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3-19. 歌いながらカステラを売る彼女


九州を周遊する観光バス旅の二日目、
今日泊まる予定の長崎へ向かう途中には
いつも一人の女性が合流しました。

高速道路PAでトイレ休憩後、
バスに戻られたお客様たちは驚きます。
僕からは妹ぐらい、
お客様達からは孫娘ぐらいの
綺麗な制服の女性、

彼女の正体は???

長崎の名物カステラ販売会社の職員でした。

旅行会社との契約で
バスは彼女を乗せたまま出発します。
長崎出身の彼女はバスに立ったままでマイクを握って
一生懸命カステラを売ります。
ただのお土産売りというより、
地元のプライドと情熱を持っている彼女の様子を見ると、
自分に任された仕事に最善を尽くす姿に
自分も頑張らなくちゃと……

もちろん、買うのは自由なので、買わない方は買わないです。

ところが、彼女には最後の強力な武器(?)があります。

……

長崎へ向かって走るバスの中でもの悲しい演歌の曲調が流れます。

彼女が歌い始めます。

その歌でバス中は妙な空気に囲まれます。
まるで魔法の様に……

皆の感情線を強く刺激します。

熱い拍手の後

「カステラちょうだい!」
「こちもくれ!」
「私も!」

もちろん、上手い商売だとも思うけれど、
孫娘年齢の彼女の頑張る姿には
高い売上を与える資格が十分ではないかと…

皆の旅程にもっと同行してほしい気分を後にして
挨拶と共に彼女は
次のPAで降り、
出発するバスに手を振ってくれます。

ふらっと乗って
風と共に去る様な

カステラを売った長崎の彼女
今でもたまには
彼女の歌が聞きたです。

彼女の成功と幸せを……

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