大後悔時代の幕開け

勤務していたメーカーは社員数500人くらい
だったんだ。わりかし大きい方なのかな?
親会社は誰もが知ってるような大会社で、
だから使えると思ってた。

もちろん、僕は断言するぜ?いいかい、
僕は決してそうは思ってなかった。
だけどさ、周りの社員とかが言うもん
だからさ、そうなのかも?って少しばかし
期待しちゃったんだな僕ときたらまんまと。

つまりその、うちの会社名はブランドとして
使えるから転職に有利だよ、って言葉をさ。

とんでもなく間違いだった。こんなもんは
辞めたことがない奴の言う言葉さ。まるで
通用しなかったじゃあないか。というか社名
すら知られてもなかったんだ。

悲しい話だよまったく。社員はブランド力が
あると思ってるんだからさ。

仕事はデューダやウォンテッドリーで自力で
探そうって思ってたし、ハロワはポーズ程度
に利用するとして、他人の力も借りようと、
僕はリクルートに登録しに行ったんだ。
機関のエージェントを頼ってみよう、ってさ。

いずれにせよポートフォリオや経歴書を
準備しなくちゃあならなかったんだけれど、
この作業は結構、骨だったよ。
各サービスで当然フォーマットは違うわけ
だしさ。だから僕は考えたんだ。ブログに
ポートフォリオを掲載して、限定公開リンク
貼ればいいんじゃあないのか?ってね。

ちょうど放置してた僕の、そう、これは
言うと悲しくなるんだけれど、いつかその
屋号でデザイン事務所をかまえるんだ!
って意気込んで作ったウェブサイト。
そいつにブログもあったもんでそれを
使えばいいかなと思ったんだ。まったく
更新してないそのブログを使えば、ってさ。

2019年、4月の半ばあたりからぼちぼちと
転職活動を始めたわけだけれどさ、基本的に
書類選考で落ちるんだ。まぁわかってはいたよ。
40代で転職なんだしそんなに簡単ではないって
ことはさ。前職のブランド力も使えないし、
この年齢。でも僕の世界観さえ見てもらえれば、
少しばかしは可能性があるんじゃあないか、
昔友達に言われたんだ。

君の世界観はきっと、商業ベースに乗りさえ
すれば売れるわ。だって可愛いもの。

その時彼女に見せたものは、僕が考えた
オリジナルのキャラクターだったんだ。
僕はリリー・フランキーさんのような
グラフィックデザイナーに憧れていて、
それで昔からキャラクターも作ってたんだ。

フライヤーやCDジャケット、ロゴデザイン、
Tシャツ、キャラクターデザイン、色々やる。
そんな憧れのデザイナー。

個人ではダメだ。どこかの機関の、力を
持った人の目に触れさえすれば、きっと
商業的に成功する。そうあの子は言って
くれたんだ。

その言葉に支えられながら、僕はせっせと
ポートフォリオサイトのリンクも企業に
送ってたんだけれど、反応はさっぱりでね。

僕は今でもあの夜のことを思い出すんだ。
どういう文脈か忘れたけれど、バタフライ
エフェクトの話をしていたあの夜のことを。
君はなんであんな話をしたんだい?
別れ際、駅で「わたしは幸せだ」とキスして
くれたあの夜に。だけどそれはもう確認する
ことはできない。

君はもう、この世にいないんだ。

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