第９回：もっと政治分野の男女共同参画に期待？！

【理事長コラム】NPO法人 浜松男女共同参画推進協会 理事長　井出あゆみ

男女共同参画社会の形成は、社会のあらゆる分野で求められることですが、政治分野は、はなはだしく進みの遅い分野の１つです。

2019年現在、議会における女性議員の割合は、地方議会で平均14.3％、国会：衆議院では9.9％と1割にも至っていません。（地方議会では男性議員6人に対して女性議員1人、国会：衆議院では男性議員9人に対して女性議員１人、という比率）

社会が男女半々で構成されている以上、意思決定においても男女半々であるのが民主的といえます。そう考えると日本の政治分野の現状は、まったく非民主的な状況にあると言わざるを得ません。政治分野は、何にも増して、男女共同参画社会であるべきなのですが、政治の場に1割しか女性がいない状況はどう見てもおかしいですよね。

日本での女性の政治参画は、国際的には世界153カ国中144位、ＯＥＣＤ諸国中最下位の水準です。これが日本のジェンダーギャップ指数の総合数値を押し下げています。
ご存知、ジェンダーギャップ指数というのは、世界経済フォーラムが毎年発表している、各国の男女平等度を表す指数で、その最新の日本のランキングは153カ国中121位（2020年）です。
経済、政治、教育、健康の4分野のスコアの総合が121位ということなのですが、経済115位、政治144位、教育91位、健康40位ですから、政治分野のスコアの低さが特に足を引っ張っていると言えます。121位は過去最低です。

日本のジェンダー平等（≒男女共同参画）の遅れは、それが世界中に知れ渡っているということも含めて、嘆かわしい限りです。(>_<)
ちなみに2021年のランキングは年次総会が翌年夏にまで延期されたため未定です。コロナ禍で指数が上がる見込みはあるんでしょうか！？ランキングがこれ以上下がるのはカンベンしてほしいんですけどね・・・。

記憶に新しいところで、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が、2018年5月に公布・施行されました。

男女共同参画社会基本法（1999年制定）の基本理念にのっとり、政治分野の男女共同参画を推進することで民主政治の発展に寄与することを目的として作られた法律です。

基本原則として、次の3つを掲げています。
① 国会や地方議会の選挙において男女の候補者の数ができる限り均等になることを目指す
② 男女がその個性と能力を十分に発揮できるようにする
③ 家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となるようにする

そして、国・地方公共団体の責務として、政党等の政治活動の自由と選挙の公正を確保しつつ、必要な施策を策定し実施するよう努めることを定めています。施策の例としては、実態調査、情報収集、啓発活動、環境整備、人材育成等があります。
また、政党その他の政治団体には、団体に所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数について目標を定めるなど、自主的に取り組むよう努めるものとしました。
この法律が効を奏して、政治分野の男女共同参画が進んでいくことを期待したいです。

と、一応期待はするものの・・・。

この法律、無いよりあったほうがよいに決まっていますけど、これだけで政治分野の男女共同参画が達成できるのでしょうか？
「できる限り」とか「努める」とかの表記があり、達成されなくても「しかたがない」と言い訳ができてしまう建付けになっています。罰則規定もないので実効性には疑問が残ります。

本物の民主政治を目指すなら、抜本的な改革として「クオータ制」の導入しか達成手段はないのではないでしょうか！

つい最近も、オリンピック組織委員会の会長辞任で、日本の権力の上層部にある男女差別の根深さが、世界に印象付けられてしまいましたが・・・。
政治分野（特に保守系政治家層）に現存するタテ社会の権力構造の中には、差別意識のみならず、「密室会議」「忖度」等々悪しき慣習も多くあります。
生半可な改革では、男性優位の政治のゆがみは解消できないと思います。
こうした悪弊ごとゼロベースで見直して、政治分野の男女共同参画を達成していきたいところ。
思い切ってクオータ制を導入して、国際社会の常識と肩を並べていきたいものです。

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【クオータ制とは】
クオータ制はポジティブアクション（差別を解消しようとして行う積極的な取組）の手法の一つであり、性別等を基準に一定の人々や比率を割り当てる制度のこと。どちらかの性別が4割（この割合が一般的）を下回らないと決めておくやり方です。
世界196の国と地域のうち6割の118で性別によるクオータ制が国政レベルで導入されています。そうしたところでは、意思決定の場に女性も参画するという当たり前のことが実現できています。

NPO法人浜松男女共同参画推進協会
浜松市を拠点に男女共同参画、ジェンダー平等、女性活躍推進などの課題に取り組んでいます。浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター（あいホール）の管理運営を担っています。
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