見出し画像

千葉市弁護士強姦事件公判傍聴記・2022年6月7日(被告人・武田祐介)

2022年6月7日
千葉地裁
201号法廷
事件番号・令和3年(わ)第666号等
罪名・強制性交等致傷、傷害
被告人・武田祐介
裁判長・上岡哲生
書記官・児玉祐規子

弁護士の武田祐介が、キャバクラ店従業員二名に対し、強制性交等致傷を行った事件である。今回は第五回公判であり、判決公判であった。
14時40分には8人程度しか法廷前に並んでいなかったが、50分には28人ほどが並び、最終的には、43席の傍聴席に対し、満席となった。
傍聴人の入廷前に、カメラによる法廷内の撮影が行われ、傍聴人の入廷が許可されたのは14時50分過ぎの事であった。
記者席は5席指定され、すべて埋まる。座っているのは、女性記者が殆どであった。
検察官側の関係者席には、眼鏡をかけた中年男性の、被害者参加代理人が座る。
弁護人は、髪を立てた3~40代ぐらいの男性である清水弁護人と、髪の短い中年男性である主任弁護人。これ以上できることはないはずだが、開廷前、資料に目を通していた。
検察官は、髪の短い中年男性のアシザワ検察官と、ショートカットの若い女性の検察官。その隣に、被害者参加代理人の弁護士が座っている。スキンヘッドの近い頭、眼鏡をかけた初老の男性である、高橋弁護士である。これらの人々も、記録に目を通していた。
そして、被告人である武田祐介が入廷する。被告人は、丸坊主で、ややがっしりした体格の男であった。黒いスーツに青いネクタイという格好。二人の刑務官に付き添われていたが、その刑務官の方を向き、入廷する。そして、被告席に座ると、清水弁護士に、指で四角の形を作りながら、何事か話しかけていた。
裁判長は、眼鏡をかけた小柄な、髪を固めた中年男性。裁判官は、髪の短い青年と、髪が長い中年女性。
裁判員は、中年男性、白髪の初老の男性、髪が後退した中年男性、白髪交じりの初老の男性、眼鏡をかけた青年、髪を後ろで束ねた男。すべて男性である。

裁判長は入廷してから、記録をぺらぺらとめくっている。しばらく、法廷に沈黙が続く。そして、開廷時刻の15時になったらしく、おもむろに口を開いた。
裁判長『時刻になりましたので、開廷いたします。被告人は立って、証言台の前に来てください』
被告人は、証言台の前に立つ。
裁判長『武田祐介被告ですね』
被告人『はい』
裁判長『強制性交等致傷、傷害について審理しましたので、これから、判決を言い渡します』

主文・被告人を懲役13年に処する。未決拘留日数中230日を、その刑に参入する。

言い渡された瞬間、被告人はうつむいており、特に身じろぎしなかった。
主文言い渡しの直後、記者が走って外に出るかと思っていたが、誰も出ていかなかった。
裁判長『以上、主文になります。理由を述べますので、そこに座ってください』
被告人は証言台の椅子に座る。うつむいている。
『裁判所は、証拠によって認定した事実を読み上げていきます。日時場所は起訴状のとおりなので、細かいところは読み上げないところがあります。被害者秘匿事項となっているので、その趣旨で読み上げていきます』

理由
第一・令和元年11月27日、午後11時57分頃から午後11時59分までの間、千葉市中央区のビル前の歩道上において、キャバクラ店の女性従業員のバッグをおいて立ち去ろうとしていることについて被告人に説明を求めようとしていた、同店従業員のMさん(31)に対し、同人の胸部を拳で殴って転倒させる暴行を加え、ビル前で、胸ぐらをつかみ、右顔面を拳で殴ってその場で転倒させる暴行を加え、よって同人に全治約一週間を要する顔面多発挫傷の傷を負わせた。
第二・客として知り合ったキャバクラ店従業員のA(22)さんと強制性交等しようと考え、令和3年3月7日午後7時57分ごろから同日午後9時19分ごろまでの間、千葉市中央区の当時の被告人方において、Aに対し両手首をつかんで壁に押し付け、その手首をつかんでベッドに引き倒し、あおむけに倒れた同人に馬乗りになり、その着衣をまくり上げて、同人の乳首を舐め、抵抗する同人の顔面を拳で3回殴るなどの暴行を加えてその抵抗を著しく困難にし、同人の陰部に自己の陰茎を押し当て性交しようとしたのち、口腔性交をし、同意人の陰部に自己の陰茎を押し当てて性交しようとしたが、性交に至らず、これらの行為によりAと強制性交し、全治二週間を要する、左顔面打撲傷、左側頭部打撲傷、左胸部打撲傷の傷害を負わせた。
第三・客として知り合ったキャバクラ店店員Bさん(24)と強制性交をしようと考え、令和3年4月8日、午後9時30分から同日午後9時45分ごろまでの間、千葉市中央区の被告人方において、Bさんに対し、その手をつかんでソファに座らせ、その着衣をまくり上げ乳首を舐め、あおむけに倒れた同人に馬乗りになり、手首を両手で押さえつけ、抵抗する同人の髪をつかんで拳で数回殴り、その着衣の中に手を差し入れて同人の陰部を直接触り、「やらせてくれたら帰してやるって言ってるだろ、とっととやらせろ」等といい、逃げようとした同人の髪をつかんで引っ張るなどの暴行脅迫を加え、その抵抗を著しく困難にして性交しようとしたが、同人は抵抗し逃げ出したため、性交に至らなかったという、未遂に終わった。一連の暴行により、同人に頭部、顔面、両下肢挫傷等の傷害を負わせた。
(被告人は、かすかに頷いた)
これらの事実を認定し、法令を適用して、主文のように判断しています。
量刑の理由を述べます。
第一の傷害行為を起こした約1年4か月後に、約一か月の間に二名の女性への強制性交等致傷事件を起こしており、これが第二第三の事件です。
本件は、二件の強制性交等致傷事件を中心に量刑を判断すべきものと考えます。
より被害の大きい第二事件は、客とキャバクラ店という関係でしかない間柄の被害者と、飲食店で飲食した後、弁護士であると信頼している被害者に対し、渡したいものがあるなどといって部屋に誘い込み、部屋に入ったのちに、顔面を複数回殴る等の暴行を行ったうえでの犯行であり、被害者に加療約二週間の傷を負わせている。凶器は用いていないものの、性交のために強い暴力を加えており、抵抗を試みたのちに口腔性交を行っており、その後も性交を試みており、性的侵害の程度は強い。
第三事件は、キャバクラ従業員である被害者と飲食店で飲食した後、カラオケに行こうと誘った被害者を、被告人の部屋に誘い込んでおり、性交しようとした犯行であり、被害者に全治二週間の傷害を負わせています。凶器を用いていないが、抵抗を排除するために強い暴力を加えた事案であり、未遂なのは被害者が頑張って逃げ出したからであり、性交される危険の高い悪質な犯行である。
(被告人は、はっきりと頷いた)
第二事件の被害者のAは、性的被害や暴力的被害を受けており、600万円の賠償を受け取った後も、被告人に対して厳しい処罰を望んでいる。
第三事件の被害者Bも、暴力的被害を受け、性的被害を受けそうになり、500万円の賠償を受け取った後も、被告人に対して厳しい処罰を望んでいる。
各被害は金銭で償いきれたとはいえず、金銭賠償について大きく考慮できない。
弁護人は、各被害者が任意に部屋を訪れたと指摘し、第二事件第三事件が偶発的とも主張しています。しかしながら、性的な関係が期待できる間柄ではない被害者を部屋に誘って連れ込んで、相手の拒絶を意に介さず性欲を満たそうとして犯行に至っており、当初から強い暴行を加えて性交しようと考えていたとまでは言えないが、経緯は特に被告人に対する非難を軽くする事情とならない。
第二事件前に傷害事件を起こしている。この傷害事件は、第二事件前に被害届を取り下げられているという事情があり、傷害結果としてそれ自体重い事案ではないが、飲酒時の事件という点で、他の事件と共通している。
傷害事件における被告人の言動や、各事件の経緯から見ても、被告人は弁護士である自分が、飲食店従業員を見下すという偏った考えを持ち、自らの意向に沿わない相手に粗暴な対応に出ることを繰り返していたのであり、問題行動を改める努力も不足していたと言える。
第二事件や第三事件は、上記のとおり、被告人が弁護士であることが被害者をして部屋に連れ込んだことを影響していると言えるし、事件全体を見ても、法律家として、犯罪の悪質性を理解している筈の被告人が、故意の犯罪を複数行っているのであるから、この点も非難されるべきである。
具体的な刑を決めるにあたっては、以上の通りの、本件の具体的事情を限定すると、検察官が論告で指摘したものに加えて、犯行態様を検索するなどした事案、強制性交等致傷、単独犯、性交既遂、凶器等なし、傷害の程度二週間以内、被害者の年齢13歳以上、前科なし、量刑の状況を参考にして、本件にふさわしい量刑を検討することが相当と考える。
既に述べた通り、各犯行に関係する事情によれば、被告人の刑責は相当に重いものである。
その他に、被告人が、公判廷において反省や謝罪の言葉を述べているという事情があるが、その反省の言葉は、被害者の心情や被害の実情に思いを致す部分は少なく、他人事のように聞こえる発言も見られ、全体として自らの犯した罪に対してむきあい、十分に反省しているとは評価できない。
(被告人は、深くうなだれる)
被告人の家族や友人が、社会復帰、矯正更生協力すると述べているが、各犯行の事情から、長期の刑が相当であり、量刑に大きく影響する事情と評価できない。
主文の刑が相当です。

裁判長『以上が裁判所の判断と、その主な理由になります。もう一度主文を言い渡すので、立ってください』
被告人は、証言台の椅子から立つ。

主文・被告人を懲役13年に処す。未決拘留日数中230日をその刑に参入する。

裁判長『控訴できます。その場合は、14日以内に、東京高等裁判所宛の控訴状を提出して。終わります』
16時まで予定されていたが、15時11分に終わった。
検察官、被害者参加代理人は、言渡しの間、しきりにメモを取っていた。
裁判長たちが退廷した後も、被告人と傍聴人たちは、法廷内に残っていた。被告人は、言渡しが終わった後、一見したところでは落ち込んだ様子はなかった。覚悟はしていたのだろうか。そして、刑務官に向けて頷き、退廷した。傍聴人たちも、被告人が退廷すると、法廷から退廷していった。


よろしければ、サポートお願いします! サポートは、交通費などの、活動費として使わせていただきます!