母
あなたの子どもに
生まれたのは
はじめてかもしれない
けれどわたしは
あなたをえらんだ
あなたの哀しみに
惹かれたような気がする
あなたは泣き虫で
やさしくて
辛抱づよくて
孤独だった
冬に生まれたあなたは
いくども
冬をこえて
いま
冬におびえている
あなたの哀しみが
いっせいに
あなたの肩に
ふりつもって
冷たいのだろう
はじめてのわたしを
夏に産んだあなたは
あなたが見たかった世界を
わたしに見せた
わたしはあなたの
なんだったか
子どものようなあなたは
いつも、泣いていた
くらやみで
誰もいなくなってから
ひとりで
そんなあなたが
わたしは
たまらなく
哀しくて
けれどその哀しみに
生きるあなたがまた
うつくしく
誇らしいのだ
2024.11.20