誤概念①A編
以前書いてみた誤概念に関する問いです。この問いを大学生や中学生に聞いてみると、90%が固体を選び、10%が液体を選びました。気体を選んだ人は誰もいませんでした。ここで面白いのは、大学生でも中学生でもほとんど同じような集団傾向を示したことです。つまり、正解、不正解にかかわらず、中学生から大学生にかけて、認識がほとんど変わっていないということがわかります。また、僕が正解を言わないということを伝えると、大学生も中学生も同じように答えをほしがっていることも共通していました。
科学は、現在の世界では正しいと考えられている暫定的なものであるという性質をもっていることを理解していない学生が多いことように感じています。つまり、科学には答えがあるものだと思っているようです。当然、それが正解だと考えているから科学技術が発展してきたことも事実であるので、今回の食塩水の問題に対し、正解がほしがることもわかります。
ここで、私が大学生や中学生とやりとりした内容をちょっと紹介します。まず、固体とはどういう状態ですか、と問うと、「粒子が集まっている状態」と答えます。そのため、「固体は目に見える」と。そうすると、「あれ?食塩水の中の食塩は目に見えないけど?」と問うと、固体派の人は少し揺らぎます。面白いのはあまり話を聞いていない学生も顔を上げ、こちらを見ます。そして、こう僕が言います。「食塩水の食塩は目に見えないというと、固体派の人がざわざわし、液体派の人が少し笑顔になります」と。これで場の空気が少しやわらかくなります。「でも、液体も目には見えていますね」と言うと、「あれ?じゃあ気体?」「あ、気体は目に見えない」と。こうやって、この問題に引き込まれていきます。
固体、液体、気体は、もちろん粒子間の距離が関係していることはまちがいありませんが、固体が「溶ける」ことは粒子の距離だけでは説明ができないということですね。そもそも色がついている固体が水に溶けると液体全体に広がるわけで、色は目に見えてはいますが、粒子が目に見えているわけではありません。ということは、「目に見える」ということの意味は「何が目に見えている」のかについて考える必要がありそうですね。
このような議論を経て、答えは示しませんでしたが、いろいろな側面から考えることにこそ価値があるという問題であることを伝え、次の誤概念の問題に進みました。
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