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映画「窮鼠はチーズの夢を見る」 *20/09/13

投稿が久しぶりになってしまいました。なんだか慌ただしい日々になってしまい、下書きや、これについて書きたいというメモばかりが重なり、きちんとかたちにできていませんでした。これはいけない…。なんで投稿できていなかったかといえば、日付を遡ってでも毎日書きたいという自分の中でのルールに縛られて、投稿できていなかったのです。なので、今回からそのルールはもう取っ払って書きたいと思います。書けるときに書きます。


鑑賞記録:
映画「窮鼠はチーズの夢を見る」
(※ネタバレを避けたい方は閲覧ご注意ください)


今回の映画化、速報を聞いたときは「え?今やるの?しかもジャニーズ?出来上がりが怖い…」というのが本音でした。腐女子の友人界隈でも同じような衝撃が走っていました。
でも、行定監督が手がけると聞いて、それはちょっと観てみたいなという気持ちに変わりました。いままでのBL映画の中で一番名が知れていてポピュラーな監督さんで(「世界の中心で愛を叫ぶ」の監督です)、いやまさか、行定監督がBL原作の映画を撮るなんてね〜〜と感慨でいっぱいでした。

原作コミックスと出会ったのは出版されて数年後、たしか高校生の頃です。当時友達と感想の手紙を授業中に交換しあっていたような。手元にあるコミックを確認したところ、「窮鼠」も「俎上」も初版コミックスでした。しかも「窮鼠」はジュディコミックスのB6版で、「俎上」は少女コミックサイズ。なんともちぐはぐな持ち方…。
(映画に合わせて「オールインワンエディション」のコミックスが発売されましたが、もともとは「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」というコミックス2冊で完結する物語でした。)

ただ、近年は「しんどい話」として、手放せないものの、読み返すことができていませんでした。それならばと、今回一切原作を読み返さずに映画館へ行きました。その方が中立的な立場で観れるかと思ったので。
あの行定監督のBL、ということで夫の食指も動いたため、一緒に連れて行きました。


何かで監督と主演二人のインタビューを読んでいて、すでにラストが原作とは違うということは知っていました。また、映画好きの夫からは「行定監督は、原作からかなり変えることで定評があるから、かなり違うかも」とも言われていました。
映画を観た後、帰宅してから原作を久しぶりに読み直しましたが、想像以上に原作のイベントはなぞっていて、大筋は変わっていませんでした。とはいえ、やはり演者との中和によって、主役二人の雰囲気はかなり変わっています。けれど、もともとのコミックスで描かれている一番大事なところというのは違っていないなというのがまず感想でした。
でも、これは「原作とは違う終わり方。行定さんは原作通りに撮らない」と心していたからであって、ファンとしては原作の「俎上〜」でのあれこれがなかったことを悔しく思わなくもないです。

R15に疑問を抱くほどの背徳感

R15とR18の違いって何なんでしょう…。映画「娼年」を観たとき、あぁこれはR18だな…って思いましたが、正直今回負けず劣らずな感じがありました。総上映時間においての濡場の割合とか、喘ぎ声とか、ノーマルプレイかどうかとかで違うのでしょうか。(「娼年」はSMとかアブノーマルなプレイもあった…)
男同士であることを意識させるオイルを臀部に垂らすカットが濡場に差し込まれていて、今までこんな生々しいカットBL映画であっただろうか、しかもそれはジャニーズアイドルのお尻……と思わず生唾を飲み込みました。。

とはいえ、原作はもっと過激です。当時の2006年のコミックスでは、「担当さんに「もっとエロく!」と求められて書いた」とのあとがきがあり、また当時は規制も厳しくなかったので(男性向けのR18コミックの方が修正されていてもBLコミックスはほぼ無修正で、今思い返せば不思議な時代でした)この作品も「窮鼠」の1話目ですでに露骨な描写が無修正で書かれています。

ただ、最近出た「オールインワンエディション」の編集にあたって、人権的な発言の変更や、画稿の修正がおこなわれたということで、セリフが異なっていたり、局部が入らないように画面構成が変わっているようです。それを原作者の水城さんが洗いざらい詳細に書いてくださっていて、大変勉強になりました↓

他にも、当時はOKだったから、そのまま印刷し続けているけど、もう一度検閲にかかったらアウトな漫画はありそうですよね。

また、女性の裸はあっさりと写すのに、男性の体はなかなかもったいぶって映らない…という、男性が今まで撮ってきた映像作品とは違うアプローチが行われていたのも印象的でした。

2000〜2010年代の日本映画的演出と、女性の社会的立ち位置の変化

はっきりと言ってしまえば、「演出がなんか古い」…のです。
2000〜2010年代日本映画が私は大好きなのですが、なんだか久々に見ると「古い!」と突っ込みたくなってしまう演出がところどころありました。
でも、原作はちょうどその時代の物語なので、なんともそれが合っているような、でも、登場人物のファッションや持ち物(スマホなど)は現代だし、役者もおしゃれそのものだしな…?と少しちぐはぐに感じる部分もありました。

また、気になったのは女性の社会的立ち位置でした。
恭一の元嫁は、普通よりちょっといい生活くらいの恭一の稼ぎで専業主婦で「趣味:買い物」。漫画では、恭一が知らない間にソファーやカーテンを変えていたりする。今だったら平均より少し稼いでるサラリーマンと専業主婦では無理です。
たまきちゃんも、漫画では会社で制服を着ていて、事務員のようです。(映画では私服になっていましたが)休日?仕事帰り?に家に来て、食事を作っていて、恭一だけがぼんやりしているなんて、私だったら「手伝え!」ってはっ倒す…と思ってしまいました。

15年近く前の女性の社会的立場と働き方が多様化したこと、そしてそれは、日本の社会の全体的な貧困が如実に感じられるようにも思いました。

原作より増している「大伴恭一」の闇の深さ

当時から、この「大伴恭一」という男のあまりのダメさ加減に呆れていました。執着してしまう今ヶ瀬も相当ですが…。
映画は漫画よりクズなことになってますし、映画では原作のセリフや独白がない分、画での演出になったからか、「大伴恭一」演じる大倉さんの瞳があまりにも暗く空っぽで、大丈夫かな…?!と心配になるほどでした。。
ただ、漫画よりもこの「大伴恭一」がなぜこんなに非道徳的なことを繰り返してしまうのか、説得力はあった気がします。原作にあった父とのエピソードは描かれず、大倉さんの瞳や表情が心配になるほど暗く「この人はやばそうだ」と漂うサイコパス感だけで十分な説得力がありました。

正直、原作のキャラクターとはすこしずつ二人とも違うのですが、大倉さんのかっこいいもののどこかやばそうな恭一、今ヶ瀬とは少し違う魅力だけど可愛い成田さんが見れて満足しました。

個人的に一番笑ってしまったのは、夏生先輩と今ヶ瀬のキャットファイトシーン。カールスバーグを飲みたくなりました(笑)

あと、劇中でジャン・コクトー監督の「オルフェ」が流れています。この作品にした理由を監督本人が語っていて大変興味深かったので、メモとしてリンクを貼っておきます。
他にも、他映画のオマージュがいろいろありそうです。


全体的には、ワンカットが一つずつ長いのでちょっと冗長でテンポが悪く感じられました。「俎上〜」のストーリーになってからはかなりのセリフが落とされていたので、そこをやってくれたらよかったのに…!と思わなくもなかったです。上映期間中にもう一度見ることはないかもれません。

でも、こんなに見ていて安心感があって、綿密に高予算で作られているBL原作の実写映画はいままでなかったので、ご興味ある方は映画館での鑑賞をおすすめします。
19日からは、座席の50%の間引き販売も解除になるらしいので、隣を気にせず悠々と見れるのは今のうちかもしれません。個人的には、いままで隣がいないことで安心して劇場に行けていたので、19日以降はしばらく映画館に行かず、様子を見ることにしようと思っています。


余談ですが、ドラマCDにもなったのです。本棚を探したら、出てきました。
当時、二人の関係性が逆転する(リバ)カップリングは珍しかったので、話題になりました。いまやお二人とも有名すぎてBLCDに出るような方々ではなく、すっかり日曜9時の声優さんですが…。


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