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読んでないのか、それとも読めないのか

文章が読めない

 テキストベースで仕事していると、相手に思った通りに意図が伝わっていないということがよくあります。

 これは、コミュニケーションにおいて非常に一般的な問題です。コミュニケーションは、単に言葉を交換するだけではなく、コンテキスト、表情、トーン、身振り、文化的背景など、多くの要素に影響を受けます。特に、テキストベースでコミュニケーションをする場合、これらの要素が欠落するため、相手に自分の意図が伝わりにくくなります。

 例えば、メールでのやり取りであれば、相手が自分のメールを読んだタイミングや、相手がどのような状況で自分のメールを受信しているのかなど、情報が不足してしまうことがあります。また、テキストメッセージでのやり取りでは、短い文章や絵文字を使うことが多いため、自分の感情や意図を相手に正確に伝えることが難しくなります。

Twitter が読めない

 ホリエモンが大半の人は Twitter の文章さえ読めていないということをよく言います。あらゆる人の自尊心を傷つけそうな言い方ですが、最近はこれに関して、そもそもそういうものなのではと思うようになりました。
 文章が読めないということは、文字を理解できない、意味が分からないということです。小学校で習う漢字を読めなかったり、文法についての理解ができていなかったり、文章を構成する要素が理解できていなかったりすると、文章を読めなくなります。しかし、ここで言っている「読めない」とはそういうことではない。

そもそも、正しく文章を読むとは……

 文章が読めるからといって、必ずしも正しく理解できているわけではありません。実は、ほとんどの人が正しく文章を読解できていないという統計があります。
 それはなぜでしょうか。それは、文章を理解するためには、単に文字を読むだけでは不十分であるということが原因です。文章は、文法、構成、文脈、意図などの複雑な要素から構成されています。文章を読解するには、これらの要素をすべて理解し、それらを総合的に判断する必要があります。

 しかし、人間は限られた時間と注意力しか持っていないため、完璧にすべての要素を理解することはできません。そのため、多くの場合、読者は文章の一部分だけを理解し、その部分だけで判断してしまうことがあります。また、文章を理解するためには、読者自身の知識や経験が重要な役割を果たします。同じ文章を読んでも、異なる背景や知識を持つ人々は、その文章を異なる解釈をすることがあります。

解釈共同体(interpretive community)

 これが、文章が正しく理解できない原因のひとつです。ただし、このような問題を解決する、というよりも何故このようなことが起こるのか理解する手助けとして、解釈共同体という概念があります。

 解釈共同体(interpretive community)とは、スタンリー・フィッシュが提唱した概念であり、共通の文脈、言語、信念を共有する集団が、ある対象や作品を解釈する際に、共通の枠組みを共有しながら意味を形成するというアイデアです。

あらゆる対象は発見されるのではなく作られるのであり、われわれが発動させる解釈戦略によって作られる、というのが結論である。しかし、だからといって、私は主観性に与するものではない。対象が作られる手段は社会的、慣習的なものであるからだ。つまり、詩や課題やリストを世界に生み出す解釈作業を行う「あなた」は、共同体的な「あなた」であって、孤立した個ではない。(略)われわれが遂行する精神作業は、われわれが〈すでに〉埋め込まれた制度によって条件づけられている。制度はわれわれに先行し、そこに住むことによってのみ、または住まわれることによってのみ、制度のもつ公的で慣習的な意味に近づくことができる。

スタンリー・フィッシュ『このクラスにテクストはありますか』みすず書房


 この概念は、私たちが物事を解釈するときには、解釈する人たちが所属する社会や文化的背景が重要であるということを指摘しています。つまり、私たちは自分自身が属する解釈共同体に基づいて、対象や作品の意味を解釈することになります。

 例えば、同じ映画を見た複数の人が、それぞれ違った解釈をすることがあります。これは、それぞれが所属する解釈共同体が異なるため、同じ映像を見ても異なった意味を読み取ることができるためです。解釈共同体は、文学、映画、芸術などの分野で特に重要な概念となっており、作品がどのような意味を持つかを理解するためには、解釈共同体の背景を理解することが必要不可欠です。

誤差を埋める

 しかし、現実には、作者と読者が完全に同じ解釈共同体を持っていることは稀です。そのため、解釈共同体が完全に一致しない場合、読者は作者の意図を正確に理解することができない可能性があります。
 このような問題を解決するためには、読者は文章を注意深く読み、慎重に解釈する必要があります。特に、自分自身の偏見や先入観にとらわれず、オブジェクティブに文章を読み、多角的な視点から判断することが重要です。
 したがって、文章を正しく理解するためには、読者自身が文章を注意深く読み、解釈する必要があるということが言えます。また、解釈共同体が完全に一致しない場合でも、オブジェクティブに判断し、多角的な視点を持つことが重要です。

ちゃんと読むとは

 コミュニケーションの誤解を防ぐためには、相手との信頼関係を築くことが非常に重要です。相手に自分のコミュニケーションのスタイルや文化的背景について理解してもらうことで、相手に伝えたいことを正確に伝えることができます。また、相手に自分が理解した内容を確認してもらうことで、自分の意図が相手に伝わっているかどうかを確認することができます。コミュニケーションは、相手との共同作業であり、自分の意図を相手に正確に伝えるためには、相手との信頼関係を築くことが重要です。テキストベースでのコミュニケーションでは、情報が不足することがあるため、相手に自分の意図が伝わったかどうかを確認することが必要です。


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