The Most Favorite Nightmare
「いやー、楽しそうでしたね!」
そうか、そう見えたのか。重畳。顔を合わせて飲み会なんて数年ぶりで、割と頑張って酒を飲んで、黙っている人がいたら話を振って、話すことがなくなれば相手を褒め、料理を取り分け皿を下げ、自分の事はこき下ろしてたから、そう思ってもらえて良かったよ。だけど、キミはどうなんだ?オレが「楽しそう」だったのは良いとして、「楽しかった」かな?
こういう時はいつも悩んでしまう。やり過ぎてないだろうか。オレが「一番楽しそうだった」では困るのだ。それより「楽しかった」と思ってもらう事が重要だ。でないと、今後も仕事で関わっていくキミ達との円滑な関係を築くというオレの目標が達成されない。極論すれば、オレはそんな場所で誰とも話していたくなんかない。許されるならずっと黙って飯を食って酒を飲んで帰るだろう。23歳のオレがそうだった様に。「詰まらない男だ」とバブルの生き残りに評された頃から、オレはガキのままだ。
道化を演じている。そして、白塗りと口紅が上手く笑顔を描けているか気にしている。自分の本心だけしか分からないから、相手の言動や仕草から心の中を邪推して関係という名の蜃気楼を見ていくしか無いのに、こんな文章を書いているオレはとても哀れだ。言い訳のつもりなのか。そしてそれは一体誰に向けて言っているのか。
だが、恐れられるのが恐ろしいから、今更やり方を変える事も出来ない。誰も分かってくれないならオレだけがオレを分かっていれば良い。どれもクソみたいな悪夢しか用意されてないなら、せめてお気に入りを選ぼう。恐らく、それだけがオレに取れる唯一の手段なんだ。
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