救済

「自己認識が凄く悪い。鬱の傾向もあるね」
ぶちまけられた無秩序なインクの染みを何枚も見せられて、それについての感想を述べた結果だった。まぁ、そうだろうな。

「ありがとうございます」
「はい、お大事に」
1時間1万5千円。目の前の初老の男に愚痴を聴いて貰う金額。風俗嬢並み。こんな事を知りたくて毎回安くない金を浪費しているのだろうか。全てが馬鹿げている。目の前の男も、こんな所に通っている自分も。

タフじゃなければ生きていけない。優しくなければ生きていく気にもならない。それなら、きっとオレはタフじゃないし優しくもない。疲れているから悩んで、悩んだ分だけ余計に疲れる。機械になりたかった。機械であれば、少なくとも下らない悩みは無くなるだろう。それだけでも、生きるのが随分楽になる気がした。

人生が楽しいと無邪気に思えたのは、一体いつまでだっただろうか。生きることに意味なんて無い。少なくともオレには。クソ下らない仕事に追い立てられて、短針が天辺回ってもキーボードを叩いている時、考えるのが辛くて胃にアルコール流し込んだ翌朝、全く先が気にならない文字の羅列を目で追っている時、そんな事を思う。

セックスと嘘と見栄が飛び交う欲望渦巻く聖夜に、オレは独りで惨めに死にかけている。欲しくもないプレゼントを貰った奴等が罵声を飛ばし合う。貰えるだけ良いじゃないか。オレには覚めない眠りをくれよ、サンタクロース。

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