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『メキシコ人』 ジャック・ロンドン著


 物語は、少年フェリペ・リベラが「革命組織で働きたい」と現れるところから始まる。
 素性を知らない彼を革命組織の人たちは、誰も快く思わない。リベラの憎悪をたぎらせた冷酷な眼差し、いっさい愛想はなく心が感じられない、必要最低限のことしか話さない、そんな彼の態度から組織の人たちは、独裁者ディアスのスパイと怪しむのである。フェリぺを組織に受け入れたものの、一向に謎のままであり、次第に周囲の人たちは彼に恐怖心を抱くのであった。いつしか革命の気が熟す。しかし、必要な武器を調達できるお金がない。5千ドルが必要だ。
 お金を調達すべく立ち上がったリベラ。お金を稼ぐ方法とは、そしてリベラとは何者なのか・・・・(以下、若干ネタバレしそうな箇所ありご注意)

 
 読んでいてふと、メキシコ人はなぜボクシングが強いのだろうか、と思ってしまいネットで調べてみた。
 貧困によるハングリー精神というのが多く挙げられいる中、引っかかったものがある。それは「マチズモ信仰」というのものである。その信仰というのはメキシコ特有のもので、意味は「男性優位主義」所謂「男らしさ」ということらしい。この信仰が生まれた背景には、植民地支配された過去や、メキシコ革命など様々な歴史が複雑に絡んでいるようだ。
 
 
 著書は、そんな横暴な支配をしてきた欧米人(アメリカ人)への批判も多分に込められているだろう。ストーリーは、お金儲けのビジネス優先させるアメリカ人と、祖国のために戦うメキシコ人。その対比が鮮明である。ジャックロンドン自身、表題がダイレクトに「メキシコ人」としたのも、少なからずメキシコ人の男らしさに憧れがあったのではないか、と思えてしまう。現代は多様性の時代。マッチョ主義的なことを謳って仕舞えば炎上しそうだが、不屈の精神、寡黙に正義を尽くす、というと高倉健をイメージしてしまう私である。現代の若い人にそんな男臭い男性像は全くウケが悪いだろう。今の若い男子の理想的な男性像ってなんだろう?とそんなことを気にしてしまった。

 話が脱線してしまうのも読書の醍醐味ということでご容赦いただきたい。

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