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池袋地下アイドル殺害事件公判傍聴記・2023年9月27日(被告人:宮城祐太)

2023年9月27日

東京地裁16部ABD係

422号法廷

事件番号:令和4年合(わ)第218号等

罪名:殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、死体損壊

被告人:宮城祐太

裁判長:安永健次

書記官:中島暁



この事件は、2022年7月10日、被告人である宮城祐太が、ホテルにて地下アイドルである被害者を殺害した事件である。動機は、被害者に恋愛感情をほのめかされ、多額の金銭を貢いで関係をもっていた。しかし、被害者に他に交際相手がいることを知り、裏切られた怒りや、被害者と一つになりたいという思いから、殺害したというものである。

被告人と被害者の性的関係は、通常とは異なっていた。サドマゾ関係であり、被告人がマゾヒストであった。しかし、犯行には表裏一体のサディズム的な面が出たようだ。被害者を食べたいと妄想し、首を切断した。そのほかにも、被害者の死体と自撮りをするなどした。


9時15分の時短で、法廷前に2,3人が並んでいた。9時40分に10人に増える。9時50分時点で16人ほどになり、同時間に入廷が許される。

弁護人は、眼鏡をかけた40代ぐらいの男性と、髪の短い色黒の、がっしりとした中年男性であった。開廷前、二人で話をしていた。

検察官側の席には、後ろに衝立がたてられている。遺族がそこにいるらしかった。

検察官は、眼鏡をかけた、痩せた浅黒い青年。眼鏡をかけた痩せたショートボブの30代ぐらいの女性。少し遅れて、三人目の検察官が入廷した。茶髪を後ろで束ねた、中肉で丸顔の若い女性であった。ショートボブの検察官は、開廷前、眼鏡をかけた太った赤ら顔の中年男性と話をしていた。被害者側の支援者らしい。

被告人は、下を向いて入廷した。白髪交じりの髪を丸坊主にした、やや赤みがかった顔の男だった。38歳という年齢よりも老けて見えた。白い半そでのワイシャツ、青いネクタイ、黒い長ズボンという恰好である。顔のほとんどは白い立体マスクが覆っていたが、目つきは真面目そうであった。革靴風スリッパをはいている。座ってからは、膝に手を置いて、前を向いていた。被告人が入廷した後、衝立は完全に閉じられた。

10時4分に、裁判長は入廷した。裁判長は、頭が禿げ上がった、眼鏡をかけた初老の男性である。証人尋問予定であるが、その証人が遅れているらしい。ついさっきついたとのことであった。10時6,7分に、参加人たちが入廷した。

検察官の隣には、被害者参加代理人が二人座った。眼鏡をかけた、白髪交じりのがっしりした体格の初老の男性であり、これはのちに被害者参加代理人の片岡弁護士と解る。もう一人は、眼鏡をかけたショートカットの小柄で痩せた2~30代の人物だった。当初女性かと思っていたが、のちに被害者の兄とわかる。

そして、裁判官と裁判員が入廷する。

裁判官は、髪を後ろで束ねた中年女性と、髪を切りそろえた眼鏡の青年であった。

裁判員は、眼鏡をかけた中年女性、眼鏡をかけた中年男性、中年男性、眼鏡をかけ髪を後ろで束ねた中年女性、30代くらいの女性、髪の長い中年女性という顔ぶれである。

10時10分、証人が法廷に到着する。小川という証人であった。髪を短く刈り、眼鏡をかけた、半そでワイシャツの中年男性。裁判長に促されて宣誓を行い、偽証罪について注意が行われる。まずは、証人がプレゼンテーションを行うとのこと。法廷では、被害者特定事項を明らかにしてはならないと伝えられる。


<小川証人のプレゼンテーション>

経歴等につきましては、資料の通り。鑑定方法は、令和4年7月26日~10月17日にかけて鑑定を行う。鑑定資料は記載の通り。

被告人の診断は、DSM―Vを用いて診断。

一番目、知的能力障害、程度は軽度。二番目、間欠性爆発性障害、三番目、性的マゾヒズム障害。四番目、性的サディズム障害。五番目、フェティシズム障害。二番目から五番目は、重症度で表すことが難しい障害。

精神疾患、影響。被告人の罹患する疾患、犯行に直接に影響を及ぼしていない。マゾヒズム、サディズム、フェティシズム、知的障害、本件犯行に観察的な影響、動機の形成や態様規定する要因となっていたと考えました。

性的マゾヒズム障害、性的サディズム障害、フェティシズム障害について、簡単な解説を行います。DSM-Vに基づく鑑定。マゾヒズム、サディズム、フェティシズムは、パラフィリア障害群とされる。その社会において、性的嗜好がマイノリティであるがゆえに、社会生活を送るうえで困難抱える人につけられる病名。過去には同性愛も精神疾患とされていたこともありました。

一つ目、知的障害。発達期、18歳未満までに明らかになり、日常生活の中で様々な不自由が生じる。複雑な会話、込み入った行為、計算が苦手など。一般的にIQ70未満。70以上でも、日常生活で困難さ伴うならば知的障害診断可能。被告人の知能指数は73。読み書き、計算が苦手で、知的障害と診断しました。被告人は、コミュニケーション力、決して低くない。コンビニでアルバイトを問題なくする能力がある。本件、知的障害が与えた影響は低い。

マゾヒズム障害、縛られる、罵られる、などに快感を覚える。空想、行動に現れる。Aさんに奴隷と呼ばれ、土下座し、煙草の火を押し付けられる写真が残る。マゾヒズム障害の影響と思われる。

サディズム障害、空想衝動、行動に現れる。本件との関係は、後ほど述べる。

フェティシズム、生命のない対象物や、性器以外に著しい性的興奮覚える。Aさんから経血を受け取り、Aさんと軽血を飲むことを約束していた。フェティシズムである。

精神疾患が本件犯行に与えた間接的な影響。Aさんに金を貢ぎ続けた。長期にわたり被告人にとって高額な金銭を貢いでいた。性的マゾヒズム障害、性的サディズム障害を満たすこと、被害者は可能であった。長期にわたり高額な金を貢いできたの、知的障害のために、Aさんが恋愛感情をほのめかし、それを真に受け、恋愛関係となるかもしれないと思い、あきらめることができなかった。知的能力障害だけでは説明がつかず、健常者でも起こりうる。

被告人は、恋愛経験が豊富。Aには盲目的な恋愛感情を抱いていたのではなく、冷めた、現実的な目で見ていた。Aに、自分たちは交際しているのか、と確認している。

諦められなかったのではなく、知的障害というのは、そのために収入の高い仕事に就けず、経済的基盤弱く、犯行に至る。間接的な影響と感じた。具体的には、被告人はコンビニで長年働き、店長、正社員には難しく、バイト続けざるをえなかった。

動機の形成、性的マゾヒズム障害、これは無条件的にAさんに隷属するのではなく、被告人の望む形式で隷属する必要がある。Aさんに金銭的対価に見合った見返り、性的飛躍を受けていないことに、不満を感じていた。

現実的に、恋愛関係にできないのでは、と考えていたが、独占できないのならば、殺害すればAさんは他の男性と会えなくなり、独占できると考えた。Aを食べることで、性的欲求を満たす。独占できる。

間欠性爆発性障害に関しては、本件については影響を与えていない。

以上、被告人の性的マゾヒズム障害や、性的サディズム障害は、動機形成、態様に、大きな影響を与えている。

性的欲求、合法的に解消でき、本件以前は合法的に解消していた。マゾヒズム、サディズム障害、影響は間接的にすぎないと結論付けました。

以上です。


続いて、痩せた浅黒い青年の、サダタニ検察官が証人尋問に立つ。


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