今日の禅語「上求菩提・下化衆生」と「たらいの水の法則」
山の麓の畦を彼岸花が真っ赤に彩ります。別名の曼珠沙華は法華経の「摩訶曼陀羅曼珠沙華」からついたと言われ、梵語で「天上界の花」「赤い花」を意味します。多くの植物が春から夏にかけて成長して花を咲かせますが、彼岸花はこの間に地下で力を蓄え、秋に開花する特異な存在です。
鱗茎は生薬にもなり、また栽培が容易で球茎を縦割りに切って植えれば、翌年には新しい世代が育ちます。まことに強いその生命力に驚嘆するとともに他が真似できない生き様に何かしら愛着と共感を覚えます。
今日の禅語は「上求菩提・下化衆生(じょうぐぼだい、げけしゅじょう)」
日本大百科全書によると、その意味は、菩薩(ぼさつ)が上に向かっては菩提(真理と智慧とが一体となっている悟り)を求め(自利(じり))、下に向かっては衆生(しゅじょう)(生きとし生けるもの)を教化(きょうけ)する(利他)ことをいう。すなわち自利(智慧門)・利他(慈悲門)の菩薩行を要約したことば、とあります。
ここに出てくる「自利利他」という仏語が大好きです。
この言葉の意味は「自分の幸せ(自利)とは他者を幸せ(利他)にすること」最澄伝教大師の言葉で、「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」と説かれました。幸せとは富や栄誉ではなく、心の安らぎです。
私たちは父母をはじめ、数多の人に支えられて生きています。有形無形の助けを受けて今の自分がある、という自覚が「感謝」となり、この感謝の念いから導かれる行動が人のために尽くす「慈悲の極み」となります。
ある方はこの「自利利他」を「たらいの水の法則と呼んでいる」とおっしゃいました。その法則とは、たらいの中の水を自分の方に引き寄せようとすると、逃げていき、逆に水を自分の側から押し出すと、戻って来ると言うのです。おっしゃる通り、たらいに張った水を引き寄せたり、押し出したりすると、このような現象が起きます。
つまり、人からなにか得ようと思うと、まず、自らが押し出さなければならないのです。
幸せになりたいと思うなら、まず、自分から動いて、人を幸せにしてこそ、自分の幸せはやってくるのです。
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