立秋 第三十七候 涼風至
昨日八月七日は立秋でした。
気づけば五時台だった日の出は六時台になって、天文薄明も市民薄明も遅くなり、我が家の愛おしい毛皮族の健やかすぎる早起きさえも少しずつ遅くなりはじめました。
七時台だった日の入りも気づけば六時台です。
太陽が領分の時間帯が短くなり、その高さも徐々に低くなっているためか、スコールの後の素晴らしく透明に洗い流された青空は、どこか冷え冷えして地上よりも一足先に秋が来ているようであり、その澄み具合には下手をすれば初冬さえ思い浮かぶような冴えた感じがする時もあるほどです。
とはいえ、この数年来の小雨。強い陽射しに土がはらんだ熱はまだ洗い流しきれていません。なにかもう少しすっきりと季節が切り替わっていく節目らしい空気の変化がほしい気がします。
日差しや空の表情には秋はあっても、熱っぽく乾いた地上はまだ雨季らしい水気に満ちきったという風でもなく、そんな水の季節の極みにも至っていない中では、まだ秋めく寂しさや静けさが心のうちにも兆すようなきっかけはいかにも足りない。
ならばいましばらくは、夏らしい積乱雲が城壁のように湧き上がり、その量が臨界に達して水の粒子たちが空中の滝となってくずおれていくさまを見ていたい。できるならば、久しぶりにピン河の橋のすぐ下を抉るようなオレンジ色の奔流が過ぎていくそんな光景を見てみたい。とおもわずにはおれないのです。
雨季で降雨量が最も多い時期は、後半の頃だと言います。
雨季の終わりは十月頃。ならば、むしろこれからがピークに向かうはず。
なのに立秋に入って昨日今日は、雨季の中休みのような奇妙に乾いた空模様が続いて(日本には三つも台風が向かっているというのに!)、ここ一年半の落ち着かない日々と共になにか心のうちもともすれば乾いてしまいそうな思いがすることさえあります。それを鎮めるためにも、どうかあともう少しだけ、空からの水をと思ってしまいます。