ブラック企業の常套句

 今日は担当の相談員と話すために外出してきた。買ってから全然使ってなかった自転車で冷たい風を切って走るのはわりといい気分だ。
 中年の穏やかな男性相談員と個室に入り、前職のクソカルトブラック企業の愚痴もそこそこに、私に紹介できる仕事の話が始まった。どちらも私が持っている国家資格を活かせる仕事で、待遇もクソカルト(略)より遥かに良かった。その2つは老人と児童という対極的な分野だったが、一度見てみなければ分からないので今度見学に行くことになった。
 思えばクソカルトでは毎日社員が自社のことを褒めちぎり、「こんな良い会社他にないよ!」と大合唱していて本当に気味が悪かった。残業代は出ない上、専務の下らない自己顕示欲を満たすためのイベントにしょっちゅう休日出勤させられるのにだ。
 そして辞めていく社員には社長様自らがこう諭すのだ。「辞めるのは自由だけどさ、ここで勤めているより状況が本当に良くなるのかなぁ?」と。答えは「イエス」である。というか、どこからそんな謎の自信が湧いてくるのか皆目見当もつかない。いつ潰れてもおかしくない弱小零細の分をわきまえず、随分と大きく出たものである。
 今日も世の中のブラック企業では、私がかけられたような言葉で判断力の低下した社員をマインドコントロールしているのだろう。それが連中の常套句であり、中身のない自分たちをごまかすための欺瞞なのだから。

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