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楓葉経霜紅と西郷隆盛

好きな邦画に「日々是好日」があります。茶道を通じて女性の成長を描いた(当たり障りのない説明ですが)作品ですが、茶堂の茶室には月ごとに書ける掛け軸と花があるのを知りました。10月か11月の秋に茶室の掛け軸に多い言葉は「楓葉経霜紅(ふうよう しもをへて くれないなり)」です。「楓は寒い日を経て紅く色ずく」つまり、寒暖の差が大きくないと楓は紅葉しないのです。そこから「人間もつらい時期を経てこそ、色づくものだ」と解釈され、努力を重ねる重要さを説いたものと言われています。出典は不詳ですが禅語で人気のある言葉です。
西郷隆盛が妹の三男、市来政直がアメリカ留学した時に送った漢詩に、 「耐雪梅花麗(雪に耐えて梅花麗し)」 という有名な一節がありますが、その中にこの言葉が盛り込まれているのです。
一貫唯唯諾
従来鉄石肝
貧居生傑士
勲業顕多難
耐雪梅花麗
経霜楓葉丹
如能識天意
豈敢自謀安
「 一貫、唯唯の諾 従来、鉄石の肝 貧居、傑士を生み、 勲業多難に顕わる 雪に耐えて梅花麗しく、 霜を経て楓葉丹し 如し、能く天意を識らば、 豈敢て、自から安きを謀らむや」

この漢詩に出てくる「経霜楓葉丹」とは、イコール「楓葉経霜紅」の言い換えです。意味は同じもの。

厳しい環境を過ごし、泣きたいほどの辛苦を重ねて克己した人ほど、人としての深み、重み、人間性が磨かれるのでしょう。

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