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瀬戸芸2019「瀬戸内アジアフォーラム」に参加してみて&コロナ禍での芸術祭


今更ながら、昨年の夏に参加した瀬戸内アジアフォーラムの感想とかを書いてみる。

瀬戸内アジアフォーラムは、今回で2度目の開催となる国際サミットで、
アジアで活躍するアーティスト、芸術祭による地域復興を目指す行政関係者、持続可能な観光事業を進める国連関係者などが一同に集って講演や意見交換を行うアツいイベントです。

このサミットのオープニングセッションに参加して、基調講演のいくつかを聴講しました。

当日のプログラムはこんな感じ。

2019年 8月21日 プログラム
パート1「瀬戸内アジアフォーラム」が目指すもの(10:30-13:00 )

開会 主催者挨拶
浜田恵造(瀬戸内国際芸術祭実行委員会会長、香川県知事)

問題提起
「激動する世界の中で人々はアートに何を希求するのか」
北川フラム(瀬戸内国際芸術祭総合ディレクター)
 
基調講演①
「国連はなぜ観光に取り組むのか―カルチュラル・ツーリズムの可能性」 
ムサリム・アファンディエフ (国連世界観光機関事業変革シニアオフィサー/アゼルバイジャン)

基調講演②
「芸術祭は何ができるのか――展覧会を超えて」
アンソニー・ガードナー(オックスフォード大学ラスキン・スクール・オブ・アート所長/イギリス)

<昼休憩>

パート2 地域芸術祭とアジア(14:30-16:30)

①「中国はなぜ"大地の芸術祭″を開催するのか」
謝揚(国務院発展研究中心研究員/中国)

②「シンガポール・ビエンナーレ2019が目指すもの」
パトリック・フローレス(ビエンナーレ2019ディレクター/シンガポール)

③「3つのビエンナーレが始まったタイ。次は何が?」
クリッティヤー・カーウィーウォン(ジム・トンプソン・アートセンター・ディレクター)

④「中央から離れてどう見るか―スポットライトを浴びたインドネシア・アートコレクティブの実践」
レオナルド・バルトロメス(キュレーター、ルアンルパ代表/インドネシア)

<休憩>

パート3 ディスカッション(17:00-17:45)
特別講演 17:45-18:15
「沖縄で芸術祭は可能か?」
池澤夏樹(作家)

閉会 挨拶 福武總一郎(瀬戸内国際芸術祭総合プロデューサー)


会場は高松駅すぐそばにある「かがわ国際会議場」。
ホール全体を見た感じほぼ満席で、参加者やプレス関係者がきゅうきゅうに詰まっていました。

飛び交う英語と中国語。各所でおこなわれる名刺交換。握手の撮影。

一般参加枠があると知って単身弾丸で乗り込んだ私にとって、なかなかの異世界っぷりでめちゃくちゃ動揺したのを覚えています。(そのおかげで出入場の証である青シールを2度もなくしたのはいい思い出)

身を縮こませませながらどうにか自分の席を確保したはいいものの、机の上にあるヘッドセットを見てまた混乱。

(なんだこれ・・・)

いじくりまわしていると、ちょうどよく会場アナウンスが入りました。どうやら同時通訳用の機械のようです。人生で初めての同時通訳対応の会議でちょっとだけテンションがあがりました。
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オープニングセッション開幕


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帰りの都合でパート3のディスカッションには参加することができなかったのですが、それぞれの講演がめちゃくちゃ密度の濃い内容で6時間強のサミットが本当に一瞬で終わってしまいました。

サスティナブルツーリズムについての話だったり、中国ですすんでいる地方芸術祭プロジェクトの話だったり、ビエンナーレが終了した後の話だったり・・・etc

特に印象に残ったのが北川フラム氏と、RUANGRUPAの初期メンバーでYCAMキュレーターのLeonhard Bartolomeus氏の講演。


北川さんの講演は以前にも芸劇+まちがくで拝聴したことがありましたが、今回の講演の中では、瀬戸内国際芸術祭の大テーマである「海の復権」について熱量をもって語られているように感じました。

このあたりは瀬戸内国際芸術祭2019公式HP上に、ギュッと詰まったものがあったので引用しておきます。

「島のおじいさんおばあさんの笑顔を見たい。」-そのためには、人が訪れる“観光”が島の人々の“感幸“でなければならず、この芸術祭が島の将来の展望につながって欲しい。このことが、当初から掲げてきた目的=『海の復権』です。有史以来、日本列島のコブクロであった瀬戸内海。この海を舞台に灘波津からの近畿中央文化ができたこと、源平、室町、戦国時代へとつながる資源の争奪の場であったこと、北前船の母港として列島全体を活性化したこと、朝鮮通信使による大切な大陸文化の継続した蓄積の通路であったことは、その豊かさを物語るものでした。しかしこの静かで豊かな交流の海は近代以降、政治的には隔離され、分断され、工業開発や海砂利採取等による海のやせ細りなど地球環境上の衰退をも余儀なくされました。そして世界のグローバル化・効率化・均質化の流れが島の固有性を少しずつなくしていく中で、島々の人口は減少し、高齢化が進み、地域の活力を低下させてきたのです。私たちは、美しい自然と人間が交錯し交響してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の『希望の海』となることを目指し、瀬戸内国際芸術祭を開催しています。
(瀬戸内国際芸術祭2019公式HPより)


講演の中で惹かれたのは、芸術祭のあり方についてです。

芸術作品』を中心に『アーティスト』『行政』『地域』が相関関係となって連動していくこと。

北川さんは、地域に根付いた場所・空間でこれを実現していくことが芸術祭としての魅力だと語ります。

そして、そこで実現された環境と人との関係性もまた美術の一部だとも。


また、この3つの相関関係と近似したものを、Leonhard Bartolomeus さんは自身が初期から関わっていたRUANGRUPAの結成理由やコンセプトと絡めて語っていました。

RUANGRUPAについての活動はこちらのインタビューが詳しいです。


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この講演では、『アーティスト/グループ』『行政』『芸術祭』が連動しあうことで目指す社会問題への取り組みについて発表されていました。

これらの講演はどちらも、閉じ込められたフレームに固執せず、横の関係性を重視ししながら「表現すること」そのものに対して意見しているように感じます。

これと似たようなことは 東京ビエンナーレ2020プレイベントの展示会でも強く感じたところです。


コロナ禍のなかで


さて、今回なんでまた去年のイベントの感想を書き始めたかというと、北川フラムさんが書いたこの記事を目にしたからです。

この中で、北川さんはコロナ禍での芸術祭についてコメントしていました。


新型コロナウイルス禍の美術 土地に根ざした社会的資本

文化・人間の均質化を受けたなかで、人間の自然的(直感的)な生理の発露である美術のもつ役割を考えようとしてきました。それがサイトスペシフィック(土地に根ざした)アートでした。今後の瀬戸芸をはじめとした芸術祭では、遠隔せざるをえない人々との交流を促すネットや映像のあり方がより考えられるでしょう。


先のアジアフォーラムの中で重視されていたのは、横とのつながり。より密接な人と人との相互関係の上に成り立つ芸術活動でした。

しかし、今般のコロナ騒動の中でそれが根底から覆され、様々な活動の場が今まさに変容しています。

リモートワークが推奨され様々なメリットを全員が実感しました。

しかしその一方でまた、人とつながりあえない隔離の辛さを全員が共有していることも事実です。

これはただの私の予感に過ぎませんが、ソーシャルディスタンスや三密の回避によって、目に見える形で分離を強いられた世の中からの反動として、これからは参加者が自らの実体験することや、より肌感覚を伴うワークショップの手法が求められるような気がしてなりません。

そして、その実現の大きなトリガーになるものが芸術祭であるようにも思います。

北川さんは、講演の中で芸術祭は祝祭性を持つべきともお話されていました。

文意は異なってしまうかもしれませんが、これから企画されるすべての芸術祭がコロナによって侵された私たちの心持ちを晴らしてくれるような、素敵な祝祭になることを願ってやみません。



以上、中途半端な知識で殴り書いてしまった雑多な感想でした。



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