見出し画像

第8回:女性活躍推進法の効果はいかに?

【理事長コラム】NPO法人 浜松男女共同参画推進協会 理事長 井出あゆみ

2016年(平成28年)の4月より「女性活躍推進法」が施行されています。
正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」と言い、自らの意思で働くことを希望するすべての女性が、その個性と能力を十分に発揮できる、豊かで活力ある社会を実現することを目的として、2015年(平成27年)8月に制定された法律です。

基本原則として、次の3つを掲げています。
① 女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供とその活用を通じ、女性の個性と能力が十分に発揮できるようにする 
② 職業生活と家庭生活の円滑かつ継続的な両立を可能とする 
③ 両立に関しては本人の意思を尊重する

そして、国に基本方針の策定、自治体に推進計画の策定、企業に女性の活躍状況の把握や課題の分析、行動計画の策定・公表などを求めます。

そもそもどうしてこの法律がつくられたのでしょうか?

一言でいえば「労働のジェンダーバイアス(≒男女格差)を解消するため」です。法律案を作成していた当時、就業を希望しながら育児や介護を理由に働けていない女性が300万人以上いました(2013年度の非労働力人口の内の就業希望者は、男性113万人に対して女性315万人)。
また、女性雇用者は2,406万人で雇用者全体の4割以上を占め、その半数以上は非正規雇用でした(2013年度の非正規雇用率は、男性21.1%に対して女性55.8%)。加えて、約6割の女性が第一子出産を機に離職をするというのが実態でした。(2013年の第一子出産後の離職率は59.5%)
そして、出産育児による離職を経て再就職する際に非正規雇用者となることが多いんです。そうなると女性は能力の発揮の機会が阻まれますよね。
そうした状況を解消して、女性が働きやすくかつ長期的にキャリア形成していけるようにと、この法律がつくられました。

法律の名称に「女性」と入っているので、働きたい女性のためだけの法律という印象になりますが、そうではありません。女性が仕事と家庭を両立した上で十分に能力を発揮するためには、「長時間労働を改める」「多様な働き方を認める」など、抜本的な労働環境の見直しが必要になります。

働き方の改革は、女性だけでなく男性にとっても、社会全体にとってもプラスなんです。

今や男性、特に若い男性は、家事や育児など家庭生活に参画するのが当たり前の時代ですが、実際は職場に縛られて思うように参画できていない男性も多いはず。

働く人が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようになれば、男性も家庭生活に気兼ねなく参画することができます。そして、男女ともに職業生活と家庭生活を両立させることができます。
女性が働きやすい社会、活躍できる社会をつくることは、現在および将来の労働力不足を解消し、労働生産性を上げ、社会全体の活力が増すことにつながります。豊かで活力のある社会、男女共同参画社会につながります。

「女性活躍推進法」は、経済分野から男女共同参画社会を目指す法律なんですね。ただ、「女性活躍推進法」は、迅速かつ重点的に推進しようと、10年間の時限立法なんです。

もう5年近く経ちますが、効果の程はどうなんでしょう?

良く言えば、ある程度は「効果が出ている」と言えます。最新の調査では、女性の就業希望者は231万人、女性の非正規雇用率は56.4%、第一子出産後の離職率は44.2%となっています。法改正もあり、女性の活躍を成功させている企業にも幅が広がってきました。
しかし、全体としては、期待するほどに「効果は上がっていない」と言うほうが当たっているかもしれませんね。

2026年(令和8年)3月まであと5年間余りのうちに、願わくば「働き方改革」を成し遂げて、目指す男女共同参画社会に近づいてほしいものです。
くれぐれも改革半ばで期限切れ、なんてことにならないように願います。

・・・とはいえ、コロナ禍に見舞われたこともあり、計画通りに進めていくのは相当ムズカシイかもね?(>_<)

NPO法人浜松男女共同参画推進協会
浜松市を拠点に男女共同参画、ジェンダー平等、女性活躍推進などの課題に取り組んでいます。浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター(あいホール)の管理運営を担っています。
WEB:https://danjo-hamamatsu.jimdofree.com/
FBページ:https://www.facebook.com/danjohamamatsu/