第5回:ことばとジェンダー(その1)
【理事長コラム】NPO法人 浜松男女共同参画推進協会 理事長 井出あゆみ
「ジェンダー」という言葉は、1995年の「北京女性会議」以降よく聞くようになりました。そもそも、どういう意味なんでしょう?
ジェンダーというのは、生物学的な性別を示すセックスに対して、社会的文化的に形成される性別のことです。簡単に言うと、作られた男らしさ女らしさ(など)のこと。「男(女)はこうあるべき」という社会が作り出す性別がジェンダーです。
要するに、ジェンダーというものは、絶対的固定的なものではなく、時代や社会的背景によって変化しうるものなのです。
「男の子なんだから泣いちゃダメ」と言ったり「料理は女がするもの」と考えたりするのは、男女共同参画社会を目指す現代ではNG。こうした固定観念や性別役割分担にとらわれた見方をジェンダーバイアス(性的偏見)と言います。
もともとの「ジェンダー」は、言語学における文法上の「性」として用いられる言葉でした。フランス語やドイツ語など、名詞に性がある言語があります。言語学においてはこの文法上の性をジェンダーと言います。
「名詞の性」とは、例えばフランス語では、「太陽」は男性名詞で「月」は女性名詞、「空」は男性名詞で「大地」は女性名詞、「ペン」は男性名詞で「机」は女性名詞、「パソコン」は男性名詞で「マウス」は女性名詞・・・という具合に、すべての名詞に性があります。
「母親」「娘」は女性名詞、「父親」「息子」は男性名詞…といった、現実に性別(セックス)を持つ生物を表す名詞の場合はまだ理解できるとしても、無生物を表す名詞にも男性女性の区別があるなんて、ちょっと不思議な感じがしますよね。
「ネクタイ」が女性名詞で「スカート」が男性名詞だったりしますし、ドイツ語では「太陽」が女性名詞で「月」が男性名詞だったりしているから面白いですね。
なぜ分ける必要があるの?どうやって分けたの?使い分けはあるの?いろいろ不思議ですが、細かい点は、言語学者にお任せするとして・・・
どの国においても言語は歴史的・文化的事情によって定まってきたものでしょうから、ジェンダー(文法上の性)はまさにジェンダー(社会的文化的性別)なんですね!
中身はいうほど単純なものじゃないみたいですが・・・
それにしても、すべての名詞を男性と女性(と中性)に分類するという長い間の人為的な行いは、苦労の伴うものだったでしょうね。
現代において、母語としてこれらを学ぶ人たちはどんな感じなんでしょう?名詞の性に違和感はないんでしょうか?
そういえば、フランスは世界に先駆けて議会の男女同数を法律(パリテ法)に謳うほど、ジェンダー平等に積極的な国ですが、文法上のジェンダーについてはどうとらえているんでしょう?
そう思ってフランス人に尋ねてみたら、男性名詞、女性名詞をめぐっての熱い戦いは行われているんだそうですよ。やっぱりね!(・o・)
NPO法人浜松男女共同参画推進協会
浜松市を拠点に男女共同参画、ジェンダー平等、女性活躍推進などの課題に取り組んでいます。浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター(あいホール)の管理運営を担っています。
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