見出し画像

小満 第二十二候 蚕起食桑

二十一日に二十四節気の小満を迎えました。梅雨の走りのおかげもあって万物の成長する気で次第に天地が満ち始めることに由来する名前だそうです。

チェンマイでは、五月十五日に雨季入り宣言が気象庁から出て以来、むしろ暑く乾いた暑季に戻ったようなお天気が続いていましたが、この小満の日を境に少しずつ水の気配が感じられる空模様になり、夕方にはどこかで雨が降って風にも水や土の匂いがするようになってきました。
そんな水の気配があたりに満ちた日の翌日の空は、四月の頃の煙害が信じられないほど澄み渡って、遠くの山の中腹のお寺のパゴダや木の梢の陰影が非現実的に感じられるほど見え、その清らかで澄明なさまには、本格的な雨季の到来まであと少し。と、あらゆるものが潤っていく期待がふくらみ、二週間分の天気予報と天気図を見比べては指折り数える毎日でした。

画像1

けれど、とにかく暑かった五月の中旬の日々、先週末には四十度近くに最高気温は達し、とうとう暑気あたりしてしまいました。

ベッドに横になりながら、オンラインで友人たちと連歌や俳句で遊んでいると、季節柄なのか蚕にまつわる句が多く、そしてその句に共鳴するように養蚕に関わる両親や子供の頃の思い出を語る人たちが思いがけず多いのに驚き、チェンマイではまだ綿の木や蚕を育てることから織物が始まる世界が残っているけれど、日本にもそのような世界が思いがけず最近まで残っていたと実感し、懐かしさとともに、言い難い喪失感を感じてしまったのでした。

小満初候は、蚕おきて桑を食むですが、蚕たちが盛んに桑の葉を食べる時にはさらさらと雨が降るような音がします。
チェンマイに居て、いちばん好きなのは、雨の音を聴きながらうとうとすることですが、製糸産業が盛んで大きな繭蔵が方々にあり、学校の行き帰りの道に、糸をとる小さな作業場や大きな糸車にとった絹糸が干してあるような場所で育ち、祖母の家で聞いた蚕たちが桑を食む音の遠い記憶のせいかもしれません。

この記事が参加している募集

#雨の日をたのしく

15,550件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?