見出し画像

蒸気自動車 リメイク 記録

第1作

2010年6月、拙作「蒸気自動車」が完成した。(唐突)

当時、私は大学に入学したてだった。中高時代、自身の創設した「折紙同好会」を牽引することに注力した結果、「創作折り紙」をあるい意味「我慢」していた。そのせいか、大学生になってからというもの、アイデアというか作りたい題材が湯水のように湧いてきて、いくつもの代表作が一気に完成した時期でもあった。誰かに「作風変わったね」とすら言われた。そんなことを言われながらシャカシャカ試作を続けていたのがこの「蒸気自動車」、もともとは「レトロ感漂うクラシックカーを作りたいな」というニッチな欲求からスタートした作品だ。

ちょうどその折、NYのOrigami USAコンベンションに参加することになり、作品展示にて第1作を公開したところ、大反響。「車」を題材にした作風で有名なマーク・カーシェンバウム氏ともこれがきっかけでお話をすることができたのはいい思い出だ。

画像1

この第1作は50cm程度の、当時は新商品としてもてはやされていた紙、無加工の「カラペラピス(マラカイト)」を使用して作られた。後述する第2作とは違い、派手な金色の裏打ちはせず、ホイールにも厚みはなく、「平面のエッジ」で自立しているような状態だった。こんなお粗末な出来栄えでも評価された理由は、おそらく題材選びと、4つの車輪の「骨」を明確に表現していたことだと思う。

第2作

この反響を受け、同年9月、日本折紙学会の機関誌、「折紙探偵団123号」の1コーナー、「展開図折に挑戦!!」にて本作の展開図を公開することになった。 

この時に合わせて、構造や展開図はそのまま、第1作の「お粗末な」出来栄えを払拭するべく、80㎝の大きな「カラペラピス」を用いて「第2作」を作った。必要な部分にだけ、「ハイピカ」という厚手の金色の紙を裏打ちし、見た目を強烈に派手に仕上げた。このときに、構造はそのまま、仕上げをうまく変えることでホイールの「厚み」を表現できることに気が付いた。外から見えない随所に針金をめぐらし、形状の保持にも注力し、「第1作」とは比べ物にならない完成度の作例が仕上がった。

画像2

Photo by BluePaper(https://www.flickr.com/photos/bluepaper/)

この「第2作」と、発表された「展開図」が一般的に知られている私の「蒸気自動車」という作品である。聞くところによれば「モリスエの代表作」といっても過言ではない名作であるとのこと。現在作品は東京都文京区の「ぎゃらりーおりがみはうす」にて常設展示されている。

さて、あれから10年の歳月が流れた。その間に私の手元に「第2作」が戻ってきたことはない。一つくらいは手許に置いておく作品があってもいいだろう。そう思い始めた。また、2020年の夏に上海のコンベンションに招待される運びとなり、手持ちの作品を増やしておきたいというデマンドも生まれた。

3作

そこで、「リメイク」というプロジェクトが立ち上がった。仕上げを変えるだけではなく、デザインや構造からまるっと見直すという大風呂敷である。

「第2作」はある意味で「奇跡の一枚」で、私自身、こんなに綺麗に作り直せる自信がないし、私以上に綺麗に作り上げているファンも見たことがない(失敬。)

その原因は私の中でははっきりしている。「展開図」を発表したとは言えども、「ホイール」以外のパーツについて、定まった仕上げを与えておらず、実は「展開図」でもかなり「誤魔化して」表現をしている。実際、「第2作」では「フロント部分の蒸気機関」などにおいて、紙が破れるかもしれないような無茶な仕上げを施した覚えがある。「座席」部分については最悪だ。何も覚えていない。というのも、構造上、あまり「綺麗な」紙の領域をこのパーツに割けておらず、「JudgementFold(ぐらい折り)」を多用してしまったからである。この「構造上」、というのは簡単に言えば、「22.5度設計」と沈め折りによってうまれる「蛇腹設計」が同居していたということである。このような構造をうまくハンドルするのは難しい。

ということで「リメイク」では以下の課題意識と対策を以て挑む。

①「22.5度」が必要なのは「ホイール」部分のみなので、構造としてこれを埋め込むのは最小限にし、基本的には「蛇腹設計」を採用する

②その副作用として、従前のような「無理数比」を用いないことにする。幸い、60等分蛇腹が「第2作」の展開図にうまく近似することができるということがわかった。

③「ハイピカ」を「部分的に」裏打ちすることにあまりいい印象を持っていない。計算されたうえで発現するはずの「インサイドアウト」の面白みがないような気がしてしまうからだ。あくまでも製作サイドの気分だが。そこで今回は「カラペラピス」の裏面に、「ヴィンテージゴールド」系の塗料を吹きかけて、紙を塗装することにする。これはすでに実験済みで、とても効果のあるものだと期待している

「その2」へ続く


この記事が参加している募集

#おうち時間を工夫で楽しく

95,424件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?