは備忘録として残しておきたかった日のこと。そんな素敵な美術館と出会った日のことを書いて置いておこう。
それではいってみよう〜
🕊
17th März 2022
ドイツ、ハイデルベルク
パーク・アム・ビスマルクプラッツにて。
冬の終わりが見えていようと、
相変わらず曇天の続く空の下で、
途方に暮れていた。
今日の午後の講義は休みだったらしい。
6週間の語学プログラムでは午前に英語、そのあとにドイツ語のイントロダクションコースを取っていた。しかし、午後の授業は履修者が過疎すぎる。自分とあと一人か二人、週ごとに入れ替わりで入るか入らないかくらいであった。
この人数で開講するのは、あまり気乗りしないのかなんなのか、こんなふうに突然「今日は無くなっちゃったよ〜」とお知らせされることがままあった。
お払い箱dayは、今週2回目である。
ちゃんとガッツリ週5でやってくれよという気持ちとうらはらに、毎回少し嬉しい自分もいる。
今日は、何処へ行こう。
ハイデルベルク城は、快晴の日に1度訪れた。
中央通りは何処のお店も素敵過ぎるあまり、これまで何往復したか知れない。
ステイ先までの帰り道も、新規ルートの開拓に勤しんだ結果4パターンくらい見つけてしまったので、これ以上広げられるとはさすがに思わない。
それとなく中央広場に目をやる。
帰りに乗るトラムが、反対方向からやってくる。
RNVの5番、行先は「MannheimHbf」。
マンハイムはこのハイデルベルクの隣町、
なのは知っていたが、実際どんなところだろう。
今行かなかったら多分わざわざ赴くほどの大きな観光都市ではないような気もしている・・・(やや失礼)。
そう気づいてからは、話が早いところが自分だ。
アプリを開きツータップでチケットを購入、広々とした乗車ドアにひらりと飛び乗る。
アナウンスはなく、静かにドアが閉まった。
★
美術館に着いたのは、中央駅に到着して少しあとだっただろうか。
マンハイム城のなかに併設されている美術館のようだった。
のちに調べてみると、城内の一部を見学することが出来る、と記載されているエリアを訪れていたようだ。果たしてこれは美術館カウントなのだろうか・・・とやや疑問だ。とはいえそのときの私はすっかり、とっておきの美術館をみつけたぞとほくほくしていたので、あまり詮索しないのも乙ということにしておこう。
このお城は、「新」ハイデルベルク城みたいなポジションである。
ハイデルベルク城の建設は12世紀。しかし17世紀における2度の戦争でぼろぼろに破壊されてしまう。当時の城主であるカール3世選帝侯(大名みたいな人)の、お城を別のところに移して首都再建を目指そう!という一声で18世紀に生まれたのが、このマンハイム城。
要するに、2つのお城に行けば中世の古き良きお城(半壊だが)と
バロック時代の豪華絢爛なお城をおトクに楽しめるという訳だ。
といいつつも、そんな歴史を
知り尽くして意気揚々と赴いたわけではない。
目の前にトラムが走っていたから乗り込んで、気付いたらここにたどり着いていたに過ぎない娘が、そんなことを知るよしもないのである。
そんな娘にも分かるくらい、
この美術館は息を呑む美しさだった。
飾られている絵画はもちろん、
天井画や壁画、白亜の柱に刻まれた彫刻、
雲間から僅かに覗く陽光が差し込む大きな窓、
シャンデリアに照らされて輝く銀食器が
お行儀良く並べられた食卓、
階段をのぼった瞬間から、
漂う空気感がまるで変わったように感じたのだ。
どこを振り向いても、360度すっぽりと「美」に
包まれたような感覚。その中に、違う国の、違う時代に生まれた自分が今、立っているという感覚。
まさか、ひょんな思いつきで立ち寄った美術館に
ここまで打ちのめされるとは。
ふらりと赴いただけで、
ここまで全身が震えるほどの「美」を感じられる、
芸術との距離感が近い街があるとは。
そんな空間が、街が、美術館があるのだと
気づいたこと。
今生きている自分と、そこに生きた人が、
同じものを、空間を、美しいと感じ
同じように心が震えてたんだと感動する心地良さ。
それが、この日の1番の衝撃だった。
私の42日間の留学のなかで、
自分探しの旅のなかで、
この美術館は今でも鮮明に心に残っている。
🕊
ちなみにこのあと食べた、
特大ケバブも、美味しかったです。
ここまで読んでくださったみなさま、
ありがとうございます。
南ドイツ、やっぱりもう一度行きたいなぁ。
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