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白昼鈍行の車窓から【1日目篇】(8月エッセイ①)

1.出発当日の深夜

 バイトから帰宅して、なんとなく寝る気がしなかった。時計を見るともう1:00を回っている。寝てしまうと行きの長い鈍行の中で寝れなくなってしまうかもしれない。寝れない鈍行は地獄だ。地域によっては延々と同じ雰囲気の景色を眺めないといけないし。始発は4:56。これに乗るとゆとりを持って大阪に着けるし、途中に寄る名古屋で高校の同期とひつまぶしを食べれるかもしれない。そんなことを思いながら、寝ない代わりに、5日間家を空けるのでゴミの整理だったり、風呂掃除だったりをこなした、再び時計を見ると3:00に差し掛かろうとしていた。武蔵小杉まで歩かないといけないし、切符もまだ買えていなかったので、家を出るのは4時くらい。そうなるとあと1時間くらいならゆとりがある。荷物の最終確認もしたいから、30分だけ横になろうと思ってベッドに入った。目覚ましを03:30〜03:40まで毎分セットして寝た。消音を切るのを忘れたことは気付かずに。

 再び目を開けるとカーテンから木漏れ日が漏れていた。溜め息をついてスマホを見ると8:02の白文字。やってしまった。初日にも関わらず大寝坊をかましてしまった。慌てて着替えて家を出る。最寄りから武蔵小杉までがこの時間だと開通しているのでそれに乗る。こんなはずじゃなかった。出鼻をくじかれてしまった。仕方がないので切り替えてみどりの窓口に向かう。切符を買って、武蔵小杉駅のスタンプを押してもらってちょっと特別な気持ちで改札の横を通る。何はともあれ旅は始まってしまったのだ。

 僕は5日間だけ東京から自由になる。

2.旅の始まり

 記念すべき最初の電車は武蔵小杉駅から川崎駅までの南武線。大体6駅くらいを鈍行で向かう。前日に考えた大阪までのルート計画は見事なまでに頓挫したので改めて計画を練り直す。このまま行くと名古屋に着くのは17時くらい。大阪まで間に合わないかもしれない。まあ、いいだろう。京都とか奈良とか大阪近辺まで行けたら問題ない。2日目にちょっと早く出たらいい。

3.旅の終わり

 川崎駅から次は東海道線に乗ってどんどん東海エリアに入っていく。首都圏特有の壁に平行な長椅子。あれはなかなか寝にくい。もちろん、目が覚めてしまっているので寝れない。首都圏だからか知らないが、換気のために窓を半分くらい開けているのでまあまあ暑い。エアコンが無益だ。汗をかきながら小田原駅で乗り換えようとすると、そこでハプニングが起こった。小田原から浜松までが大雨の影響で電車が運休していた。もうすぐ再開すると言われたが、本当かどうかは分からない。ここで時間をかけるわけにはいかないし、主要な観光地を巡ろうにも駅から少し距離がある。どうしようか考えていると、みどりの窓口に「小田原→浜松」の文字と大体6,000円くらいの新幹線自由席料金が乗っていた。これにはちょっと足を止めた。鈍行で行くのが目的だが、4時間の寝坊といつ復旧するか分からない東海道本線が魅力的な選択肢を出してくる。財布を覗くとそこには何かあった時のために常時入れている学割証が。2枚あるから1枚くらい使ってもさ、5,000円かからないじゃん。算数を覚えたダノが惰性にノックする。慣性の法則というものがあって、一度押されるともう止まらない。気がついたら新幹線改札を通っていた。鈍行旅が開始2時間も経たずに終了した。

“新幹線は快適”————こんな文章を書くつもりはサラサラなかった。お尻が割れそうになった話で笑いを取りに行きたかった。新幹線の良いところを紹介したい。まずは速いところだ。時速がどのくらいかは存じ上げないがとにかく速い。あっという間に目的地に連れて行ってくれる。もう一つは充電ができるところだ。この度は調べながら進むのでどうしても充電を沢山使ってしまう。その問題を解消できるからめちゃくちゃ良い。

快適な新幹線

4.浜松と名古屋

 浜松に到着した。新幹線で少しだけ遅れを巻き返すことに成功したので、ここでお昼ご飯を食べる。浜松といえば「浜松餃子」だろうということで、お店を探す。安さ1番お値打ち1番のディオで育った民族なので、安いところを探す。観光案内所で安くて美味しい餃子屋さんを紹介してもらい、そこに行く。その店はデパートの中に入っているにも関わらず、餃子のセットが1,000円せずして食べることができる。肉汁が溢れ出ていて、特徴の野菜が沢山入っていてすごく美味しかった。ご飯にあまり時間を取られるわけには行かないので、横の店だった「さわやか」をチラ見して駅に向かう。次は東海道本線新快速で名古屋まで向かう。競争に勝って2人がけの席を取った。東京の席合戦で鍛え上げられているので、ここは負けへんで。ちゃんと乗れた安心と座っているだけで名古屋まで連れて行ってくれる安堵で爆睡してしまった。気が付いたら名古屋の2つ前の駅。危なかった。

餃子定食

 名古屋駅で降りて、呼んでおいた名大の友達とスタバに行く。キラキラしたスタバが苦手という彼にモモmoreフラペチーノ®︎ をご馳走する。「どこのお店なんですか?」「フジテレビの前のお店です」「ええ〜、芸能人とか来るんですか?」みたいなお決まりのくだりの再公演をして店を出る。「ちゃんと女の子と会話できてるじゃん」そう言われて冷や汗が出る。俺だって苦手だよ。名古屋では中京テレビの本社に行ってみたかったので行くことにした。駅から歩いて10分ほどで着いた。あいにく中には入れなかったが、外観だけ眺めることができた。ここにオードリーが来てるのか。会ってみたい。ここの番組に出演希望を何回か出したことがあるが通っていない。やばいやつ認定されたのだろうか。一緒にひつまぶしを食べる願いは寝坊のせいで叶わなかったので、彼とは駅でお別れ。また来たいね。

中京テレビ本社ビル
ななちゃんと呼ばれるなにか
名古屋のランドマーク?
高校の同期と

 名古屋から再び東海道本線新快速に乗って岐阜に行く。スタバのアプリの店舗スタンプを集めていて、その中に都道府県スタンプがあるので、それをもらうために岐阜駅のスタバで100円ちょっとのミネラルウォーターを勝って再び電車に戻る。なんだよ、コーヒー買わずに水買ったのかよ。しかし侮ってはいけない。この水は何かと重宝する。500ccは持ち運びやすいし、電車移動で涼しいとはいえ喉は乾く。田舎はスタバの数が少ないので、スタバがある駅で降りて買うことで定期的な水分補給にも繋がるのだ。

5.鈍行のウチ

 さっき寝てしまったのでここからは2時間ほど起きていた。東京ではなかなか見れない緑の景色が広がっている。コンクリートじゃない。街が灰色じゃない。それだけでも充分心が躍る。部活帰りらしい高校生。買い物帰りらしいおばあちゃん。入場券を握りしめて電車を眺めに来ているだけの幼稚園児。全てが愛おしい。緑を背景に、各々の生き様が映し出されている。電車のサイズ感も良い。東京は15両編成が一般的で、ホームからホームまで電車が大人しく並んでいることが多い。しかし、田舎は違う。2両で、しかもワンマン運転(運転手しかいない)ことが多い。電車を降りて、”あれ、来てない”と思って横を見るとホームの端っこにちょこんと待っていることが多々ある。ここの席合戦は流石に勝てない。地元の方々は何両目の何番扉が一番席が取りやすいポジションかを知っている。それには勝てない。ここでも競争かあ、、逃げてきたはずなんだけどな。

6.大阪

 うとうとしてると大阪に着いたらしい。折り返し運転になるから急いで降りた。改札の横を通過して駅に降りた。時間は19時を回っている。晩御飯の時間だ。昼を食べてからそこそこ時間が経っているのでお腹が空いている。バイト先の先輩が大阪にいるのでおすすめのお店を事前に聞いておいた。さしすという寿司酒場。寿司酒場自体行ったことがなかったので、そこに行くことにした。有名店だから数人並んでいたが、割とすぐに呼ばれた。席についてコーラを頼んでちびちび飲む。寿司はとりあえずおすすめらしいのを一通り頼んで、美味しかったらリピートすることにした。最初に言っておくと、このやり方はお勧めしない。こういう類の酒場はお寿司がイメージよりも大きいからすぐにお腹いっぱいになる。SNSで見たトロ巻を2回ほど注文して、その他の美味しそうなやつも全部頼んで、驚異の7,000円超の会計を叩き出してホテルに行く。

チーズ入り茶碗蒸し
海鮮ポテサラ
マグロのレバー風
ゲソ
マグロとサーモン3種盛
マグロおかわり
トロ巻き
鰤の刺身

 お通しのガリがお代わり無料だったから、何回もお代わりしてお腹ふくらましたはずなんだけどなあ…そんなくだらないことを思いながら、電車の中で安いホテルを探して見つけたLiveMaxに泊まることにした。岡山にもあるし東京にもあるが泊まったことはない。どんなホテルなのか単純に気になったし、3,000円しない感じで需要と供給が一致したので泊まることにした。ホテルに行ってみると結構綺麗だ。もちろんユニットバスだが、贅沢は言えない。シャワーを浴びてトイレできるだけで充分だ。荷物を置いて大阪のスタバに行ってみる。可愛い綺麗なPTRさんがいて旅の疲れが癒やされる。普段は一番安いアイスコーヒーしか頼まない主義だが、今回は流行を分かっている感じを出した買ったのでマンゴーパッションティーフラペチーノを頼んだ。現職者だからどのメニューがどの程度人気かくらいなら知っているのだ。「これ美味しいですよね!」そんな会話を「あ、はい、そうですよね」みたいなぎこちない会話でプラスマイナスをマイナスにしてから席をついてMacを広げる。メールが溜まっていたので処理をして英語のレポートを書いて、タスクを終わらせる。その後は明日どこに行こうかの検索タイム。おそらく今日から毎日これが日課になるのだろう。明日の予定は19時からのうらじゃ実行委MTG以外決まっていなかったので、それに合わせた予定を組むことにした。朝は大阪でモーニングを食べて、昼は中華街に行こう。夜はどうせMTGの後はご飯に行くのでみんなにお任せ。よし、決めた。そうしよう。

 ホテルに帰って、狭いバスタブで体を洗い流して床につく。明日は岡山まで。地元に帰る日。懐かしのみんなに会える日。


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