見出し画像

第6回:ことばとジェンダー(その2)

【理事長コラム】NPO法人 浜松男女共同参画推進協会 理事長 井出あゆみ

男女共同参画社会(ジェンダー平等社会)を目指すためには、日常生活における言葉の使い方にも配慮が必要です。

言葉の役割は、「伝達手段」というだけでなく、その表現を社会的・文化的に「一般的な見方」として固定化させる働きもあります。そのため、日常使われる言葉が、ジェンダーバイアス(偏ったジェンダー)を助長してしまうことがあるのです。

日本では、男性中心の社会構造が長く続いてきたため、社会や家庭で男性が主、女性が従という状況のもとに、女性差別を含んだ言葉や表現がたくさん生まれました。その中には、時代の変化に応じて廃れたものもありますが、今でも使われ続けているものがあります。

「家族を表す言葉」には注意が必要
「家内」「主人」「嫁」「姑」などは、今でも使っている人の多い言葉ですよね。これらは家父長制を引きずったような言葉ですから、時代と共に表現を変えていきたいところです。可能な限り、「妻」「夫」「息子の妻」「夫(妻)の母」という表現にしたいですね。

「入籍」という言葉も家父長制のイメージの強い言葉です。
「結婚」の意味で「入籍」という言葉を使う人もいるようですが、入籍の意味は元々ある戸籍に誰かが入ることを指します。現代では一般的に結婚した夫婦は新戸籍が新たに作られますので、結婚=入籍ではありません。こうした誤用も無くしていきたいですね。

「男性視点」で女性を強調して表現される言葉
男性視点で表現される女性を強調した言葉は数多く見られます。
「女医」「女優」「女子アナ」「女流作家」と挙げればきりがありません。
特にメディアがこういう言葉を使うと、男性中心社会が助長されてしまいます。たいていの場合、男女両方に使用できる言葉や表現で十分ですので、こうした性別が特定された表現は避けていきたいですね。

ちまたにあふれる「ジェンダーバイアス」を含んだ言葉
そのほか、日常何気なく使われる言葉や表現の中にも、ジェンダーバイアスが潜んでいます。

最近耳にして気になったものが2つあります。
ひとつは、「女房役」という言葉。
「○の女房役になってやってください」という言い回しで使われました。「夫を補佐する妻」に見立てた言葉で、男女の役割を固定化する表現です。話し手は必ずしも性差別的な思想をもってその言葉を使ったわけではないでしょうけど、「補佐役」と言えば十分に伝わります。

もうひとつは、「男にする」という表現。
「○を男にしてやりたい」という言い回しです。「一人前にしてやりたい」と言いたかったことは分かりますけど、NGですよね。「男」という言葉の対義語として「女」があって二項対立の関係に立つ以上、誉め言葉として「男」を使うということは、「女」をけなすことと表裏一体です。
ジェンダーの視点を欠いていて、問題だと思いました。こうした表現は避けていきたいですね。

男女共同参画社会は、「男らしく」「女らしく」でなく、「自分らしく」生きられる社会のこと。ジェンダー平等に敏感になって、言葉の使い方からも男女共同参画社会を目指しましょう!

***

【参考】浜松市「メディアユニバーサルデザインガイドブック
浜松市では、誰にでも見やすく、分かりやすい情報提供を行うため、メディアユニバーサルデザインガイドブックを作成しています。そのなかで、「言葉の表現」として、ジェンダー平等にもとづいた表現を例示しています。

画像1

NPO法人浜松男女共同参画推進協会
浜松市を拠点に男女共同参画、ジェンダー平等、女性活躍推進などの課題に取り組んでいます。浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター(あいホール)の管理運営を担っています。
WEB:https://danjo-hamamatsu.jimdofree.com/
FBページ:https://www.facebook.com/danjohamamatsu/