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手書きにこだわる

企業研修講師として独立したのが30年前です。その頃は決まった仕事はありませんでした。

1年後、秘書検定の1級試験を受けたときにお世話になった方から、専門学校の非常勤講師の仕事を紹介されて秘書検定、ビジネス文書検定、ビジネスマナーなどの講義を
担当するようになりました。一番多かった時期で5校(ビジネス系、語学系、ファッション系、エステ系、リハビリ系)の講義を担当していました。
でも、企業研修の仕事が増えてきたのでリハビリ系の専門学校だけを担当するようになりました。
リハビリの専門学校は、講義を担当し始めて今年で25年になります。

講義は、理学・作業・言語聴覚1年生約50名に「人間関係学」の講義を行っています。

大半が、私の娘たちよりはるかに年下の学生たち、お父さんやお母さんの年齢を聞くと"そんなに若いの?”ってびっくりすることも増えました。
一昨年担当した学生からは、「僕のおばあちゃんと歳が近いです」と言われるようになりました。

25年通っていますが、毎年、講義初日はメチャクチャ緊張して、心臓が口から飛び出しそうになります。(ホントにホント!)
でも、学校で教員をするようになった卒業生たち何人もいて、学生たちの様子を教えてくれたり、講義の最初に私のことを紹介してくれたりと、サポートをしてもらっているので、心強く感じています。

はじめて講義を担当したときは、対象が4年生でしたが、3年生、2年生と学年が下がり、今は1年生を担当しています。ですから、テキストの内容もワークの内容も、最初の頃から随分変わりました。学生数も25年前は3学科で90名でしたが、現在は3学科で約50名。学生数が年々減少しているので、留学生の割合が高くなっています。
でも、たった一つ変えていないことがあります。
講義の終わりに「今日の気づき」という感想レポートを書いてもらうことです。

毎回の講義で気づいたことを書いて提出してもらい、次の講義までにコメントを書いて返します。
私が講義を担当するのは7回だけ。でも、講義のテーマは人間関係とコミュニケーションだから、レポートを介して一人ひとりと対話がしたいと思ったのです。

学生がレポートにたとえ1行しか書いてなくても、私は自分のスペースにコメントをぎっしり書いて返しています。

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そして、次の講義が始まる前に、手渡しながら、短くても一人一人と会話をするようにしています。

初回の講義のときに、この感想レポートのことを説明します。
「たとえ1行でもいいし、文章でなくても箇条書きでもイラストでも、何を書いてもいいです。自由に気づいたことを書いてください。私はこの用紙の下の欄にぎっしりコメントを書いて返します」

そのときは、なんとなく聞いてくれています。そして2回目の講義に最初のレポートを返していると、あっちこっちから「え~」「すげー」という声が聞こえてきて、みんなコメントを食い入るように見てくれています。そして自分のコメントを読んだあとは、隣や後ろの友だちのコメントを見せてもらっている学生もいます。

2回目の講義の後に提出してもらったシートには、「あんなにたくさんコメントが書いてあってびっくりしました」「ものすごい量のコメントをありがとうございます」「コメントがみんな違うのがすごい!」という感想が出てきます。

どんなに人数が多くて、どんなに講義の間が短くても、次の講義にはコメントを書いて渡す。
24年間、ずっと実践し続けてきています。
一番大変だったのは、講義を担当し始めて3年目。その年は、人数が90人近くいた上に、講義も火、水、木、金、月、火と連続していましたが、毎日、夜明けまでコメントを書いてバスの中で仮眠して講義を担当する日が続きました。
前期のテスト前で他の学科の勉強も大変だったのに、私の講義の出席率は毎回ほぼ100%で、大変だったけど、みんな熱心に取り組んでくれた忘れられない学年でもあります。
これまでに、延べ10,000通のやり取りを続けてきました。そして、出席率100%はずっと続いています。
50人のレポートにコメントをぎっしり書くのに必要な時間は約6時間です。
「大変じゃないですか?」と言われますが、私にとっては、1週間の中で、6時間をどこで作ってコメントを書くかを決めればできることなのです。

言葉で立派なことを伝えるだけでは、何も心に響きません。大切なことは私自身が示して見せて伝える。
人生の大先輩を前にして研修をさせていただくとき以上に、将来を背負って立つ若い方に研修や講義を担当させていただくときは、私自身の在り方や関わり方が全て見られているので、身が引き締まります。

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