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【超短編小説】ネット小説家の苦悩

 本当なら小説が書きたい。しかし、それはできない。
 なぜならばネタがないからだ。

 時間は刻々と過ぎていく。私はどうすればいいんだ。
 朝からパソコンに向き合っているのに、一文字も浮かんでこない。いっそ気分転換にと散歩して風呂に入ったら、意図せず三時間も昼寝してしまった。

 周囲が騒ぎ始めた。実は数日前に、本日新作を公開するとSNSで告知してしまったのだ。その投稿を受けて、ファンたちが「あと数時間で読める」と待ち望む声を続々と投稿している。もし投稿できなかったら、ネット小説家という肩書に傷がつくだけでなく、多くのファンを落胆させてしまうだろう。

 私は決めた。もういっそ、今の状況をそのまま書いてやろうと。少しでも文字数を埋めるために辛さを切々と書いたら、既存の小説とはだいぶ毛色が違う作品ができた。既存ファンは面食らっていた。しかし赤裸々すぎる告白がエッセイとしては面白いとして、新たな評価を受けた。「先生の新境地が広がった」という声がタイムラインを埋め尽くした。


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