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白昼鈍行の車窓から【2日目篇】(8月エッセイ②)

1.大阪の朝

 朝、目が覚めると大阪にいた。大阪までやってきたのだ。ここまでの移動距離は541km。長かった。そんなことを思いながらA, B, CのBコーデに着替え、リュックに荷物を詰め込んでホテルを出る。朝ごはんはモーニングを食べようと思っていた。生まれてこの方モーニングというものを食べたことがない。ネットで調べると、梅田のバスターミナルにおしゃれな感じのがあるらしい。緑の公園の中にあるカフェみたいなところ。ワンコインでトーストセットが食べられるらしいので、行ってみることにした。ただ、暑いのと苦手な虫が多いのとそもそも店が見つからないので断念した。前日にたらふく食べているので、まあ、一食減らしたくらいでなんともないだろう。自分が何口の何方面にいるのかさっぱり分からない大阪駅をぶらぶらした後に神戸線の新快速に乗る。乗ったことがなかったので知らなかったが、この電車は海辺を走って行くので綺麗な景色を見ることができる。江ノ島みたいな感じだ。行ったことは無いけど。新快速はかなりいい。東横線で言う通勤特急みたいなもので、快速よりも早く行ける。

海岸線

2.神戸の中華街

神戸の本町という駅で降りる。ここは、横浜の元町中華街と同じ感じの中華街が並んでいる。横浜の方が規模も大きいが、それだとどこで食べるか選べないので、個人的にはこのくらいの規模が良い。修学旅行生と思わしき人たちが入っていた店に入ることにした。彼ら彼女らは下調べをして入っているだろうから美味しいのは間違いないだろう。1,500円くらいの食べ放題のコースにした。水に150円取る店だったので”はあ?”と思ったが、大人なのでウーロン茶を頼んだ。この手の食べ放題は好きなものや気になるものをちょっとずつ食べることができるのが良いと思う。ここは戦略をとらないといけない。思ったより美味しくなかった時が怖いので、見慣れたメニューから選ぶことにした。フカヒレスープ、小籠包、揚げ餃子...どれも美味しかった。中国人か日本人が分からないくらい日本語が流暢な料理人が席まで料理を持ってきてくれる。おすすめは五目チャーハン。細いコメではなくて日本人に合いやすい硬さの米だった。

小籠包と焼売
五目チャーハン
揚げ餃子と春巻き
フカヒレスープ

3.いよいよ岡山

 神戸駅まで行ってスタバでミネラルウォーターを補給して再び電車に乗る。行き先は地元の岡山。実家に帰るのかと思いきや、今回は帰らない。理由は、コロナ対策だ。高校生の弟もいるし、不安がらせてもいけない。急に決まった旅行であったので、潔く実家は諦めてホテルを取ることにした。私は基本的に知ってるホテルを取りたがるので、今回はスーパーホテルにした。天然温泉がついていることでお馴染みのあそこ。イオンから徒歩5分。絶好な立地だ。電車の中で予約をして姫路で山陽本線に乗り換える。山陽本線は下関まで繋がっている長い長い路線だ。懐かしい景色、岡山にしかないチェーン店。色々なことを思い出す。家族と牡蠣祭りに行った日生。ドラム缶にいっぱい詰まった牡蠣が1000円で驚いた。当時まだ小学生だったからなけなしのお小遣いで買って帰った。40個くらい入っていて食べるのに苦労した記憶がある。カキフライとか牡蠣雑炊とか色々なものが比較的リーズナブルに楽しめるからおすすめ。

 懐かしい景色が、愛しの我が家が近づいてくる。何も変わっていない最寄駅。1人しかいない駅員さん、古びてタイルの剥がれたトイレ、腐りかけた木のベンチ。全てがあの頃のままだった。昔高松に住んでいる時、ここに今は亡きおばあちゃんと一緒に帰ってきておばあちゃんの家に泊まった。その時は普段見たことないくらい大きなステーキやお寿司、カレーが食卓に並んでいた。ああ、死んじゃったなあ。あとは、中学校は最初の1ヶ月は電車登校をしないといけなくて、朝通勤ラッシュの人たちとぎゅうぎゅう詰めになりながら乗った思い出がある。混んでいて一本電車を逃して遅刻しそうになったこともあった。懐かしいなあ。

懐かしの駅

 それに比較して、岡山駅は刻々と変化している。リニューアルOPENの看板はあちこちに貼られているし、帰るたびに見たことのない店が出ている。地下道を通り抜けて、ストリートピアノを横目にイオンに入る。地下のマックとサンマルクカフェはご健在。スーパーの方から出てスーパーホテルへ。一度だけ泊まったことがあるのでやり方はなんとなく分かる。部屋について温泉に行く。まだ17:00を回ったところなので誰もいない。豪快にシャワーを浴びて広い浴槽で泳ぐなどしてみる。東京ではめんどくさくなってシャワーで終わらすことが多い。旅行で温泉でもいかない限り風呂には浸からないから、多分、前の帰省で実家に帰った時以来の湯船だ。お湯加減もいい感じで快適だった。

岡山の文化拠点

4.初めてのうらじゃ対面MTG

 着替えて必要な荷物だけ持ってうらじゃのMTGへ。うらじゃって何やねん?と思っている人も多いと思うので、ここで説明を。

毎年8月の第一土曜と日曜に岡山市中心部で開催されている”うらじゃ”。「踊り」を軸として開催されるこの祭りは、市民自らが中心となりそのほとんどをボランティアスタッフが運営する岡山の地域・文化・歴史に根ざしたストーリー性のある市民参加型の祭りとして、年々その規模を拡大し、県内はおろか県外からも毎年多くの踊り子が参加する祭りとして岡山のまちに定着しています。温羅(うら)のお話を基にし「共生と融和」をテーマにこの”うらじゃ”はつくられました。”うらじゃ”をきっかけに「郷土の歴史や文化に興味を持つ」ということから「知らなかった歴史や文化を調べ・知る」といった行動を導き、「郷土を誇りに思う心」や「まちを大切にする心」や「人と人との繋がりを大切にする心」を育む活動に繋げ「まちのために行動を起こせる人」の育成を目指したいと考えています。“うらじゃ”の最後に岡山のまちに感謝し、踊り子が自主的にゴミ拾いをして日常に帰るのもこうした気持ちの現れです。1994年にまちづくり、ひとづくり、幸せづくりのきっかけになればと始まった”うらじゃ”。特色を出し設けられる「演舞場」や、商店街・市役所筋公道を練り歩き群舞する「パレード」など多くのコンテンツを持ち岡山のまちを祭りムード一色に染め上げます。(振興会)
HPより

 振興会の説明的にはこんな感じで、とにかく楽しい祭りということが分かってもらえたらそれでいい。

 その実行委員会の中でも、私は演舞場という市内各所にステージを運営する「演舞部会」組織にいる。今年でかれこれ4年目になる。高校2年生の時に初めてアサインされたからまあまあベテランの域には入る。今年はイオンの1階のハレマチの演舞場を担当することになった。皆さん来てください。実行委には呑助が多いので、お酒のアテになるようなおやつを買って帰った。姫路の酒麹を使った煎餅。うちの部会にはお酒にめちゃくちゃ詳しい人がいるので、ちゃんとした解説を加えてくれる。すげえ〜。続々とメンバーが集まってきた。新しく入ってくれた大学生の同い年の皆さんは試験でいなかったが、懐かしい人たちばかり。前のnoteにも書いたが、今までは対面参加が難しい委員用のTeamsでオンライン参加をさせてもらっていた。大半は県北在住で県南まで会議のために出てくるのは時間的に厳しかったり、仕事の関係で参加できなかったりする人たちのためのものだが、誰も東京から参加するとは思ってなかっただろう。オンラインだとその場の空気感とか終わった後のご飯とかが味わえないのでどうしても対面参加したかったのだ。本祭までもうあと1ヶ月を切っているの中で会議も白熱化する。3年ぶりの開催で、より良いものを創りたい気持ちはみんな同じ。初めてのコロナ開催で今まで誰も経験したことのない祭り。感染症対策に重きを置くのはもちろんのこと、どうやったら踊り子さんや観客の方々が楽しめるのか、我々実行委員が楽しめるのかは常に考えた。質疑応答の時間は各々が疑問に思ったことを言っていく。私も何個質問したし意見も言った。会議の醍醐味はこういう瞬間にあると思う。経歴も経験も異なっている人々が各々の感性を元に最適解を見つける時間で楽しい。自分一人では気づかない点や解決できそうにない点もお互いにアイデアを捻り出す。祭りになったらそれこそ演舞や総踊りを見たり参加したりするのが一番楽しいのだが、個人的にはこの瞬間も心地良い。私も4年目で経験者の域に入っているので、周りをリードできる存在でありたい。

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 あっという間に2時間くらい経った。会議の後は何人かでご飯に行った。恥ずかしながら18年間住んでいても行ったことのない店の方が多い。今回もその行ったことがない店に行った。そこで色々な話をしたし、色々な話を聞いた。うらじゃメンバーでよさこいに行った話、総踊りの音源の話、実行委の未来の話。みんなが楽しくも真剣にやっている祭りだから話も盛り上がる。私はこの祭りに関わって一番良かったことは”かっこいい大人に出会えたこと”だ。その後も親しくさせてもらっている人に何軒か連れて行ってもらったが、最後の店で締めの挨拶をした時にグッときた。その店はうらじゃのポスターをトイレに貼ってくれていた。「じゃあなんか締めてよ」その言葉に、ベロンベロンのその人が開口一番「うらじゃのポスターを貼ってくれてありがとう」。酔ったときに人間の本性が出るとはよく言ったものだが感動した。この人たちと今後もずっと一緒にやっていきたいと思ったし、その人が慕われている理由がよく分かった。

 店を出てホテルに向かう。時計は4:00を回った。明日は香川に行って高校の同期とうどんを食べてから広島に向かう。ここまできたらもうホテル取らなくてもスーパー銭湯で汗流すだけでも十分だったじゃん。荷物置き場になっただけじゃん。そんなことを思いながら帰路に着く。まあ、楽しかったから全然ええんやけど。次回の会議も対面で参加したいなあ。

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