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第三章 物語/草千里で会った人

やっと第三章に入りました。

第三章にはエピソード中心になります。

2-9.ロードキル編でも述べましたが、

2015年6月中旬、初めて添乗に訪れた九州は

個人的にも意味あるツアーでした。

昨夜、神戸港を出港した「サンフラワー」号は瀬戸内海を通過して

翌朝6時20分、大分港へ到着、高千穂→阿蘇山中岳の草千里→長崎までに到る

ハードな行程でした。

疲れながらも、夢中の様な高千穂の美景に酔ったうちの団体は昼食後、

阿蘇山中岳に向かいました。

バスはくねくね登り道をのろのろと登りました。

車窓に見える

自由に放牧された牛の群れ

6月の夏日なのに濃霧に囲まれている山。

都会では想像もできない絵の様な風景。

こんな大自然との出会いが出来る事に自分もお客様も感謝。

規模小さいけど、見える噴煙は

神秘的という以前、

人間に「謙虚」を教える大自然のメッセージではないかと

言いながらバスは草千里へ向かいました。

(その後大噴煙があり、しばらくの間立入禁止となりましたね)

いよいよバスは草千里レストハウスに到着して皆様とも

大自然のパノラマを満喫しました。

レストハウスとの仕事が終わって集合時間が残っていたので

少しこの風景を鑑賞しました。

高い山地なので天気が曇ってひんやりとしたが、

のんびりと草を食っている馬の群れがある風景は

疲れにすぐ効く自然の薬でした。

その瞬間、

あれ?

何となく妙な気分になりました。

この風景…

どうやら懐かしい…

ここって来たことあるんだけ?

わけわからないこの親しみは何だろう。

初めて来たはずのこの風景…

ここへ観光に来た知り合いからの?

それども、昔学校の授業中でスライドでも?

やっぱり、最近のテレビ番組かなあ…

だろう、ねえ!

「オーさん、さあ…ここでお勧めのお土産は?」

早めにレストハウスに戻ったお客様の声かけに

この不思議な気分は

すぐ現実に戻りました。((+_+))

まあ、UFOを含めて

そもそも謎ない人生なんてないから…

シンプルに過ごそうと(^_-)-☆

......

翌日まで続いたツアーは何とか無事に終わり

やっと東京の自宅で寛ぐことが出来ました。

そして、週末久しぶりに余裕が出来て

部屋の物を片付けようと。

途中、引き出しに写真がいっぱい入っている封筒を見つけました。

やはりアルバム買わないと…

と思いながら軽く一枚ずつめくりました。

懐かしい…

自分の知らないうちに微笑む。

あ…

見つけた一枚の写真。


画像1


お母さんの写真でした。

自分が訪れて望んだ草千里、その風景でした。

アナログカメラで撮った写真の右下段には

「1997.4.4」という日にちが鮮明に残っていました。

18年前、両親の日本旅行の写真でした。

やっと謎が解けました。

写真に取られるのが恥ずかしいか

少し気まずく立って微笑んでいる

今の自分と近い、

まだ若い40代のお母さん!

シャッターを押したのはもちろんお父さん

当時、軍隊に入っている自分にお父さんは

夫婦人生初めての海外旅行である

日本旅行の楽しい思い出を

写真に残して

手紙と一緒に送ったわけです。

シャッターを押して

この瞬間の楽しみを伝えたお父さんは

もうずっと前、この世を去って

お母さんはもうおばさんになって

母国で晩年を過ごしています。

異国で偶然出会った両親の足跡と思い出

40代の若いお母さんは

18年間

はるかに遠い

地で

息子を待てたのでしょうか。

お母さんは当時のことを

だいぶ忘れましたが、

写真中の若いお母さんはいつも

僕を見て微笑んでいます。

「息子よ、やっと来たのか」









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