大学生の僕から


5年前、僕はこんな記事を書き残していました。



「近未来の音楽」

アルスエレクトロニカというフェスがある。オーストリアのリンツで毎年開催されるこのフェスは、芸術・先端技術・文化のための祭典で、メディアアートに関する世界的なイベントだ。毎年1つのテーマを掲げて開かれていて、今年(2015年当時)のテーマは「ポスト・シティ」だった。

ポストシティ=新たな「まち」

このテーマを見た時、そこで流れる音楽ってどんなのだろう。近未来ってどんな風になってるんだろう。そんな想像が止まりませんでした。そして、ぼんやりと考えていたこの想像は、とあるニュースを見たことをきっかけに更に加速します。

トヨタ子会社が空飛ぶ車に関する特許を取ったのです!あのトヨタが!

ついに本格的に取り組み始めたか、とうとうそんな時代になったかとワクワクしたのを覚えています。
人が空を飛ぶという夢は、古くから抱かれていたことです。ダヴィンチがスケッチに起こしていた飛行機の図面から始まり、ライト兄弟による人類初の有人飛行の成功を経て、今では空のはるか上。宇宙を目指してさらに研究が続けられています。

空飛ぶ車を夢見て

テクノロジーの発展とともに空を飛ぶ、という行為がどんどんと身近な存在になってきています。今ですら空港に行けばものの数分で空に飛び立つことができるのに、もし、空を飛ぶということが、僕たちの日常生活の一部に組み込まれたらどうなるんだろう。

これはもう夢物語ではありません。空飛ぶ車の研究は、実はかなり昔から研究されています。1940年代にはフォード社の社長が「いつか車は空を飛ぶときがくるだろう」と明言しましたし、発明家のポール・モラーは自身の発明したスカイカー(空飛ぶ車)についてTEDで公演までしています。
2017年の発売を目指すスカイカーも飛行実験を繰り返しています。日本でも2020年の東京オリンピックに向けて空飛ぶ車を作ろうというプロジェクトが進行しています。

ですが、実現にむけては深刻な課題が数多く立ちはだかっているのもまた事実です。
起業家として有名なイーロン・マスクもTwitter上で空飛ぶ車に対して慎重になるように発言しているように、メリットとデメリットをしっかりと考えていかないとなりません。安全性・技術的ハードル・インフラ整備・コスト問題・免許取得問題などなど・・・
こうやってあげていくと、まだまだとても実現しないようにも思える空飛ぶ車ですが、案外、もうかなり身近なところまで来ていると僕は考えています。

というのも、最近なにかと話題のドローンがこれらの課題のクリアに役立ってくれるんじゃないかと期待してるからです。

ドローンと空飛ぶ社会

ドローンによって表面化した問題は、まんまさっきの空飛ぶ車の問題と類似しています。安全性は?(墜落したらどうする)技術的ハードルは?(安定して飛ばすためには)インフラは?(どこを飛ばしちゃいけない)
どうやってこれらを解決していけばいいでんしょうか?

1つのアイデアは、これらの問題をクリアするためにテクノロジーを用いることです。
ロボット研究者のラファエロ・ダンドレア氏は、高精度のドローン自動制御技術の開発に成功しています。

このプレゼンでは密室空間に限定されているが、すでに全世界を網羅しているGPS情報を付与すれば屋外での運用も実現可能だとラファエロ氏は言う。

すでにシルクドソレイユでも演出手法として採用されているドローンをみても、今後の制御技術の発展が気になるところです。

また、こういった技術だけでなく、apple社を始めとして様々な企業が全自動制御された自動車の開発を進めています。ドローンによって空を飛ぶことに対する課題が表に出始め、この課題の解決をすすめるうちに、より高精度で大型化したドローンの開発がされ、その先に待つのはきっと、今研究が続けられている空飛ぶ車であると思います。


空飛ぶ車の世界で流れる音楽って。。。

そんな、空飛ぶことが当たり前になった社会で、新たな「まち」=ポストシティの中ではどんな音楽が生まれるんでしょうか。

tofubeats はインタビューの中で、未来は静謐になると言っています。


そうしたとき、人はもう一度「音」を求め始めると思ったんです。トヨタのプリウスがいい例で、あまりにも走行音がないために、かえって危険だからとあえて音を付けているって聞いたことがあります。Skypeでも、対話のバックグラウンドに、わざとノイズが挿入されているとか。つまり、静かな操作音を目指していたテクノロジーが無音を生んでしまうと、今度は人間にとってバランスが悪くなることがわかってきたわけですね。そのとき、どんな「音」を鳴らすべきかを考えました。

彼は、未来は静かになる。として作曲しました。なら、僕の思う新たな「まち」での音楽ってなんだろう。

そこで、僕は未来が空飛ぶ社会になるとして想像することにしました。さっきまで長々と語っていたように、近い将来「空飛ぶ社会」になる、なりつつある。。。のだ。。。。


そんな社会になりつつあるいま、僕らの意識は上に、ちょっとだけ俯瞰するような、空中・空間に向きはじめていると考えました。

音の空間認識の変化

普段から鳥や2階の物音など上からの音になれているはずの僕たちですが、例えばドローンのような、ちょっと見上げたところで浮遊してる物体。そこから発生する音に注目する経験って案外少ないような気がします。

この上方向に対する意識が、音楽の聴取する際の意識にも影響してくるんじゃないでしょうか。つまり、未来では、より立体的な音楽表現が求められると考えました。

ですが、従来のサラウンドでは上方向に対する音表現というのはわかりづらいものがあります。というのも、現在発売されている、ホームシアター向けのマルチチャンネル環境は5.1ch仕様です。スピーカ-5つで構成されるこのシステムは、場所をとったり部屋環境に影響されたりといった様々な問題をもつせいか、イマイチ普及してません。もちろん、最近になってフールーに代表されるような映画配信サービスが充実してきたことでホームシアター向けの製品にこれから需要がでてくるかもしれませんが、、、現状、一般家庭に浸透しているとはいいがたいものです。更に言えば、上下運動の音像移動には不得手です。(※2015年当時)

では、未来ではどんな環境で音楽が聞かれているのか。僕はそれが、VR技術による仮想空間での体験に近くなると考えています。

仮想空間での音楽

VR=バーチャルリアリティー技術は、近年急速に発達してきていて、Oculus や モーフィアスといったヘッドセット型のデバイスが話題になっている。今年の東京ゲームショウでは、sonyの発表したVRデバイスがかなり話題になっていて、ゲームに没入するといった体験が高いクオリティで実現しているそうだ。

で、なぜVRが未来の音楽に関わってくるのかということですが、VRには鑑賞者が提示した世界に没入するため様々な技術や工夫がなされています。そのうちの重要な1つが、ヘッドトラッキング技術というものです。これは、ヘッドセットつけてる人の頭が今どんなふうになってるのかを検知してくれるものですが、これを使うことによって実際に首をふって、部屋を見回したり足元を見たり周りの音源の位置を特定したりすることができます。

最近ではすでに5.1chなどのサラウンドに対応したヘッドフォンが多く発売されたり、装着することでヘッドトラッキングを実現してくれるシステムも販売されていたりと、音楽を見回す時代が近づいているような気がします。

実際、この間紹介されたマシュマロ・レーザー・フィースト制作の「In the Eyes of the Animal」では動物の聴覚体験を実現しているし、今年の夏にバルセロナで開催された国際音楽フェスティヴァル「Sónar(ソナー)」でもVRブースが開設され、多くの反響を与えています。

このように、空を飛ぶことによって得られるかもしれない上方向に対する意識は、ヘッドトラッキングを伴うVRの実現とともに拡大し、将来的にはよりマルチチャンネルに対応した音楽作品が求められるのではないかと想像しました。つい最近でも、未来の音楽表現を目指した挑戦として色んな試みがされています。これから様々なアーティストが魅せてくれる未来の音楽が今から楽しみです。

近未来の、新たな「まち」の中での音楽について、みなさんならどう考えるでしょうか?



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?