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憧れの異世界転生?!シンデレラが本当に望む人生・選択とは…/小説⑫-4完結/ストレスジャンププール

絶対絶命ぜったいぜつめい

あたしの人生で、そんな事が起こるなんて思わなかった…

あの女達の恐ろしい足音が、ドンドン近づいて来る!

この世界で、ねずみの姿に変わり、魔女と呼ばれるあたしが、助かる道は、、、

もう残されていない…

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「魔女さん! … 今、助けますね!」

シンディーが部屋から出てきて、あたしに気付いてくれた!

けど、ダメなんだ

もう間に合わない…

せめて、シンディーだけでも巻き添えにならないようにしないと…

覚悟を、覚悟を、覚悟を決めるんだ…

「来ちゃダメ!」

「えっ、でも…」

「シンディーも、あの足音が聞こえるでしょ!?早く部屋に戻って!!」

「で、でも…」

「あたしと関係がある所を見られたら、あの女達から、酷い目に遭うでしょ!?」

「……」

日頃の恐怖を思い出したのだろう、シンディーの手足が震えだした

「早く戻って!!」

「…でも」

「いいから早く!!」

済まなそうに困った顔をしながら、シンディーは部屋に戻って行く

ふう

これでシンディーだけは、助かっ………

い、い、息ができない

背後から自転車に、激突された様な衝撃が…

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い、い、一体…

「どこに隠れていた!クソねずみ💢」

声のする方に視線を向けると、、、

シンディーに暴力を振るっていた意地の悪い顔をした女だ

「よくも、わたしの足に噛み付いたね!

お前みたいな魔女は、今ここで処刑してやる!」

痛い!!

また背中に衝撃が走る

一瞬、目に入ったのは、松葉杖だった

あれで叩かれていたのか…

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シンディーを助ける為に、確かに噛み付きはしたが、加減はしたはず…

同情を誘い、被害者を演じる為に、松葉杖を持ち出したのだろう…

「クソねずみに、とどめを刺す前に、面倒だけど魔女に効果がある呪文を唱えないとね。

何でも、頭髪が黒いネズミには、大層効き目があるらしい。」

頭髪が黒いのは、日本人だからだ…

「新しい生活様式なる呪文書

えっと、なになに…

不要不急の外出は自粛しなさい。

仕事・学校・通院・生活用品の買い物しか、外出してはいけません。

密閉・密接・密集の3密は許しません。

店舗に入るのは最小人数で、大声を出したり騒いではいけません。

乗り物内では、会話は控え目に小声で短く、沈黙してなさい。

人とは2メートル以上離れて過ごしなさい。

魔酢苦は自宅でも外でも着用しなさい。」

⁉️

えっ!?

なんで!?

ここは、異世界のはずなのに…

毎日、毎日、毎日、土休日だろうと、お盆休みや年末年始だろうと、、、

2年半以上、見聞きさせられた、クソみたいな呪いの羅列られつを、今すぐ止めろ!

「あれ?小さく注意書きが書いてあるな。

但し、密室・密閉の空調が快適なスタジオ内での生放送と、TV局が制作した番組及びCM出演者は、魔酢苦の着用は不要不急ですと。

不要不急の外出及び、県境を跨いだり超えてはいけません。

但し、報道関係者やTV局などの製作・取材は、県を跨いだ移動が無条件に認められ許されますと。

TV新聞は毎日欠かさず見なさい。

報道に疑いを持ったり、自分で一次情報の事実を調べないで下さい。

毎日更新される情報を、いち早く知り暗記して、周囲に知ったか振りをして語るだけの役目だけを果たして下さい。

TV新聞以外の発情報は、全てデマや陰謀論なので、信じてはいけません。

また政治や社会への不平不満は、自粛警察・魔酢苦警察・節電警察・節ガス警察・節食警察を名乗り、抵抗者や抵抗勢力を生み出さない様に、相互監視を行う事で解消・解決しなさい。

して公助(福祉)に、頼よろうとしたり、甘えてはいけません
自己責任と最大限の自助努力を続けなさい
困った時は、共助にすがりり付いて、子ども食堂や炊き出しの列に並びなさい

ふ~ん、例外や特別で優遇される特権が認められる者と、抑圧される生活を強いられる奴隷や囚人の世界なのね(笑)

呪文がよく効いている様で、苦しそうだな、クソねずみ(笑)」

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「まだ呪文の続きがあるな。

37℃以上の体温がある場合、登園・登校・出社を見合わせて下さい。

また、小さく書いてある。

日々の基礎体温の違い・平熱の個人差は関知しません。」

何が、医学や論文や研究だ!

人間が生物として生きるのに、役に立たたない害悪ばかりで、人権抑圧と行動規制の口実だろうが!

馬鹿げた基準を、真面目に正直に皆が行えば、職場に行けなくなるし、行かない口実にもなり、人手不足で仕事が回らなくなり、経済も社会も停滞する…

電気・ガス・水道の供給は滞り、食品や日用品の品薄や品不足に陥る…

保育士や介護士が出勤できなければ、一体、誰が小さな子どもやお年寄りの面倒を代わりにみるの?

殊更ことさら、とりわけ大きく書いてある呪文があるな。

1回目2回目を打ちなさい。

みんなの為に、効果があるから。

打たない人は、周囲との疎外感・孤独感を感じる生活を送り、飲食店で酒の注文ができません。

異物混入・使用期限切れ・(打つ人打たない人の)有効性比較データーが霊長類省で修正されても、廃棄するのが勿体無もったいないので打ちなさい。

副作用?因果関係の認定?簡単には認めないし、因果関係不明で審査終了です。

だから、3回目4回目も打ちなさい。」

やめろ

やめろ

やめろ

やめて

もうやめて!

これ以上、多くの人を不幸にして、健康被害で人生を狂わせて、命を奪わないで…

大分だいぶ弱ってきたな、クソねずみ(笑)

呪文の詠唱えいしょうが終わったし、とどめの時間と行こうか(笑)」

松葉杖が高く振り上げられた

……

ああ、こんな所で

ここで人生が終わってしまうのか…

2年半前から、長生きなんてしたくないと思う様になったけど…

こんな死に方、終わり方をするんて……

悔しいな…

本当、他人にどう思われるとかって、どうでもよくってさ、、、

もっと自分の気持ちに素直になって、好きな事をしたり、好きな所に行ったり、好きな人に会いに行ったり、、

日々の生活の中で楽しい時間を、自分で創って過ごしていれば、よかったな…

ぎゅっと目を閉じると、身体が恐怖で強張こわばり出す…

……

……

「あああああああ」

シンディーの叫び声で、目を開けた!

松葉杖を振り降ろそうとしていた意地の悪い顔をした女に、シンディーが体当たりをして、2人とも床に倒れ込んだ!


た、た、助かった…

危機一髪ききいっぱつだった💦

まさか、シンディーが助けてくれるなんて、、、

突然現れたシンディーに、最初は戸惑っていた意地の悪い顔をした女だったが…

しかし、次第に怒りと憎しみで、顔が醜く歪み始める💢

ま、まずい、矛先がシンディーに向かっ…

「痛えな💢シンディーお前、何をしたのか分かってんのか!?

シンディーを取り押さえろ‼️」

取り巻きの女達に命令すると、意地の悪い顔をした女が、松葉杖でシンディーを殴り始めた…

ちょ、ちょっと、止めてよ!

シンディーは、あたしとは関係ないから

ねえ、お願いだから止めてよ!

ねずみ捕りで、足が動かせない…
松葉杖で叩かれた激痛で、身体も動きそうにない…
最初の時みたく、噛み付いてシンディーを助ける事も出来ない…

誰か、誰か、シンディーを助けて上げて!

ねえ、誰か!

………

………

そう願っても、、、
いくら祈っても、、、
無力感と絶望感しかない、、、

よく知っている、嫌な感覚が溢れて、気分が悪くなる…

普段は心に蓋をしている、黒い感情が沸き始めた…

こんな家に、生まれなければよかった…

こんな国に、生まれなければよかった…

こんな時代に、生まれければよかった…

こんな世界に、生まれければよかった…

どうしようもない不遇や苦境を、憎み嘆く気持ちが溢れ出す…

熱い、熱い、熱い

怒りと憎しみで、心が一杯だから?

いや違う!

あたしの身体が燃えている!

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部屋の中の人や物が燃え出して、意地の悪い顔をした女達が、半狂乱になって叫びわめいてる

そうだ、シンディーは…

松葉杖で殴られて、動かなくなったシンディーの身体も燃えている!

これって、あたしの異世界での能力なの?!

ねずみの姿に変わり、シンディーとだけ話せる能力しかないと思ってたけど…

と、止め方が分からない💦

どうしよう…💦

えっ、えっと、こういう時は、、、

「ス、ス、ステータス画面出てきて!」

異世界作品定番の解説画面が、目の前に現れた!

えっと、あたしの特殊能力は、、、

"異世界でネズミの姿に変わるが、身体能力は人間の時と同等"

だから、松葉杖で叩れても、死ななかったのか…

もう一つの特殊能力は、、、

“不遇と苦境に対する憎しみの業火ごうか
憎しみが限界まで膨れ上がると、自分自身と半径10メートル以内の人や物を燃やし尽くす両刃もろはの剣《つるぎ》"

ちょっと説明不足!

止め方が書いていない!

なんて不親切なの!


身体が熱くて苦しい💦

憎しみを鎮めて、消すにはどうしたら…

考えろ、考えろ、考えるんだ

憎しみの根源を…

……

……

他人や出来事に対して、憎しみが起こるのは、心の反応や癖だ

憎んでいるのは、嫌な奴らや嫌な出来事だけかな?

……

……

…あたし?!

あたし自身もか?

自分自身を、自分で助けられない…

困っている誰かに、力を貸す事もできない…

無力でちっぽけな、自分が大嫌い…

どうしようもなくて、仕方がない自分…

あたしがあたしを、憎んでいたの!?

周囲が、時が止まったように静かになる

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あたしの身体を包んでいた炎が消えて、シンディーの身体からも炎が消えた…

身体中の皮膚がヒリヒリして熱いが、なんとか止められたのか

よかった…

異世界作品では、チート(圧倒的)能力は定番だけど、、、

あたしの能力は、自分も周囲も巻き込むなんて、とんでもない代物しろものだった💦

確かに、憎しみは自分自身の心を、暗く深い泥沼に沈め息苦しくなるし、矛先が他人に向かえば…

「…魔女さん?」

「シンディー!!!」 

「…い、今、行きますから、ちょっと待って下さいね。」

そう言うと、シンディーがいつくばりながら、あたしの所まで来て、ネズミ捕りの罠から解放してくれた

「シンディー、ありがとう。」

「足は、大丈夫ですか?

…さっきの炎は、魔女さんの魔法ですか?」

⁉️

「…えっ、えっと、そうなの、そうなの。

ご、ごめんね、シンディーまで燃やしてしまって💦」

「い、いえ… あのまま、松葉杖で殴られていたら、死んでいたと思います。

最初の時も言いそびれましたが、、、

魔女さん、助けて頂いて、ありがとうございます。」

「お、お礼なんて、いいよ。

それに、あたしが来た事で、シンディーを色々と、巻き込んでしまったでしょ?」

「そ、そんな事ないです!

今まで、誰かが私を助けてくれたり、私の為に親身になってくれる人なんて、誰もいなかったんです…」

「そっか…

ねえシンディー、あたしが絶対絶命の時、どうして助けてくれたの?」

「…あの後、部屋の外から、中の様子をこっそり伺っていました…

魔女さんが、松葉杖で叩かれたり、新しい生活様式?の呪文で苦しんでいるのを、ただ見てる事しか、できなかったんです…

口答えくちごたしたり、反抗的な態度だと思われると、いつも酷い目に遭うので…

最後の最後まで、怖くて身体が動かなかったんです…

で、でも、魔女さんが最初に私を助けてくれたり、親身になってくれたのを思い出したら、身体中が熱くなって、気付いたら…」

「…そうだったの。
あたしの為に、勇気を出して、助けてくれて、ありがとう。

あっ、シンディー顔が真っ黒だよ。」

「えっ!?魔女さんも、全身が真っ黒ですよ。」

お互いを見合って笑い出す

異世界に来て、目まぐるしかったけど、楽しく腹を抱えて笑えるなんてね

ふう〜

一息つくと、どこかから水音が聞こえてくる…

あれ!?

あたしの周りで、水面が広がり身体がゆっくりと沈んでいく…

「ま、ま、魔女さん!?」

これって、一体…

そういえば、異世界にくる前に水音を聞いた覚えがある…

もしかして…

「魔女さん、これも魔法ですか?!」

「…うん、そうなの。…元の世界に帰る…」

「えっ!?

そんな…

この世界の魔女さんでは、なかったんですか?」

「…うん。なんか迷い込んで、しまったみたいなのよ…

シンディー、最後まで力になれなくて、ごめんね。

いつか、自分の為におこれるようになると、いいね。」

「…い、いや。

嫌です!

行かないで下さい!」

「で、でも、あたしの世界に連れていく訳には、行かないのよ…

悪政と報道で、貧困が蔓延・拡大し続けてるし…

自由や人権も、制限されている世界なの…

辛い事や苦労する事も多いから…」

「わ、私の国の統治も、決していいものでは、ありません…

なにより、この家に居るだけで、私は、私は…

辛くて、苦しくて、何の希望も夢も、ありません…

だから、、、」

……シンディー

どうしたらいいの?

一緒に来ても、シンディーは幸せに暮らせるの?

あたしの世界で、生きていけるの?

……

……

ざぶ〜んという水音と共に、周囲が暗くなり意識が遠のいていく…

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う〜ん

目を開けると、異世界に行く前にいた、駅のホームだった…

そして…

視界の高さが戻っている!

ねずみから、元の人間の姿に戻れたのね!

火傷の跡や激痛も無くなっている、、、

けど、熱さや痛みの感覚は、生々しく残っている…

あたしは、ホームに落ちた時、死んでしまって異世界に、転生したものだと思い込んでいたけど…

転生てんせいではなく、転移てんいの方だったのでは?

ホームを見渡すと、転移する直前、踏みそうになったチーズ🧀が残っていた!

えっ!?

何で?

どういうこと?

……

……

疑問が頭を駆け巡る中で、ホームに倒れている女の子に気付く、、、

「…う〜ん。」

えっ!?

まさか、、、

「シンディー!!!」

こっちの世界に、転移してしまったの!?

「…そ、その声は、魔女さんですか?

ねずみではない、人間の姿ですか?

ここは、、、どこですか?」

シンディーは身体を起こして、周囲をきょろときょろと見回している

「…シンディー、あなた、あたしの世界に転移、来てしまったのよ…」

「転移?という事は、魔女さんと一緒にいられんですね。よかった〜。」

「…シンディー、それでいいの?

元の世界に帰る方法も分からないし、帰れないかもしれないのよ?」

「…あの時も言ったじゃないですか。

あの家に、私の居場所なんて無いし、あのまま残っていたら、今度こそ死んでしまうかも、しれないです…」

「それは…」


「私が来てしまって、、魔女さん迷惑でしたか?…」

シンディーが、困った様な、悲しそうな顔で、見つめてくる…

元の世界に戻れるのは、あたしだけだと思っていた…

予想外の事が起きて、頭がとても混乱している💦

時空や時代を超えて転移した人は、どうやって生きていったら、いいのかな?

旧知きゅうちの人がいれば、帰還を歓迎されたり、居場所もあるだろうけど…

見ず知らずの土地と世界に、たった1人で来たシンディーが、頼る人やすべはない…

警察や児童相談所が、シンディーの力になってくれるのだろうか?

いや、この世界について、知らない事が多過ぎるし、喰い物にされる可能性が高い…

家族からの虐待で、自分に自信が無くなっていて、人を見る目が養れていないと、騙される事やキツイ目に遭う事が多い…

真摯しんしに誠実に、シンディーの成長を見守り、愛情を持って接してくれる人に、拾われたらいいけど、、、

そんなの運任せ過ぎるよな…

……

……

……

転移したから、不法入国をした訳ではないし、転移を裁く法律もないはず…

日本国籍を得るには「記憶喪失」って事にすれば、なんとかなるかな…

不法入国なら、母国に強制送還されるが、転移してきた人を、強制送還できる方法がない!

まあ、今は、国籍まで考えなくてもいいか…

縁あって、困っている友人を助けて、一緒に暮らしている体裁ていさいを保っていれば、いいのかな…


よし!


「…シンディー、迷惑なんかじゃないよ。

こっちの世界の事は、よく分からないだろうし?

よかったら、あたしの家に来る?」

「…えっ!?

魔女さん、いいんですか!?」


シンディーが目を輝かせて、笑顔になる

役所で、家族と縁を切る手続きを終えて、これから、身寄りもない独り身で、生きていくと思っていたけど…

まさか、同居人が出来るなんてね、、、

「うん。いいよ。

それから魔女さんではなくて、あたしの名前は、、、」


終わり。
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ようやく書き終えられました💦

最後まで、お読み頂いて、ありがとうございます。

最終話は2つに話を分けようかと思いましたが、山場だったので、1つにまとめました。

書き進めていく上で、シンディー(シンデレラ)が、向こうの世界に残るのは救いがないと思い、展開を変えました。

私達が生きている今・現在は、考え方や受け取り方次第で、幸せにも、不幸にも感じたり見えるのかも、しれません。

夏の暑さが厳しく心身に堪えますが、今日も、いい1日でありますように

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