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白昼鈍行の車窓から【3日目篇】(8月エッセイ③)

1.マリンライナーで高松へ

 朝起きてホテルに出る。朝ごはんの時間には間に合わなかったが、まあ、仕方ない。前日結構食べたし、お金を使いすぎるのも良くないので大人しく朝ごはんを食べないことにする。高松で高校の同期に会ってうどん食べにいくし。前日に部屋に帰ってきてから荷物は全て詰めて寝たので準備万端。Airpods Proを部屋に忘れて取りに帰る以外は完璧なスタートだ。イオンの地下街にお別れして岡山駅に向かう。大阪から来たときは地下改札を使ったので中央改札を使うのはこの度では初めてだ。今までの帰省では見なかった店や新しい観光案内所ができている。入ってみたかったが、まだ空いていなかったし、高松に行かないといけないので失礼する。

 岡山駅の改札の良いところは改札前の電光掲示板に全部の電車の発車時間が書いてあるところだ。品川駅や東京駅はそこまでしてくれない。まあ、岡山駅は本数が少ないからかもしれないが。マリンライナーに乗る。岡山駅から高松駅まで1時間足らずでいくことができる快速電車だ。この電車の売りは早く行けることではなく、レインボーブリッジの中から島々を眺めて過ごすことができること。マリンライナーを見るといろんな思い出が蘇る。昔、高松に住んでいたことがあって、帰省の時におばあちゃんと一緒に乗った。高松駅の改札までおばあちゃんが迎えに来てくれて手を繋いで帰った。アンパンマン仕様の電車にも乗ったことがある。アンパンマンのおもちゃが置いてあったり、アンパンマンの柄の遊具が置いてあったりした。今も興奮するが、昔だってそうだった。岡山駅に早く着いてほしくなかった。乗るたびに毎回誰よりも楽しんでいた記憶がある。

 高松駅に着いた。昔とあまり変わっていないこぢんまりとした駅だ。岡山駅みたいに「エキチカ」が充実していないし、そもそも地下がない。この駅にも思い出がある。高松に引っ越してくるときに、おばあちゃんも付き添いでついてきた。引越しの手伝いというより私や弟の遊び相手として。おばあちゃんは私らのことが大好きであったので、可愛がってくれたが、いよいよおばあちゃんが帰るという際に改札で号泣されたことは記憶に残っている。それも周りが引くくらいに泣いていた記憶がある。ここまで激しく泣いていたのは先にも後にもこの時だけだった。高松から帰るときは嬉々として迎えにきたのは言うまでもない。もう一つは、父親(通称パパ)との思い出だ。うちは昭和に囚われない令和的視点を大事にする先進的な家庭なので、父のことは”パパ”、母のことは”ママ”と呼んでいる。生まれた時から変わっていない。今はどうか知らないが、昔は琴平電鉄(琴電)に子供は無料で乗れた。そこで、家の最寄駅から高松駅まで休みの日はお出かけしていた。元々電車(特に踏切)が好きで、踏切が近いという理由で幼稚園も選んだくらい好きだった。そのため、パパがよく連れて行ってくれて、高松駅のミスドでストロベリーリングを買って帰るのが週末の楽しみになっていた。その影響もあって、ドーナツはいまだにストロベリーリングしか食べない。まだお店が残っていたらぜひ買いたいと思って観光案内所で場所を聞いたら「もう結構前になくなりましたよ」と言われてしまい、買うのを断念した。懐かしかったのになあ。しょうがないので高校の同期と会う時間までお決まりのスタバで時間を潰した。

2.うどん店に

 高校の同期と会った。まあ、中学から同じなので8年間の付き合いになる。長いね。その間で1回しか同じクラスにならなかったし、彼は私と違って理系に行ったが、なんだかんだ交流は続いている。彼と商店街を歩く。商店街は平日の昼であってもそこそこ混んでいて、岡山と比べて商店街はこっちの方が栄えてる気がする。シャッターの数が少ない。まあ、岡山はイオンモールが強いからなあ。なんでも、何軒かおすすめのうどん屋があるそう。「おすすめが何軒かあるからその中で選ぼうよ」ってデートかよ。「綿谷」というお店に連れて行ってもらった。入っていくと丸亀製麺スタイルで自分で注文して天ぷらを取って会計をする仕組み。肉うどんがおすすめと事前に聞いていた。確かに美味しそう。豚か牛か選ぶみたいな国際線みたいなことをしないといけなかったが、迷ったらどっちも取るの精神でミックスを注文した。まあまあな量がある。メニューの下の方に「ハーフサイズ」と書いていてしまったと思った。こんなことならそれを頼めばよかった。お会計になる。同期が払おうとしている。「いや、出すよ。気使うなよ。」そう言って出す出さなくていいの一悶着があったが出してくれた。ちょ待てよ、俺を落とそうとしてるの?味はめちゃくちゃ美味しかった。豚肉は食べ応えがあって、牛肉は柔らかい口触り。半熟卵もいい感じに麺と絡むし、海老天も大きくてジューシー。値段は全部で600円ちょっと。安いね。丸亀製麺だと800円行くと思う。普段うどんは丸亀製麺でしか食べないのでそれしか比較対象がない。

うどん屋さん

 その後は二人で本屋に行った。二人とも読書家なので本屋は快適だ。涼しいし。進学校に行ってしまったが故の弊害であるが、懐かしの参考書や過去問を見つけると手にとって見てしまう。それだけ真剣にやったんだろ?と言われるとおっしゃる通りなのだが、いつまでも"過去の栄光"に縋っているようでなんだか気恥ずかしい。挙句の果てには「問題です。〜」と言った感じでお互いに問題を出し合って盛り上がってしまう。受験からもう2年が経とうとしているのに、いまだに正解させてしまうところもまあまあ怖い。どんだけ頭に残ってるんだよ。近くにいた高校生よりも良い歳した大学生参考書を熱心に見ているのは流石に怖い。ちなみに、私のおすすめは「基礎問題精巧」だ。良問が揃っていて、一回あたりの分量もちょうどいい。最後に、電車の時間までカフェで過ごした。コヒーゼリーを頼んだ。プルンプルンで美味しかった。男二人でカフェの看板メニューを堪能するのはなんとも耐え難いものがあるが、お互い独身なのでしょうがない。なぜモテないのかについて議論した。バイト先の同じ大学の女性と話すことがないと言う彼に「じゃあ、学食のメニューで何が好きか聞けばいいじゃん」「ああ、いや、そういう話題じゃなんだよ。」多分、学食の話をしようとするところが俺のモテないところなんだろうな。最後に駅まで送ってくれた。改札でバイバイかと思ったが入場券を買って中まで見送ってくれた。だから彼女なの?ちなみに、改札で一緒にバンクーバーに行った友達が勤務していてびっくりした。こっちは一瞬分からなかったが、向こうはすぐに気づいてくれた。申し訳なくなったが、相変わらず背が高かった。

3.高松から広島へ

 再びマリンライナーに乗って岡山へ。結構歩いたので疲れて寝てしまった。目が覚めたら岡山駅。山陽本線に乗り換えて広島を目指す。岡山のいいところは電車の数が少ないところだ。広島に行くのに1回糸崎駅で乗り換えるだけで済む。ただ、乗り換えが少ないからと言って楽かと言われればそうではない。その分、同じ電車にずっと乗っていないといけないので、リフレッシュができない。特急とかもないので、ひたすら乗らないといけない。Amazon Prime Studentで動画が見れるので、そのお手本のような使い方をしてなんとか糸崎についた。途中、沿岸を走るルートがあったのでその景色を載せておく。やっぱり田舎の景色はすごい綺麗だ。まず家がガヤガヤ密集していない。これだけでもかなりの高評価。車もそんなに通っていないので、海岸線が綺麗に見える。

4.宮島からホテル

 午後7時過ぎに宮島に着いた。18切符はJRのフェリーなら乗れる。平日の夜は空いているので一番前の窓の景色が開けている椅子に座って鳥居を見ようとしたが、どうやら改装中とのこと。残念だったが、上陸してから美味いものでも食べようと意気揚々と島に足をつけた。前に来た時より妙にしんとしている。店もやってない感じ。あれ、もしや閉店している?唯一空いていたスタバに入って、ミネラルウォーターを買うついでにこの辺の店について聞いてみた。「ああ、17:00くらいにはみんな閉まるんですよ」ええ、まじか、知らなかった。しょうがないので再び船乗り場まで戻る。明日また来て昼食ってから福岡行くかあ。そんなことを思いながら夕焼けの綺麗な一番前の席でため息をつく。

 まだホテルを取っていなかったので、いい感じのホテルを取ってそこに泊まることにした。一泊4,000円ほど。まあ、出せる金額だ。晩御飯はずっと電車に乗っていて運動していない分、そんなにお腹も空いていなかったので軽く寿司屋でカキフライと茶碗蒸しとネギトロ巻きだけ頼んだ。それでもまあまあ量があった。これで980円だった。わりかし安い。ホテルに行ってテレビをつける。家にテレビがないので、こういうところでないと見る機会が無い。バナナマンの日村さんが自らロケバスを運転してそれに人を載せて話を聞く番組で、なかなか面白い。チャンネル名を見ると"NHK”。へえ、NHKも結構面白いロケ番組やってるんだ。ニュースと朝ドラのイメージしかなかったけど。非日常も旅行の醍醐味の一つだ。風景だって、食べ物だってそうだが、案外テレビもいろんな発見がある。

 この旅行ももう折り返し地点に突入した。あとは九州に行くだけだ。


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