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「今さら知りたい男女7人」第9回 桜橋にまつわる謎
「今さら知りたい男女7人」9回目は前回に引き続き桜橋です。
この桜橋のシーンは「夏物語」にとってかなり重要だったのではないか? と思っています。今回はそんなお話
夏物語4話「夜の橋」 桜橋のシーンは良介のこんなセリフからはじまります。
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桃子「わたしもあそこで買う」
ところがロケ地の桜橋は清州橋から4キロ以上あるので、このセリフがしっくりきません。
もちろん、「単に撮影場所が桜橋だった」というロケ都合ということでいいのですが、実はシナリオにはこのシーン場所の指定があります。清洲橋です。
ーー清州橋
良介が大きな袋を下げて渡って来る。
ふと、川の方を見ると、堤防の上に、桃子がポツンと座っている。
良介、見る。
シナリオでは清洲橋の堤防に桃子ポツンと座っていて、(清洲)橋を渡ってきた良介が桃子を見つけるというシーンとなっています。
なるほどこれなら、「橋の向こうの店はティッシュが安い」云々のセリフもしっくりきます。また、小説版でもこのシーンはしっかりと「清州橋」となっています。
このシーンは前回の記事でも書きましたが、夏物語1~3話まで(というか4話のこのシーンの前まで)顔を会わせれば口喧嘩ばかりの桃子に良介がはじめて何かを感じるシーンなんですね。小説版では次のように表現されています。
桃子が、堤防の上を軽やかに走っていった。追いかけようとして、良介は、ティッシュの包みに気がついて、桃子の後姿を見送った。
夕暮れの中に、桃子が消えていく。走る姿が、まるで少年のように弾んでいた。
どうでしょう? こういう表現が入るとこの橋のたもとのシーンは良介と桃子の重要なシーンであり、なればこそシナリオでも小説でも清州橋だったんだと思います。
したがって、撮影場所がなぜ桜橋になったのか? 逆にこの点私はかなり気になっており、もし可能であれば当時のスタッフに聞きたいぐらいです。
桜橋に関する話をもうちょっとだけ続けます。
夏物語10話「Yes or No」で桃子に対して良介が「アメリカへ行ってこい」と背中を押すシーン、これも夏物語4話とまったく同じ場所で撮影されています。ただし、こちらはシナリオに場所の指定がありません。ただ、「堤防」とだけなっています。
ところが小説版ではしっかりと桜橋となっています
日曜日に、良介は、ブラブラと桜橋まで歩いていった。桜橋というのは墨田川にできた新しい橋だ。車は通さずに、人だけが通れる。桜の咲く時は、橋は人で埋まるのだ。
シナリオでは特に場所の指定はないのですが、小説では桜橋としているんですね。
小説は出ていますが、この小説は「原作」の位置づけではありません。ドラマのノベライズと考えた方がいいでしょう。実際、小説の刊行は1988年8月と「夏物語」の放映が終わってから約2年後です。
つまり、本編を見た鎌田さんが小説のほうをドラマに寄せたのではないか? ともとれます。
ただ、夏物語4話はもちろん10話のこのシーンもやはり清州橋がよかった! と私は思います。あらためて記事を起こすつもりですが、ドラマの前半であれほど舞台として出ていた清州橋が後半に行くにしたがい少なくなり、最終回はなんと清州橋は1カットも入らないんですね・・・
この「夏物語」は明らかに舞台として清州橋を選んでいます。「清州橋を舞台に行ったり来りする男女の恋物語」が「夏物語」・・・ と考えるとここは最後清州橋で締めて欲しかった・・・
「夏物語と言うと清州橋だよね」とはよく聞きますが、実は「清州橋を舞台にした恋物語」という観点からは「夏物語」は最後までうまく描き切ったとは言えない・・・ というのが私の感想です。そして、この点についてはまた別のシーンでも触れる予定です。
ということで、夏物語4話と10話に登場する桜橋に関するお話でした。
では、では。また、次回
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